(10)

 我々は再び出発した……。

 行方不明になった王女と、誘拐犯と見られる女魔導師、そして……その女魔導師に操られているらしい私の妹を追って。

「よかったな……貴様の願いが叶ったぞ……」

 魔導師が司祭に言った言葉は……それまでの「慇懃無礼」なものではなく……慇懃さの無い敵意剥き出しのモノだった。

 司祭は……自分が成した事の結果を見て、青冷めていた……。

 王都のあちこちで……「国教会」の関係者が魔導師達を連行していた。

 王都魔導大学の方向からは……煙が立ち上っていた。

 場所によっては……「魔導師」達と「司祭」達の間で小競り合いが起きており……。

 王都を囲む城壁の門を出ると……王子の顔に恐怖が浮び……。

 王子は馬から降り……そして、何度も嘔吐した。

「な……何だ? あれは?」

 王都の外では……火炙りが行なわれていた。

「や……やめろ……その者達は……今回の件とは無関係だ……」

 司祭は絶叫して……それを止めようとするが……。

 「被害者」の多くは死んでおり……助かった者が居たとしても……これまで通りの生活を送るのは無理だろう……。

 ひょっとしたら……司祭の言った通り、国家公認の魔導師達の中に、王女を誘拐した女魔導師と内通していた者が居たのかも知れない。

 しかし……王都を囲む城壁の外で、「国教会」の者達が火炙りにしていたのは……魔導の徒ではあっても、国家公認ではない、今回の件とは無関係の筈の……そして、大半が国家公認の魔導師より技量・力量が劣る、民間の「野良魔導師」「俗流魔導師」「呪い師」「占い師」達だった。

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