(11)

 いつしか……一同の足取りは重くなっていた。

 予定の半分の距離しか進めぬまま夕方頃、宿場町に辿り着く……その直前に異変に気付いた。

「夕焼けにしては……何かおかしいぞ……」

「いや、そもそも方向が……」

 それは、山火事だった。

 街道から少し離れた所に有る山が丸ごと、火に包まれている……。

 ふと……一行の顔を見渡すと……魔導師と司祭の顔が青冷めていた……。

「あ……あの山を御存知で……」

 二人ともうなずいた。

「一体……あの山は……?」

「百年前、諸国を巻き込んだ永きに渡る戦乱の時代が終った時、この国で信じられていた主要な8つの宗派が統合され……『国教会』が作られた事は御存知であろう……」

 そう説明したのは司祭だった。

「は……はぁ……それが……何か?」

「あの山に有るのは……『国教会』の元になった8宗派の1つの総本山。あの山には……今でも千人を超す修行僧や学僧が居る修道院が……」

「そ……そんな……」

「ま……まずい……ここでは……貴様と一緒に居ると……」

 今度は……魔導師が震え声でそう言った。

「どうした?」

「御一同、何も考えず……一心不乱に、あの宿場町を突っ切って下され。一行に司祭が居るだけで……我々は無事では済まん」

「何が起きている?」

「『遠見』の魔法で……あの宿場町の様子を伺ったが……あの宿場町は……王都とは逆の事が起きている」

「だから、何だ?」

「宿場町の周囲で……魔導の徒が……『国教会』の者達を……処刑しておる」

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