1ー2
「・・・・・・・・・・・・・・?」
ボクは、教科書と一緒に出てきた女性物の紫色の透けているパンツを理解するのに時間が掛かった。
ーーーーコンコン!
「っ!?」
突然ノックされたドアに驚いて振り向くと同時に咄嗟にパンツを掴み、体で隠すようにドアの方を見る。
「ショウタ、これスペアの鍵ね」と言ってお母さんがドアを開けて、鍵を持ってきてくれた。
「ああ、ありがとう!そこに置いておいて!」
パンツを握りしめたまま近づくのは危険だと思ったボクは、アクション映画に出てくる悪いやつとの危険な取引ばりに警戒して言う。
「ここ?次は無くさないように気をつけてね」
お母さんは鍵を入り口横の棚の上に置いてドアを閉めた。
「はぁ、危なかったぁ・・・・・」
胸に手を当て、ホッとする。
「ところでこれなに!?」
握りしめたパンツを見て、ボクはあらためて疑問を抱く。
「同級生のイタズラ?でもこんなことする友だちいないし、じゃあなんで?・・・・・・まさかーーーー」
ボクは、ひとつの可能性に気づく。
「ーーーーみゆきお姉さんの・・・・・・・・?」
そう思った瞬間、ボクの頭の中で上はセーラー服で下はスカートを脱いでこのパンツを履いたみゆきお姉さんが浮かんできた。
「ショウタくん!」
「はっ!ダメだダメだ!!」ボクは頭を振って、妄想を振り払う。
「とにかく、もし本当にみゆきお姉さんのなら、なんとか返す方法を考えないと・・・・・・」
その夜、ボクはほとんど眠れなかった。
○○○○○
次の日の夕方、家に帰るなりすぐに自分の部屋に入り、ランドセルをベットに投げ捨てて、本棚にある動物図鑑を手に取り、正座すると同時に図鑑を開く。
「はぁ・・・・・やっぱりある。夢じゃなかった・・・・・・・」
ボクは昨日、万が一お母さんが部屋を掃除してパンツの存在に気づかれないように、分厚い動物図鑑にパンツを挟んで隠していた。
そして、パンツが変わらずそこにある現実に落ち込む。
「これか本当にみゆきお姉さんのなら、何とかして返さないとなぁ」
学校にいる間、授業そっちのけで『パンツ返却作戦!』を考えていた。
そして、二つの作戦を考えた。
1、『みゆきお姉さんの家に遊びに行って、気づかれないように部屋に置いてくる』
2『なぜかランドセルに入っていたことを正直に伝える』
だがーーーー
「でもやっぱり無理だよぉ・・・・・・」
必死に考えた作戦だったが、この作戦には危険がある。
1、『パンツがどうやって入ったかも分からないのに、どこに返せばいいのか?収納ケース?それはどこにある?引き出しを片っ端から開けるのか?それこそ変態だ』
2、『勝手にパンツがランドセルに入ったことを信じる人間なんているか?それに、もしもこのパンツがみゆきお姉さんの物じゃなかったら、ボクは謎のパンツを見せた変態だ』
「どっちにしても変態確定だ・・・・・・・・」
しょせん小学四年生が考える作戦ではこんなもんだろう。
「でも返さなかったら、もしかしたらーーーー」
ボクは、このまま静観し続けたパターンを妄想する。
△△△△△
ーーーーピンポーン。
「ん?」
突然鳴った家のチャイムに、ボクは玄関まで行きドアを開けた。
するとそこには、スーツを着た男性が四人立っていた。
「ショウタくんだね、吉川警察の者だけど、通報があってね」
よく見ると、男性たちの後ろにみゆきお姉さんが悲しそうな顔で立っていた。
男性の一人が話始める。
「被害者の家から下着が盗まれてね、部屋を調べた結果、キミの指紋が見つかったんだ。だから、キミの部屋を調べさせてもらっていいかね?」
戸惑い返事もできないボクを押し退けて、警察の人たちが部屋に向かっていく。
その後ろ姿を見ながら、ボクは終わりを悟る。
△△△△△
「はあっ!怖い!」
妄想から戻ってきたボクは、冷や汗をじっとりとかいていた。
「ダメだ!ダメだ!このまま知らんぷりは絶対ダメだ!」
手錠をかけられパトカーに乗せられる未来を回避するため、再び考える。
そしてしばらくしてーーーー
「・・・・・・・・一番ダメージの少ない方法は、やっぱりこれかなぁ」
色々考えた結果、ボクは選択肢を選んだ。
○○○○○
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