第6話 ブラックウッド家での日常、赤ちゃん時代1




夜中に代わる代わる兄さん達がやって来て、とどめに父さんが来た日から3ヶ月、まだまだ首も座らない自分だったが最近は母さんと侍女さん達に連れられて庭を散歩をしていた。


「いい天気ねぇ、アレクシスもお外に出れて嬉しいかしら?」


「あぶぅ~♪」


この散歩、母さんの体力が回復した1ヶ月経った頃からしているのだがこの3日間、雨が降っていたので家から出られずにいて、母さんと家の中を歩くだけだったので少しクサクサしてい俺は機嫌よく答える。


「そうでちゅか、嬉しいでちゅか~♪」


俺の機嫌のいい声に母さんも機嫌よくなり庭を歩く、そんな風に散歩をしていると庭の向こうから兄さん達がやって来た。


「お母様、アレクシスと散歩ですか?」


「ええそうよ、アラン達はこれから訓練かしら?」


「はい、この3日間、室内で簡単な運動しか出来なかったので。」


「そう、今のうちから頑張れば将来の宝になるから頑張るのよ。」


そう母さんは言って散歩を続けようとする、だがアルフ兄さんが何かを思いついたのか母さんを呼び止めてる。


「母さん、どうせなら訓練所まで行きませんか? アレクシスにも俺達の訓練を見てもらいたいですし。」


「……そうね、庭の同じ場所をグルグル回っててもつまらないし、行ってみましょう。」


母さんは少し考えてからそう言うと、何時もと違うコースに向かう。

そして兄達も嬉しそうに着いていくのだった。




「エイ!エイ!エイ!」


「集中しろ、訓練だからと気を抜くなよ!」


兄さん達や母さん達と着いた場所では数多くの兵士達が訓練をしていた。


ってか、多すぎじゃないか? 100人以上はいるみたいなんだけど……


そんなことを考えていると、母さんに向かって1人の騎士が歩いてくる。


「奥様、お久しぶりです。」


「ブラッドロー卿、お久しぶりですね。」


胸にクロスさせるように腕を持っていき、ビシ!っの音がするような挨拶をする騎士。

なぜ騎士だと思ったのかと言うと、他の兵士達は革の服に要所要所を鉄製の防具で固めているのに、この男だけがフルプレートアーマーを着ていたからだ。


ってかブラッドローって、血濡れ侍女さんの親戚か?


「奥様、娘は役に立っているでしょうか? 不出来な娘で坊ちゃまや奥様に何か迷惑をかけていないかと、家内と心配しておりまして……」


自分が疑問に思っていると、騎士さんが恐る恐るっという感じでたずねて来る。


「アイリスは私やアレクシスによく使えてくれています、そのような心配は無用ですよ。」


「そのように言っていただきありがたく思います、そう言えばお子様達は訓練ですか? 熱心ですな!」


母さんとその後ろに静かに立つ血濡れ侍女さん改め、アイリスさんを交互に見ていたブラッドローさんはそう言って兄達を見る。


「簡単な運動や素振りはしていたが、それだけでは鈍ってしまうからな。」


そんなブラッドローさんにアラン兄さんは尊大にそう言うがその後、弟達に向かって、


「民を守り部下を指導するのは貴族の努めだ、頑張るぞ!」


そう言っているので周りで聞いていた兵士達は尊敬の目でアラン兄さんを見ている。

そんな視線に気づかずにアラン兄さんはアルバート兄さんとアレックス兄さんに自分も素振りをしながら素振りの指導を始める。


そんな中で強面のブラッドローさんにアルフ兄さんが向かい。


「ブラッドロー団長、剣の稽古をつけてくれ!」


そう言ってアルフ兄さんはブラッドローさんに剣で挑んでいる。




「アルバート、アレックス、弓だけでなく剣も鍛えておかないといざという時に役に立てないぞ! エイ!エイ!」


「「はい兄さん! エイ!エイ!」」


アラン兄さんの掛け声に合わせて、アルバート兄さんとアレックス兄さんも練習用の木剣を振るう。


「おお、今の突きはよかったですぞ!」


「むぅ? こうかな、ハァ!!」


そしてアルフ兄さんは剣の才能が有るようで、ブラッドローさんと打ち合うように訓練をしていた。

素人目に見てもその太刀筋はとても10才には見えないほどだ。


そして素振りが小一時間続き、アラン兄さんが素振り終わり!っと言った後にそれぞれが別の訓練に移る。

アラン兄さんはアルフ兄さんと一緒にブラッドローさんに剣術を教えてもらい、アルバート兄さんとアレックス兄さんは弓の訓練をするようだ。


そして母さんは背後に侍女2人を従えてニコニコと兄達の訓練を見ている。

するとそんな母さんに軽装の兵士が話しかけてきた。


「奥様、今よろしいですか?」


「何かありましたか?」


母さんが返事をするとその兵士は少し離れた場所を指差し頼み事をしてくる。


「はい、実は今、斥候隊と魔導師隊で揉めてまして……高レベルの魔導師である奥様の意見を聞きたいのです。」


そう言われて指差した方を見ると目の前に居る兵士と同じ軽装の兵士達と、ローブを着た者達が集まり何かを話し合っていた。


母さんは俺を抱っこしたまま「あらあら?」っと言いながらそちらに向かう、後ろからブラッドローさんが「こら、奥様に迷惑をかけるな!」っと言いながらも興味が有るのか着いてくる。


「だから魔法で火をつけた方が良い!」


「戦場で貴重な魔力を使うわけにはいかんだろ、お前達が生活魔法か火つけ道具でやればいいんだ!」




「あらあら、皆さんどうしたの?」


「奥様!」


「お、お前は奥様を呼んできたのか!?」




そんな兵士達に母さんが声をかけると、兵士達は飛び上がり驚き、慌てて先ほどブラッドローさんがやった敬礼をしてくる。


そしてどうやら隊長らしい2人が前に出てくると、何事か説明をし始める。


「奥様、我々斥候隊で夜営等の時にどう火を起こすかで議論になっていまして、偵察などで行動をよく共に魔導師につけてもらうのが1番ではないか? っという話になったのですが……」


「陣地などでの夜営ならともかく、少数での偵察等で魔力をあまり余計なことに使うわけにはいかないと、我々は断ったのです。」


「なんだ、斥候達がサボりたいという話か? 火つけ道具も支給してるのだ、生活魔法でもいいからそれで火をつければ良いだろうに。」


ブラッドローさんが呆れてそう言うと、斥候隊長が慌てて言う。


「違うのです騎士団長、普通につけられるなら私達もこんな話はしませんが、話は雨や湿地などでどうするかと言うことなのです。」


斥候隊長の言うには、小雨や水気が酷くなければ薪等に火をつけられるのだが、その作業はかなり気を使う重労働になるのだそうだ、だが魔導師の高火力で種火だけでもつけてもらえばかなり作業が楽になるとのことだった。


「なんだ、そんな簡単なことで揉めていたのか、そんなの油をかけて火をつければいいだろ。」


いつの間にか兄達も来ていたようで、アルフ兄さんが呆れたように言うと、魔導師達はそれもそうだと言ったが斥候達は困ったように顔を見合わせる。


するとそんな斥候達に味方するように彼等の前に立ち反論したのはアルバートだった。


「アルフ兄さん、それはダメだよ、油を使うと余計に煙が出て居場所がバレるし、量を間違えたら場所によっては大火事になりかねないよ。」


アルバートの言葉にウンウンとうなづく斥候達。


「確かにな、しかしアルバートは本当になんでも知っているな!」


アラン兄さんはアルバート兄さんの事を褒めている。

反論されたアルフ兄さんは悔しそうに、ぜんぜんしてなくてアルバート兄さんに「そうなのか? いいことを聞いた、これで俺も1つ賢くなったぜ!」っと言って頭を撫でている。




「なるほどねぇ、それで私に意見を聞きに来たのね。

そうねぇ……魔導師の魔法でつけるのは、私は反対だわ。」


「お、奥様……」


母さんの言葉に斥候達はガッカリするが、母さんは困ったように続ける。


「何も魔力をケチってるわけじゃないのよ、見ててね?」


母さんがそう言うと、どうやら実験などのために用意したらしい組まれた薪に顔を向けて指をパチン!っと鳴らすと。


[ゴオォォォ!]


火と言うよりも炎の柱が立った、時間にして10秒も経たずに消えたが、同時にそこにあった薪も灰すら残さず消えていた、100本はあったはずなのに。


「ね? 威力を間違えたら薪が燃えつきちゃうわ。」


そう可愛らしくコロコロと笑いながら言う母さん、だが兄達やブラッドローさんに侍女さん達以外は信じられないものを見たとばかりに目を見開き、薪があった場所を凝視している。


「流石は奥様ですな!」


「でもこれだと斥候達は火つけに苦労するな、何かいい着火材等があれば支給するように父様に交渉するのだが……」


ブラッドローさんが母さんを手放しに褒めていたが、アラン兄さんが何かしら良い手はないかとそんなことを呟くと。


「それだよ兄さん! 着火材だけじゃなく、火をおこしやすい条件が有るはずだ、逆に言えば斥候達にそれらを持たせれば良いんだよ!」


「確か濡れてる場所でも盾なんかをひけば煮炊きが出来たはず、それに成形炭とか言う物が有ると聞いたことが……」


そんなアラン兄さんのつぶやきにアレックスが反応すると、アルバート兄さんも何かを思い出すようにブツブツとつぶやき出す。


そんな兄さん達を母さんは見ながら。


「あらあら、これなら解決しそうね♪」


っと言って侍女2人を連れて歩き出す、そんな母さんに抱っこされながら自分は


『兄さん達がチートすぎる!』


っと思うのだった。



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