第11話 後悔
「ルティアは王妃教育も受けていないぞ!そんな娘を王太子妃にできるわけ無いだろう!!」
「正気で言ってんのか?」
至極当たり前のことを指摘したはずなのに、何故かとても冷たい目で正気を疑われてしまった。
「いいか、ガルヴィード。お前はことルティア嬢に対してはポンコツの極みだが、それ以外のことはなんでも優秀にこなすハイスペック王太子だ」
「お、おう?」
「ポンコツの極み」と「ハイスペック」のどちらに反応していいかわからず、ガルヴィードは戸惑った。褒められてるのか貶されてるのか。
「そして、ルティア嬢はそのお前と常に全力勝負して渡り合ってきた猛者だ。お前に追いつくため、お前を負かすため、お前に吠え面をかかせるために努力を重ねたルティア嬢の能力値は極めて高いレベルに至っている」
「図らずも、自らの嫁を自らの手で鍛えたのだね」
「ルティア嬢に文句のある奴なんかいない。むしろルティア嬢以外が王太子妃になったら暴動が起きるぞ」
今度こそ、ガルヴィードは言葉を失った。なんてことだ。皆がそんな風に思っていただなんて。
ガルヴィードはがっくりと膝を突いて握り締めた拳を床に叩きつけた。
「……そんな風に思われていただなんてっ知らなかった、……周りをまったく見ていなかったっ。ルティアしか見ていなかった……」
「はい惚気いただきましたー!」
打ちひしがれる主君を無視して、三人はいずれ生まれる英雄の教育計画に話を戻す。
「アルフリード様をお守りしたい!と騎士団で近衛騎士の座をかけた熾烈な勝負が繰り広げられているらしいぞ」
「騎士団に限らない。侍女達の仁義無き戦いはすごいぞ」
「あ。知ってるか?我が子をアルフリード様の側近or妃に!つって、令息令嬢の間で結婚ラッシュだってよ。来年以降はベビーブームが続くな、こりゃ」
まだ生まれてもいないのにすごい人気である。さすがは英雄。
三人の会話をどこか遠い気分で聞き流しながら、ガルヴィードはルティアの顔を思い浮かべた。
愛しいなんて感情は湧いてこない。むしろ「宿敵!」と気分が昂揚するほどだ。
そんな相手に、子を産ませるなど
「……無理だ」
ガルヴィードの呟きは、誰の耳にも届くことはなかった。
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