第18話 神々の位と加護。




「あなた「アデライト、少し黙っててくれ。」いいえ、あなたが黙りなさい。」


「あ、はい。」


「アレクシス、あなたには農民の守護神と言われる女神アムテル様の加護が与えられました。

アムテル様が何故、農民の守護神と言われているかというと、大地に生きる者達、農業や林業に生きる人達の多くが授けられる加護なのです。」


おお素晴らしい、さすがはアムテル様だ!

あまねく慈愛を示しているのだな!


「それで……アムテル様は低級神だと言われているのです、農業や林業に役に立つ土魔法などのスキルを与えてくれるのですが、それでそんなに強くなれないのであまり格の高い神ではないと思われているのです。

しかし落ち込むことはありませんよ? アムテル様の加護だからと言って、他の神々の加護と差があるわけではないのですから。」


なんと! それも好都合だ、農業や林業に役に立つスキルを強化してくれて、モブにしてくれるだなんて!

アムテル様、ありがとうございます!


自分が感謝の念をアムテル様に送っていると、兄達が自分の前に来て真っ直ぐな目で見ながら言ってくる。


「アレクシス、アムテル様の加護だからと悲観することはない、どんな加護であろうとアレクシスはアレクシスなのだからな!」


「兄貴の言う通りだ、それにアムテル様の加護しかもっていなくも、素晴らしい剣士や騎士になった者は一杯いるんだぞ!」


「うん、同じように軍師や文官にも素晴らしい能力の方がいるよ、つまりアレクシスの努力しだいってことさ!」


「ああ、それに後から高位の神の加護を授かった例も有るからね、諦めちゃダメだよ!」


俺を励まそうとそう言ってくれる兄さん達、嬉しい、嬉しいよ? でも別にアムテル様の加護だからって絶望してない、と言うよりも死後の世界?で願ったのがアムテル様の加護だし、なんか他の神様の加護を授けられそうになったけど、たぶんアムテル様が妨害してたしもらえなかったと思うよ?


そんなことを考えていると父さんが慌てて兄さん達の間から慌てて前に出て言ってくる。


「も、もちろん私も同じように思っているぞ!」


「あなた、いまさら取って付けたようにそう言われても……それよりもアレクシスの加護が気に入らないようですし、離縁して私は息子達と実家に……」


「いやそれ前にも言われた気がするけど、ブラックウッド家から後継ぎがいなくなるから!

あとアデライトと別れる気は無いから!

それに本当にアムテル様の加護だからと言って、アレクシスに何か思うことはないからな?」


「あなた、ならなんで先ほどの様なことを言ったのです。」


母さんの言葉に、父さんは顔をしかめながら話し始める。




「戦線も一時的に落ち着いたので国民や兵士達の指揮を上げるために、王都で凱旋パレードやパーティーをすることになっているのだが、そこにアデライトはもちろんだが息子達も連れて来るように陛下から要請が来ているのだ。」


「あら、ならブラックウッド家にはおめでたいことではないですか。」


「確かにな、ブラックウッド家だけのことを考えればそうなのだが……王都のパーティーとなれば様々な貴族が集まる、そこにアレクシスを連れていってみろ? アホがアレクシスの加護を貶してくるのが目に見えるではないか。」


父さんの言葉にハッとする母さんに兄さん達。


「そ、そんな、アレクシスが面と向かって蔑まされたら、火炎旋風の魔法を辺りに撃ちまくる自信があるわ!」


それ、室内のパーティーで使ったらまさに火炎地獄になるよね?


「落ち着いてくださいお母様、私やアルバートも力を合わせれば燃やし尽くして証拠を隠滅出来るはずです!」


うん、僕達だけ生き残ったら意味ないよね。


「大刀が滑ったって言えば何とかなる!」


それは絶対無理だよね。


「母さんも兄さん達も落ち着いて、僕はそんなに簡単に殺さないでジワジワと絞め殺すべきだと思うよ。」


それこそ証拠隠滅が難しく……アルバート兄さんだと何とかしそうで怖い。


「大丈夫、拷問が得意な知り合いがいるから!」


何が大丈夫なのかアレックス兄さんとは家族みんなでよく話し合った方がいいと思う、あとその変な人脈はいつできたの?


「バカ者! 場所は王都なのだぞ、そんなことをしようとしたら私はお前達を形だけでも止めようとしなければいけないではないか!」


いや父さん、ちゃんと止めようよ。

と言うか、アムテル様の加護で自分は嫌がってないし、予定通りだしすごく嬉しいんだけど? それをちゃんと説明した方がいいよね。




1時間後。




自分は両親に抱っこされ兄さん達に撫でられ、遠巻きに見ていた家臣達や侍女達に泣かれていた。


なんでって、それだけ加護を沢山の人に授けてくれると言うことはよっぽど愛情深い女神様である証拠だし、多くの農民出の部下達とお揃いの加護なのだから逆に嬉しいと自分が言ったからだ。


その言葉にみんなが感動して、現在の状況になっているのだ。


それで当分この状況は変わらないようだから、神々の位と加護の説明をするよ!


誰に? 誰にって……誰だろ、まあいいや、勉強のしなおしという意味もふくめて思い出してみよう。


まず加護なんだけど大中小があるらしい、はぁ?って思うだろうけど本当に大中小ってあるらしいんだよね。


例えば自分がもらったアムテル様の加護を見てみると、こう出ている。


女神アムテルの祝福(初)


うん、こうして……んん!? なんか変だぞ!


自分の加護を鑑定で調べたら変なのが出た、加護は鑑定か聖職者がたまに持っている聖別ってスキルで調べることが出来るんだけど、自分を自分で調べたんだから間違いがないはずなのに加護とでない! 慌てた俺は父さんや母さんに兄弟達を視てみる。


アントニー父さんにティニボス様の加護(大)とアレザ様とクレザ様の加護(小)。


アデライト母さんはトナルス様の加護(特大)とエールラ様の加護(大)を持ち、オマケで火の精霊に寵愛を持っている。


アランお兄様はアレザ様とクレザ様の加護(中)でアルフ兄さんがティニボス様の加護(大)トナルス様の加護(小)、アルバート兄さんはエールラ様の加護(大)カンオン様の加護(中)トナルス様の加護(小)でアレックス兄さんがカンオン様の加護(大)エールラ様の加護(小)トナルス様の加護(小)を持っている。


うん、前に視たときと変わらない、じゃあ俺の祝福ってなに!?


それに兄さん達の加護が見えにくい? 誰だ今の声は、何にしろ簡単に説明すると加護には大中小とあり、大きくなるほど授かるのが希になる。

それに母さんみたいにごく稀に幾つももらえたり特大をもらえたり、精霊から愛されその系統の魔法が強化されるなんてことがあるんだって。


そうなるとアラン兄さんだけ他の兄弟よりショボいよね?ってなりそうなんだけど、アレザ様とクレザ様の加護をもらえるのは本当に希で、もらえても大体は父さんみたく小なんだ。

それにこの世界の最高神、チエナルナ様は普通は加護をくれないのでほぼ最高の加護の中をもらってるんで凄いことなんだよ。


それと神様の序列ってよく分かってないらしく今まで与えられた加護の種類や能力、どんな言葉や印で人々を導いてくれたかなんで教会が予想してるんだって。




それによるとーーー




最高神 管理神チエナルナ様


眷族筆頭神、次席神 光と闇、太陽と月を司るアレザ様とクレザ様


第三位 戦神ティニボス様


第四位 知識と知恵の神エールラ様


第五位 商売と旅人の神カンオン様


第六位 魔法と魔術の神トナルス様


他にも多数いて自分の加護をくれたアムテル様は下級神なので、序列外と考えられてるんだって。


……この教会の考えた序列ってあてになるのかな?


何にしろこの序列順に加護も強力なるって考えられていて、より上の加護を持ってる人はそれだけで尊敬されたり一目置かれたりするんだって、でも父さんや母さんの話だと加護での強化にはそんなに差がなく、結局は本人の努力しだいだって話もあるって言うか経験上その可能性の方が高いらしい。


ただその神様の得意分野のスキルなんか少しは得られやすくなるっていうのは、あるらしいけどね。


そんなことを考えているうちに家族のみんなは落ち着いたのか、自分から離れて父さんがみんなに宣言するように言う。


「何にしろわが末の息子、アレクシスも加護を得ることが出来た。

これを記念して今夜はパーティーを開こうと思う、皆も手が空いている者は参加してくれ!」


父さんの言葉に家族や家臣に侍女達がそろって頭を下げ、夜まで休息となったのだった。




その頃、教会の前では。


「おお、シスター殿! 借金の返済は上手くいきましたぞ!

ブラックウッド家の文官と騎士の方も力を貸してくれて、ほぼ元金だけの返済で済みました!

残ったお金で戦争で増えた孤児達のための物資も買えるでしょうし、今後の運営も……シスター殿?」


教会に帰ってきた神殿騎士は教会の出入り口で大量の荷物を抱えて立ち尽くすシスターを見つけ、声をかけたが微動だにしないシスターに神殿騎士はいぶかしく思い肩を叩くとシスターはビクッと動き。


「し、司祭様! しゅ、祝福持ちの子がいました!」


そう叫んで手に抱えた大量の食料をーーー1つも落とすことなく駆け出したのだった。




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お金でまぁまぁ転生、特に波乱万丈ではない人生を歩みます。 バリ君 @barekun

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