第16話 教会に行こう。
朝食が終わり、教会に行くための準備をしていると、母さんがやって来る。
「アレクシス、今日はいい加護がもらえると良いわね。」
「そうですね、父さんや兄さん達もみんなで行くのですから、きっといい加護がもらえますよ!(アムテル様の加護って決まってますが)」
「そうね、今日はおめでたい日になるわね♪」
母さんがそう言うと、アイリスが俺の着替えを手伝いながら嬉しそうに言う。
「昨日の夕食会の話も話題になっております。
とても5歳とは思えない豪胆さだ、アレクシス様の言葉通り恐れるものは何もない、殿や若様達に率いられメンヒスと戦い、万が一に死んでも神々の祝福が受けられるのだからこんなに喜ばしいことはない! 家臣達はそう言っていると夫が言っておりました。」
「そうですそうです、お兄様がた全員が優秀なのに、末子のアレクシス様までこんなに優秀だということは、ブラックウッド家は神々の祝福を受けているとしか思えない! 皆がそう噂しているとうちの夫も言っておりました!」
続いてベルタがそう言うが、自分は心の中で思う。
うん、なんで自分が邪神を恐れないのかって言うと、アムテル様にほとんど倒されてるのと唯一逃げてるのは弱すぎるショボい邪神だと聞いて知ってるからなんだけどね!
まぁ、わざわざあげた評価を落とすのも何だし、言うつもりはないけどこれだけは言いたい、逃げた邪神は……兄さん達の誰かが倒してくれるはずだと!
「本当に喜ばしい事だわ、2人もアレクシスを無事にここまで育ててくれてありがとうね♪
アレクシス、あなたはお兄ちゃん達同様に私の自慢の息子よ、さぁ準備が終わったみたいね、みんなで教会に向かいましょう!」
2人に自分が褒められたのが嬉しいのか、満面の笑みだそう言う母さんにうながされて準備の終わった俺はアイリスとベルタに部屋の外で待っていたその子供、デリックとダリルを引き連れ玄関に向かう。
そこには父さんと兄さん達に、数多くの家臣達が待っていてくれた。
「それではこのめでたき日に、我が息子のアレクシスを連れて教会に行けるのは神々の加護が有ってこそだろう。
それではアレクシスを連れて教会に行き、我が息子のアレクシスに加護が得られるように願おうではないか!」
「「「おお!」」」
こうして家族全員で1台の馬車に乗り込むと、家臣達を連れ教会へと向かったのだった。
馬車に揺られて10数分、男爵家の町に有るとは思えないほど荘厳な教会に着く、そして父さんを先頭に中に入っていく。
「失礼する、我が息子に祈りの儀を願いたく参りました。」
「これはご領主様、祈りの儀により得られる加護はひとしく平等ですがそれでもよろしいですか?」
「神の前に人は皆が平等です、例えどの神の加護でも誇らしければ、悲しみ憂いることはありませぬ。」
「それでは祈りの間にどうぞ、儀式の準備が出来しだい開始しますのでお待ちください。」
司祭様は祭壇の方に歩いていくんだけど、特に準備とかあるように見えないんだけどな?
「あー、これは些少なのだが……」
父さんが小さな布袋を取り出すと、祭壇の方に向かうフリをして近くをウロウロしていた司祭様が慌てて近づき布袋を引ったくるように父さんから奪い取る。
その行動に父さんと母さんもさすがに顔をしかめ、家臣達は額に青筋を作って……アイリス、ベルタ、ナイフはしまえ。
何にしろ怒り始めた家臣達は文句を言おうとしたが、司祭様はそのままそばに控えていたシスターと大きな教会には大抵いると言う神殿騎士に駆け寄ると、お金の入った小袋を渡す、すると神殿騎士とシスターはうなづき。
「これで借金が返せます!」
「お、お金が余ったら子供達にお肉を買ってきても良いですか!?」
そう言って司祭様を見つめている。
「バ、バカ者、領主様達がいるんだぞ、早く行かんか!」
だが司祭様は怒って2人を追い出そうとする、それを見て自分とアランお兄様が呼び止める。
「「待った!」」
「その借金とやらの内容を見せろ。」
「それに子供達と言うのは孤児院の子供ですか? なら私のお小遣いから少し出しますから、それで色々と買ってきてあげてください。」
そう言ってアランお兄様は神殿騎士に、自分はシスターにそれぞれ向かい合う。
そして借用書を確認したアランお兄様が自分達を呼ぶ、うん、心の中ではお兄様呼びは止めよう。
「アルバート、アレックス、それにアレクシスも見てみろ、この契約はありなのか?」
「グレーだね、違法ではないよ。」
「この借用書もよく出来てる、司祭様もこれじゃあ文句を言えないね。」
「でもこれ、塀の上を歩いてる状態だから権力者が引っ張れば落とせるよ。」
自分達3人の意見を聞き少し考えるアラン兄さんだったが、直ぐに父さんに顔を向けて言う。
「父さん、この借用書は違法です、この者を呼び出し話を聞くべきです。」
「そうだな、だが今はアレクシスの晴れ舞台だ、司祭殿よ、すまぬが先にアレクシスに祈りを捧げてくれないだろうか?」
父さんに言われてハッとするアラン兄さん達、アルフ兄さんは頭は良いけどこういうことに向かないし、嫌なのか一歩離れて笑っている。
あとシスターは自分の差し出した財布を受け取って風のように消えていた。
「それでは、アレクシス様に加護が授けられるように祈りを捧げます!
エシャスを見守りし神々よ、汝等の新たな子が加護を欲しておりまする、どうかこの子アレクシスに加護を与えたまえ!」
司祭様がそう言って祭壇に祈ると、祭壇に飾られた神々の像の中で1番端に置かれた女神像が光輝き、その光が自分に降り注がれる。
うん、真ん中の方にある男性神の像も光ったけど、女神像の光にかき消されたのは見なかったことにしよう。
そして光がおさまると、司祭様が少し困った顔でこちらに向き直り言ってくる。
「アレクシス様には……アムテル様の加護が授けられました。
ここに新たな神の加護を受けし子が誕生したことに、教会はお祝いを申し上げます。」
その言葉に父さんあ然として兄さん達は言葉を無くして立ち尽くしていたが、母さんがみんなをうながして外に出ると、買い物袋を抱えたさっきのシスターとすれ違う、そして自分達は馬車にすぐに乗り屋敷に戻る途中、父さんはポツリとつぶやいた。
「アムテル様か……もう少し……いや、もう言っても意味ないか。」
この言葉と共に、周りのみなは残念なものを見る目で自分を見てくるのだった。
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