第17話 その頃の神界では。




「アムテル! どう言うことだ、アレクシスに俺の加護を与えるのを邪魔す[ドガ!]ギャアァァ!?」


「まったく、私のアレクシス君に変なものを与えようとするなんて……いい度胸してるわね!」


アムテルはそう言うと華麗に舞う、その舞いは美しく近くで見ていた他の神々をも魅了するものだった……が、誰も近づかない、何故なら華麗に舞いながらティニボスをボコっているからだ!


「ふぅ……このぐらいで勘弁してあげるわ。」


そう言ってティニボスだったものから離れるアムテル。

それを見計らったようにクレザを無理矢理引きずってアレザがやって来る。


「アムテル! どういうことなの!」


「ア、アレザ姉さん放して!」


「あら、どうしたんですか、私がなにか?」


アレザは怒りながらクレザを引きずってアムテルに向かう、クレザはティニボスだったものを見て何とか逃げようともがいている。


「あなた祝福をアレクシスに与えたでしょ、なんてことをしたの!」


「ふ、普通は祝福なんかあげない、は、反省するべき……ごめんなさい!」


どうやら祝福を与えたのが問題のようで、アレザはかなり怒っていた。

クレザは先にアレザから何か言われていたのか、反省しろと言ったがアムテルがニッコリと微笑みながらクレザを見ると謝って逃げようとますますもがいている。


「普通はあげない、確かにそうね。

しかも私の初めてだし……やだ、そう言うことじゃないのよ? アレクシス君はまだ肉体年齢が5歳なのだから少し早いわ。」


コイツ何を言ってるんだ?と、アレザは思いながらさらにアムテルを注意しようとするが、アムテルはそれを手で制して話し始める。


「アレザさんとクレザさんは普通はあげちゃダメと言いたいのですね、ではアレクシス君は普通ですか?」


「はぁ? 普通じゃない思考をしてるとか、ヒィ! 本気で殺気を向けないでよ!」


「あんまり失礼なことを言うとタコ殴りですよ?

何にしろアレクシス君はドライト様にお預かりした大切な方、つまり普通の方とは違うのです!

なので祝福をあげても何の問題もなし、やったね!」


「いや、やったねって……確かにそうかもしれないけど、あなたは第三位の神なのよ? そんなあなたの祝福なんてあげたら地上で大騒ぎになるでしょ!」


「ふふふ……それも大丈夫よ、私は低級神、序列外の神だと思われているわ、これも常日頃からショボい加護をばら蒔いていた成果ね!」


「ショボい加護をばら蒔いていたって……」


アムテルの言動にアレザは頭を抱えるが、そこに横からクレザが何かを思い出すように唇に指を当てながら指摘してくる。


「えっと、祝福って加護と違って聖別で調べたら、与えた神の詳しい情報も見えなかった?」


そのしぐさは子供のようだが、プロポーション抜群で垂れ目ぎみの妖艶な美女がすると違和感しかない、何にしろクレザの指摘にあっ! というような表情になるアレザとアムテル。


「……私、あげるの初めてだから、忘れちゃってたわ、テヘ🖤」


「テ、テヘじゃないでしょ、どうするのよ!」


アレザはアムテルの胸ぐらを掴んで怒るが、掴まれたアムテルはどこ吹く風で笑っている。


「とりあえず祝福を回収して、加護特大に……ご、ごめんなさい、二度と言いません!」


回収を勧めたクレザだったが、言った瞬間にアムテルに殺気のこもった目で睨まれたので撤回すると、ティニボスだったものを持ち上げて盾にしている。




「ちょっとちょっと! 緊急時に何を争っているのよ、クレザさんもそんなゴミは捨てて落ち着きなさいって!」


そこに女性が1人走り込んでくる、彼女も女神のようだが他の神々が鎧を着てたりギリシャ神話の神々が着るような服を着てるのに、何故か女教師が着るようなタイトスカートにブラウスを着ていた。

しかもプロポーションがかなり良いのにアダルトなビデオに出てくるような、ミニのスカートに少し透けているブラウスをだ。

さらに髪はアップでメガネをかけている姿は完全にエロい目にあう女教師のそれだった。


「エールラじゃない、緊急時って何かあったの?」


なんと現れたエロい女教師は知識と知恵の神であるエールラだった、世も末である。


「何かあったの? じゃないわよ、大神殿からの問い合わせが凄いことになってるのよ!

アムテル様が第三位の神と言うのは本当なのか、各教会や神殿の神像の配置、今までの不敬をどうすればいいのかって。

しかも総大司教や大聖女なんか引退して各地のアムテル様の神像に謝罪の旅に出るって言い出したのよ!」


「あー、今の総大司教と大聖女は特に真面目だからねぇ。」


「真面目だからねぇ、じゃないわよ!

アムテル本当にどうするの、これもあなたが第三位の神だとバレちゃたからよ!」


アムテルの言葉にエールラに怒鳴られアレザに睨まれ、クレザにティニボスだったものを押しつけられそうになりながら、アムテルはキョトンとしながら言う。


「いや、バレるも何も隠してないわよ私は。」


その言葉に固まる神々。


「ん? あれ! 俺どうしたんだあぁぁぁ!?」


ティニボスだったものがティニボスに戻ったが、今はどうでもいいとクレザに投げ捨てられる。


「そう言えばそうだったわね。」


「勝手に人が判断した。」


「じゃあこのままでも……いい分けないよね!?」


アレザとクレザは納得しかけたが、エールラの声にハッとしてアムテルを見る。


「ハァ……仕方ないわね、ちょっと対応してくるわ。

悪いけどあなた達、あとはお願いね?」


アムテルはため息をついて仕方がないという風に遠巻きに見ていた自分の眷族にそう言うと、立ち去ってしまう。




「アレクシスの祝福を回収して、あとはお告げでもすれば収まるかな?」


「総大司教に大聖女のところには、下級神でも降臨させればいいと思うわ。」


「俺なんでクレザに投げ捨てられたの? それになんかあっちこっちが痛いんだけど!」


アレザとエールラは一安心だと落ち着き、ティニボスは打ち所が悪かったのか記憶を少し失っているようだ、だがクレザだけは注意深く去っていくアムテルを見守り、視界から消えてからアレザに言う。


「アレザ、アムテルは大丈夫かな?

対応するとは言ったけど、祝福を回収するとは言ってなかったよ。」


クレザの言葉に固まるアレザとエールラ、そこに普通のおっさんにしか見えない男がやって来ると。


「なぁ、何かあったのか?

アムテルが地上に降臨するって行ってしまったけど。」


そう言ってきた、そしてその言葉を聞いたアレザは。


「……カンオン、何で止めないのよ!?」


そう叫んで商売と幸運の神であるカンオンを責めるが、カンオンは手を振って無理だと言う。


「む、無茶言うなよ! チエナルナ様の眷族で一番強いアムテルを私が押さえられるわけないだろ!

そ、それよりもクレザは気がついていたのじゃないのか?」


カンオンの言葉にアレザはハッとして後ろを見ると、クレザはすでに逃げたしており背中を見せて走っていた。


「ハハハ……もうなるようにしかならないわね。」


エールラの言葉がむなしく神界響くのだった。



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