第2話 お金でスキルを買ってください。
「その後あなたは日頃の疲れと栄養不足で数日間意識不明になり結局、誰にも気づかれることもなく熱と栄養失調で死んでしまったのですよ。」
「やっぱり……このオフィスに入ってくる前に、通路の奥が真っ暗で何も見えなくて心なしか行っちゃあいけないような気が凄くしたんです。
それでもしかしてとは思ったんです。」
「良い判断ですね、通路の方に行ったらなんの恩恵もなく転生してしまってましたよ。」
「そうなんですか……それで、自分はこれからどうなるんですか?」
自分が死んだとき、と言うか意識を失ったときの事を思い出し、そしてこのオフィスに入ってきて言われたことを思い出す。
『はじめまして伴 慎一さん、当選金をいただけると約束してくれるなら、優遇された異世界転生をお約束しますよ!』
そう1メートル程のサイズのドラゴンに言われて何がなんだか分からなかったが、宝くじの当選金で異世界転生と色々とスキルや生まれなどを買えると言われて今になっているのだ。
「先ほども言いましたが、今回特別にあなたの当選金で生まれる先やスキルを選ばせてあげます。
生まれる先やスキルのレベルによってはかなり高額になりますが、あなたの次の転生先で役に立つはずです、詳しくはこちらを見てください。」
そう言ってドライトはタブレットを俺に差し出してくる、そこには武術系、魔法系、生産系等々書かれていた。
試しに武術系を押してみるとそこには剣術や槍などの長柄術等々、色々とスキルが載っている、魔法には火魔法や水魔法に無属性魔法等が載っていた。
「これは?」
「転生後の才能をこれで購入出来ます、試しに剣術を押してみてください。」
ドライトに言われて試しに剣術を押してみると、剣術の横に1と数字がつく。
さらに2度3度と押すと、2、3と数字が上がっていく、だが同時に自分は気がついてしまった、右上にある1000万のポイントが減っていく事に。
「こ、これって!」
「はい、あなたの当選金の分がポイント化されてます。
要するにお金でスキルを買うことで、転生先で優遇された人生を送れると言うことなんですよ。」
そう言われて自分は慌てる、何故なら剣術のスキルをとった瞬間にポイントが100減ったからだ。
「あ、あの、1ポイントって幾らなんですか?」
「1ポイントで10000円です。」
「い、10000円!」
つ、つまり剣術1で100万円もするのか!
驚きに固まったいると、ドライトがそれに気がつき説明してくる。
「高いとお思いですか? しかしこの1と言うのは才能のことです、何の才能もない方に比べれば大きな違いなんですよ?
何にしろ試しに剣術を10まで上げてみてください。」
ドライトに言われるままに剣術を10まで上げる、するとポイントが100万減っていた。
つまり1億円を使ったことになるので、俺は泡を吹いて倒れそうになる。
「慎一さん、戻せますから気絶しないでください、それに剣術10まで上げると下級神ぐらいなら互角以上に戦えるんです、それが1億円で買えるんですからお得でしょ?」
いや、お得と言われても神と戦うなんて嫌だし……何にしろポイントが戻ると言うので試してみると、剣術のスキルを下げたら戻った。
「それじゃあこれからそのタブレットで色々と決めてくださいね。
あ、それからスキルだけでなく生まれや性別なんかも決められるで気をつけてくださいね?」
そう言うとドライトは自分のパソコンに向かい直り、「またブル○ン株を買えませんでした!
ですが負けませんよ、ルマンドは私のものです!」などと叫んでいる。
……この龍はお菓子の会社の株の売り買いを、誰と争っているんだろう?
そう思ったが聞くもの怖いので、今は自分の前に置かれたタブレットに集中することにする。
そして分かったのがスキルの他に、生まれや容姿の美醜に身長体格等々が載っていた。
生まれや容姿等はあまり気にならなかったが、健康が決まるそのまま健康と言う項目も有った。
色々と試そうと思って見て見ると、注意と書かれた項目が有るのに気がつく。
そこを見てみると普通の人でスキルは平均3位は持っているらしい、そして健康が0だと、病気になれば医療水準の低い異世界だと、すぐに死んでしまう可能性が有るので注意するようにとの事だった。
そしてよくよく考えるとどんな世界に行くかなど聞いてなかったので、ドライトに聞こうと思ったがタブレットの注意に書かれていた。
自分が送られる世界は地球で言う中世のような世界で、剣と魔法の有る世界との事だった。
スキルの項目に魔法と有ったので、有るとは思っていたがそこにも注意事項として魔力感知や魔力操作、生活魔法は最低3は取るように書かれていた、これが無いと魔法が使えないのと生活魔法は無いと不便すぎるからだそうだ……と言うか、さっきから気になることが有ると都合よく注意事項が出てくるような?
チラリとドライトの方を見ると、
「ルマンドアイスは私のものです! 誰にも渡しませんよ!」
等と雄叫びをあげながらパソコンを操作していた。
それを見なかったことにしてタブレットに視線を戻すと、お得なセットが今なら格安で! っと書かれていた、やっぱり誰かタブレットを操作してないかなこれ?
そう思いながお得なセットを押してみると、全スキル3セットで100万ポイント、5のセットで300万ポイントっと書かれていた。
試しに手動でスキルを3にしていくと、全てのスキルを3にし終わる前に100万ポイントを突破してしまい、5だと途中で300万ポイントに達した。
それを見て俺は確かにお得だと思い5のセットを選ぶ、そしてトップ画面に戻るが何故か気になってその他をもう1度押して下の方にスクロールしていくと、そこにはとんでもないものが有った。
[異世界知識 100万ポイント]
恐る恐るそれを押してみると、説明文が出る。
異世界知識、つまり現世での知識と記憶を持って転生及び転移が出来る。
このスキルにレベルはありません。
こ、こんな爆弾がこんなところに!
俺はそれを慌てて押す、異世界に転移なり転生するにしても記憶を失っては意味がないからだ。
さらに気がついてしまう、その少し上にギフトと書かれている項目が有ることに、自分も少しは異世界物のネット小説を見たことが有るので、ギフトが重要な世界も有ると知っていたからだ。
しかしそこを押して出てきたものは予想と違い―――
[現世でお世話になった方々に、幸福のお裾分けを……100万ポイント]
っと書かれていた。
……はぁ? なんだこれ? そう思い押してみると案の定、説明文が出る。
地球で伴 慎一さんがお世話になった方々にささやかな幸せが送られます、返せなかったご恩をここで! っと、書かれていた。
それを見た俺は迷わずに押す、そしてフッとドライトを見てみると、自分を目を細めて見ていたがこちらに気がつくとまたパソコンに戻り。
「ルマンド、エリーゼ、ホワイトロリータの順で食べるのです、そしてたまにポテルで口直しです、ガトーレーズンはお好みで!」
等と言い出してキーボードを叩いている。
そんなドライトに軽く頭を下げるとタブレットに再度向き直り。
「ふぁ!?」
っと声を出してしまう、そこにはなんと―――
[院長夫妻や院の弟や妹、兄弟達に大きな幸せを! 200万ポイント]
っと有った。
「なんだよこれ!」
俺はそう叫びながら押す、横目で見るとドライトがニヤニヤ笑っていた。
なんか詐欺か何かで自分のお金を巻き上げられてる気が凄いするが、院長夫妻やまだ幼い弟に妹達の事を思い出すと選ばない選択はなかった。
何にしろこれで700万ポイントを使い、残りは300万ポイントとなった。
そしてスキルを確認すると全てのスキルに5が着いていたので真っ先にあるスキルをMAXの10まで上げる、それは健康のスキルだった。
何故かと言うと自分は栄養失調と熱で死んだと言うので、次の人生では健康的に生きたいと思ったからだ、だがそこであることに気がつく。
「あれ? ポイントが思ったよりも減らない?」
「フオォォォ! ……どうかしましたか?」
俺が思わず声を出すと、コードを持ってマウスを振り回していたドライトがこちらを見ながら声をかけてくる。
「い、いや健康を10にしたんだけど、思ったよりもポイントが下がらなかったな、って思って。」
自分がそう言うと、ドライトは納得したようにうなづきなから言ってくる。
「それはスキルによって違うからです、例えば剣術のスキルと鎚術、メイス等を使うスキルだと利用できる幅が違いますよね?
そう言うことですよ。」
そう言われて納得すると試しに色々と押してみる、すると汎用性や有用性が高いスキルほど高いレベルにするときにポイントを使うようだった。
何にしろ色々と試しながら選んだスキルは―――
剣術 7
盾術 8
体術 8
弓術 8
魔力感知 7
魔力操作 7
各魔法 8
生活魔法 10
鑑定 7
斥候術 8
投擲術 10
気功法 8
農耕 10
牧畜 8
建築 8
健康 10
カリスマ 7
幸運 10
その他にお得なセットで5がいっぱいになった。
幸運はやはり高くてこれに多くのポイントを使ってしまった、あとは生活魔法と投擲術と農耕は安かったので10にすることが出来て、戦闘系や魔法系は高くてあまり上げることが出来なかった。
と言うか、異世界で冒険にも興味がないわけではないが、やはり農業をしながら暮らしたいと思ったのでこのスキルとなった。
牧畜が8なのはあくまでも農業メインでいこうと思ったからだ、あと建築が8と高いのは自分で家を建てたいと思ったのと8までなら安かったからだ、でも9、10にしようとしたら急に必要なポイントがはね上がった。
ドライトに聞いたら、建築の9、10だと芸術の域に達するので、美術も勝手に上がるのでその分だと言われた、確認したら本当に8に上がっていた。
何にしろこうしてほとんどのポイントを使い、残りは少し容姿や生まれなどに入れさせてもらった。
やっぱり生まれと容姿は少しは恵まれたいからね……。
こうして設定を終えると、ドライトにタブレットを渡す。
「終わりましたか? なら転生先の事を説明しますよ!」
ドライトがそう言うと、嫌そうな顔をした男女2人がこちらにやって来るのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます