第10話 鉄板な二人
「ルティア嬢を見つけては率先して絡んでいってぎゃあぎゃあ喧嘩してよくわからない勝負を繰り返して」
「姿を現すや「ルティアはどこだ!?勝負しろ!」と叫んでまっすぐにルティア嬢のもとに走っていって社交もなにもかもそっちのけで二人の世界を繰り広げているんだから、最初は「王太子妃の座」を狙う気満々だったご令嬢もその親達もそのうち戦意喪失したよね」
そう。ガルヴィードはまったく自覚していなかったが、あの夢を見るよりも遙かに前から、貴族達の間では「王太子の相手はルティア嬢しかいない」が共通認識となって存在していたのである。
なにせガルヴィードはルティアしか目に入っていないのだ。本当に、まったく、少しも、他のご令嬢に目を向けない。
由緒正しい公爵令嬢にも絶世の美女と名高い侯爵令嬢にも裕福な伯爵令嬢にも目もくれず素通りして、ルティアにまっしぐらな王太子に、周囲の者達は早々に戦線離脱を表明したのだ。勝てない、と。
なにせ、ルティアがいないとガルヴィードは生きていけないのだ。
あまりに息子がルティアしか見ていないことを心配した国王命令で、伯爵がルティアを二ヶ月ほど自領に連れ帰ったことがあった。
その二ヶ月間のガルヴィードを見ていた者達は「生ける屍とはこのことか」という有様を嫌というほど見せられた。
なにをしてても心ここにあらずでぼーっとして、食欲もなく、終いには「豪華なパーティーを開こう!」と提案した国王に「なんのために?ルティアがいないのに?」と死んだ目で返したほどの狂気を見せつけられて、「伯爵令嬢を王太子妃になどできるか!」といき巻いていた国王も高位貴族達も「伯爵令嬢でいいです」と意見を変えたのだ。むしろキミしかいない。キミじゃなきゃ駄目だ。
そんなこんなでルティアが王都に戻されると、ガルヴィードは一瞬で復活した。
そんな有様で、周りは皆「あの二人は鉄板だから」と認識しているにも関わらず何故いままで婚約すらしていなかったかというと、鉄板すぎて必要性を感じなかったという一点に尽きる。
「どうせお互いしか見てないし、周りはもう横やり入れる奴なんかいっさい存在しないし」
「時期が来たらどうせなるようになるんだろって思ってたし」
「魔王復活というイレギュラーが起きたからとっととくっつけようってなっただけで、それが無くてもどうせいずれ結婚してたし」
「いやいやいやちょっと待て!!」
あまりのことに絶句していたガルヴィードだが、そんな馬鹿なことがあるものかと側近候補達の話に口を挟んだ。
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