第5話 永見の告白

思い返しても俺の人生は本当に最悪な18年だったと思う。

今は縁を切っているが.....パチンコとスロットでの借金が1000万円を超えてから.....コイツらはもう親じゃ無いと思い始め。

そして.....何かとあれば俺に当たらないと愚痴を溢して虐待。

母親は浮気性。


無茶苦茶な家庭だった。

俺はそんな家庭が嫌いで嫌いで仕方が無く。

捨てて家を出た。


そして今、こうして.....後輩と一緒に飲みに行ったりしている。

幸せな日々というか。

当たり前の日々を過ごしている。


俺は考えながらバーで永見と飲んでいた。

永見は熱っている。

それなりに酔っている。

俺は永見に心配の声を掛ける。


「飲み過ぎだろお前。マスターの特製を。大丈夫か」


「何だか飲みたい気分なんです」


「.....は?」


「.....その、何だか凄く、です」


「.....???」


何だか意味が分からない。

だけど永見は俺を酔った顔で見てから.....ムスッとした。

それからまた焼酎で作った特製の酒を注文しようとしたので俺はマスターに、有難うです!、と言って慌てて永見と一緒にバーを出た。

金を支払って、だ。


「お前飲み過ぎだって!マジで」


「ヒック。そんな事無いですもん」


「どうすんだよ。歩いて帰れるか?」


「.....太刀山さんが家に送って下さいよ。私を」


「アホかお前は。一人暮らしだろ。良い加減に.....」


すると永見がいきなり俺に向いてきた。

それからジッと見てくる。

俺は、?!、と思いながら永見を見る。

永見は、付いて来て下さい、とウルウルと目を涙目にする。

何でそうなるんだ.....。


「タクシー呼ぶから一人で帰った方が良い」


「.....嫌です。帰りたくない.....」


「ああもう.....」


俺は額に手を添える。

酔っていると面倒だよな。

何だってこんな事に、と思ったのだが。

次の永見の言葉に俺は驚愕した。

何を言ったかといえば。


「.....太刀山さんがキスをしてくれたら帰ります」


「.....は?」


「.....キスして下さい」


「.....お前は度重なってアホか!酔い過ぎだ!好きでもない男と.....」


私が好きでもない男とキスでもすると思いますか?

と俺に赤い顔で真剣な顔を向けてくる永見。

ど、どういう意味だ?

それは.....まさか。


「.....私は貴方が好きです」


「.....!」


「だって昔から好きです。貴方が.....。貴方はずっと私に優しいですから」


「.....マジか.....」


俺は考えてから永見の額を弾いた。

それから、あう、と言う永見を見る。

永見は可愛らしく上目遣いで俺を見てくる。

俺は溜息を吐いた。


「そんな簡単にキスとか言うな。良いか。体を大切にしろ。酔ってんだよお前」


「.....ケチですね」


「.....ケチとかの問題じゃねーっての。帰れもう」


「はいはい。分かりました」


でも.....どうあれ私の思いは本当です。

だから.....いつか付き合って下さい、と柔かに俺に向いてくる永見。

そのままタクシーに乗って行った。

俺はその姿を見ながら、やれやれ、と思い横を見る。

そこに.....何故か何処でこの場所を突き止めたのか泣いている静葉が立っていた。


「.....おま.....!?」


「.....お兄ちゃん。浮気していたんですか?」


「ちょ、ちょっと待て。午後9時だぞ!何やってんだ外で!」


「.....そんな事はどうでも良いです。私は聞いています。お兄ちゃんは好きなんですか?あの方が」


「.....好きじゃないよ。俺は。.....永見は良い子だけど」


涙を拭う静葉。

俺は.....その姿を見ながら溜息を吐く。

そして、静葉、と声を掛けた。

俺の気持ちを知ってもらえるか、とも、だ。


「.....お兄ちゃんの気持ち?」


「.....実の所、言い訳するつもりは無いんだけどさ。俺な人を好きになるって分からないんだ。幼い頃に親の愛を受けてないから。だから.....お前の嫉妬の事がよく分からないんだ。御免な」


「.....お兄ちゃん.....」


「.....お前の気持ちも何もかもを知っているよ。だけどな.....こんなんで本当にごめんだけど」


「.....そうなんですね.....」


でもその。お兄ちゃんが取られちゃうかもしれない.....怖さがあります、と静葉は悲しげな顔をする。

俺は.....その姿に静葉を抱きしめた。

それから頭を撫でる。


「静葉。落ち着け。俺はお前の元から居なくなったりしないから」


「.....約束ですよ?私は貴方のお嫁さんなんですから」


「ああ」


そうしていると。

タクシーが戻って来た。

そしてバタバタと降りて来る永見。

それから俺達を見て.....驚愕した様に目を丸くした。

バーに忘れ物.....と言いながら、だったが。


「.....え?ちょ、誰ですか?その子」


「.....!」


まさかの事態だ。

永見に.....バレてしまった。

静葉の事が、だ。

かなり見開いている永見を見ながら俺は青ざめる。

い。いや。この子はその、と説明をせざるを得なかった。

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天使?と俺とボロアパートと アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou

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