第8話 初めての戦闘
「この街道が完成したら、次はマッキンレイ男爵家に繋がる街道の整備を急ぐ、マッキンレイ街道も完成すれば我が家はますます繁栄するだろう、息子達よ部下達に領民達よ、ワシはもっともっと頑張るぞ、見ていてくれ!」
「殿、我等ブラッドロー家はたとえ地獄であろうとお供しますぞ!」
「男爵様ばんざい! ブラックウッドに栄光を!」
街道の説明をしていた父さんが突然に演説を始めた、それにドン引きするどころかブラッドローをはじめとした家臣団は泣きながらばんざいをしている。
兄さん達も父さんを尊敬の視線で見つめ、母さんはウットリとホホに手を当てて見守っている。
そんな状況に俺はどうしたものかと呆然としていると、視界の端に何か動くのが見えた。
『……なんだあれ?』
そこに居たのは緑色の肌の子供だった、頭に小さな角があり「ギィギィ」と言っている。
『定番のゴブリンだとは思うけど……』
自分はそう思いながらも鑑定のスキルを使ってみる。
[ゴブリン 定番のモンスター、スライムと共に異世界ものを代表する雑魚。
最近はスライムがやたらと強かったり、可愛がられていることにモンスター界のアイドルの座をとられるのではないかと、危機感を感じている。]
この鑑定結果は信じて良いのだろうか?
自分は別の問題が発生して考え込んでしまいそうになるが、頭の上からした声にハッとして視線を向ける。
「あら?あらあら? 今、魔力が動いたような?」
そこには不思議そうに俺を見る母さんがいた、自分はなんとなく気づかれるとまずいと思い「あーあー!」っと言いながらゴブリンの方に腕を振る。
「どうかしたのかしら……あらゴブリンだわ。」
「お母様、アレクシスは初めて見るゴブリンを見つけて驚いたのでは?」
「うーん、そうかしら? ちゃんと指向性が有って発動していたような?」
アラン兄さんがそう言ってくれたが母さんは不思議そうに俺を見ている、だがそこにアルフ兄さんが剣を抜きながら前に出てくる。
「何にしろゴブリンは討伐しちゃおうぜ、俺が先頭のをやるぜ!」
そう言ってアルフ兄さんが走り出そうとしてブラッドローさんに捕まっている。
「アルフ兄さんはもう少し考えて行動しようよ、2、3体は確実に逃がして巣穴を見つけよう、斥候は参会してて。」
そしてアルバート兄さんがそう命じると、昨日の訓練所にもいた斥候の人達が音もなく散らばっていく、そしてアラン兄さんが父さんを見て父さんが軽くうなづくのを見ると声をあげる。
「ブラックウッドの勇士達よ、ゴブリンは民の敵だ! 殲滅せよ!」
「「「おおぉ!」」」
アラン兄さんの声にアルフ兄さんと騎士や兵士達が雄叫びをあげてゴブリンに向かう。
うん、オーバーキルだよね、3体のゴブリンに50人以上の兵士に10数人の騎士達、ゴブリン達はその迫力に全力で逃げ出す。
『……皆がそっちに行ったら自分達は誰が守るんだろ?』
アラン兄さんとアルフ兄さんが護衛達とゴブリンを追って行ってしまうのを見守っていると、いつの間にか父さんが居ないのに気がつく。
何処に行ったんだろう? っと辺りを見回すといつの間にか父さんは自分よりデカイ大剣を振り回しながら先頭を走っていた。
『もし今ここに敵が来たらどうする……なんか来る!』
嫌な予感は当たるもので、何かがこちらに集団で近づいてくるのを感じると、俺は慌てて手足をバタつかせてアブアブと言う。
「……奥様、アレクシス坊ちゃまは斥候の才能がおありのようですね、右手から約50、うち3体はそこそこの大物です。」
すると後輩侍女のベルタが気配を感じる方に鋭い視線を向けながらそう言ってくる、そしてその手には1本づつショートソードが握られていた。
「あらあら、そうなのでちゅか? 1番に気がついて偉いでちゅねぇ~♪」
いや母さん、こっちは母さんとアルバート兄さんとアレックス兄さんに、侍女さん達が15人居るだけだなんだから早く逃げないと!
俺達兄弟のそれぞれ2人づつの専属侍女さんに、母さんが連れてきた5人の侍女さん達しか今ここに居ないのに、母さんは俺に才能が有ると言われて嬉しいのかノホホンっと笑っている。
「うーん、普通は何人か残すべきだと思うんだけだなぁ。」
「お母様がいるし不要だと思ったんでわ?」
アルバート兄さんとアレックス兄さんももっと慌てて……あわわわ! き、来た!
右手の草むらからゴブリンがやって来る、何体かは先ほど見かけたゴブリンよりも大きかったが、一番奥から現れた3体の個体に俺の目は釘つけになる。
何故ならその個体は身長が2メートル近くあり、鎧をまとっていたからだ。
「バブバブバブバブ!『来た来た来た、来たぁ!』」
「あらあら~? ゴブリンジュネラルもいるわね。」
俺はその迫力に手足をバタつかせて逃げるようにアピールするが、やはり母さんはノホホンと……いつの間にかデカイ杖を持ってる!
よくよく見るとアルバート兄さんは杖を、アレックス兄さんは弓を、血塗れ侍女のアイリスさんは槍を、そして他の侍女さん達もそれぞれが剣や槍に杖を手にして立っていた。
「バブゥ、アブウーア、バブバブゥ!『おおお、皆が武器を持ってる、自分にも武器をくれ!』」
俺はますます手足をバタつかせる、するとアイリスさんとベルタさんがそれに気がつき近くにやって来た。
「坊ちゃまはかなり興奮してますね、どうしたんでしょうか?」
「武器が欲しいんじゃない?」
「いや先輩、そんなわけないじゃないですか。」
「あら、分からないわよ? 試しにこのペティナイフを持たせてみましょ。」
ベルタさんとアイリスさんの話を聞いた母さんが、俺の手元に小さなナイフを持ってくる。
「アブゥ!『母さん達は守ってみせる!』」
自分はそのナイフを手にすると、母さんに当たらないように振りかぶり1番大きな気配のヤツに向けて投げつけた。
「ギヒィ!?」
「頭が爆発した!?」
「お見事です坊ちゃま!」
どうやらヘッドショットが決まったようでベルタさんは驚き、アイリスさんは褒めてくれる。
「あら~、アレクシスには硬い物を当分持たせない方がいいわねぇ。」
「凄いよアレクシス!」
「僕達も負けていられないね!」
母さんはオットリとそう言い、アルバート兄さんとアレックス兄さんは負けていられないと詠唱を初め弓に矢をつがえる。
「ゲギ!?」
先に攻撃したのは弓のアレックス兄さんだった、3本の矢がゴブリンジュネラルの1体に次々と命中してそのゴブリンジュネラルは倒れる。
「風よ、切り裂け!」
次にアルバート兄さんの詠唱が終わると、残ったゴブリンジュネラルを中心に竜巻が発生して、その中にいたゴブリン達は悲鳴もあげられずに切り裂かれた。
『おお、すごいよ兄さん達!』
俺は兄達のチートっぷりに驚きながらも応援するようにアブアブ言いながら手足をバタバタさせる。
「お話にならないですね。」
「まぁこの程度ならね。」
そして気がつくと残ったゴブリンは侍女さん達に殲滅されていた。
だが自分は気がつく、先ほどよりもさらに大きな気配が近づいてくるのに、母さんも気がついているようでニコニコと前に出ると。
「あらあら、ゴブリンロードね♪」
「グオォォオ!?」
草むらから出てきた3メートルを越えるゴブリンが出てくると共に手を振った、そして炎の壁が出現してその向こうから雄叫びが絶叫に変わる声がして、炎が消えると緑色の大きな魔石だけが残りゴブリンロードは消えていたのだった。
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