第2話 コンビニ店員の知り合い

俺の名前は太刀山新。

ただひたすらに.....がむしゃらに生きて来た様な人間だ。

その俺に.....天使が舞い降りた様に近所のクソガキだったこの何年かで成長した少女がやって来た。


顔立ちは完全に美少女であり。

ずっと俺と結婚したかったの、と俺を慕ってくる。

俺は.....信じられない気持ちで御手洗静葉を見ていた。


そんな考えを抱きながら風呂から上がると。

そこには着替えが律儀においてあり。

洗濯機が動いていた。


俺はビックリしながら、やはり現実なんだな、と思ってしまう。

それから狭苦しい洗面所から出ると。

そこには控えめにご飯が置かれていた。

俺に対して静葉はニコニコしながら、だ。


「お兄ちゃん。少しだけ食べてみて下さい。お腹がいっぱいだと思いますから少しだけです」


「.....いや、良いけど静葉。お前.....夜中になってるぞ。大丈夫か」


「大丈夫ですよ」


「.....なら良いけど」


そこにあった料理。

それは筑前煮だった。

俺は狭苦しい部屋に置かれているちゃぶ台の前に腰掛けながら静葉を見る。

天使の様な表情を浮かべる少女。

少しだけ俺は赤面した。


「.....どうしたんですか?お兄ちゃん」


「.....何でもない。静葉がまさかこんなに良い子に育つとはな、と思っただけだ」


「もー。お兄ちゃんったら」


「.....ハハハ」


そして筑前煮を食べてみる。

それから驚愕する。

何だこの美味しさ!?、と思いながら、だ。


俺の食っていた惣菜弁当がまるでゴミじゃないか、とも思ってしまった。

そしてそのまま結構一杯に盛られていた筑前煮をそのままカツカツ食べる。

何だこれ、箸が止まらない。


「お、お兄ちゃん!?そんなに食べたらお腹が.....」


「俺の食ってきたものは全部ゴミだ。.....だからお前の心温まる料理を残す訳にはいかないんだ」


「.....お兄ちゃん.....」


「つうか、これ美味すぎる。味付けとか完璧すぎるだろ。.....お前.....どんだけ鍛えたんだ」


「.....此処まで来るのに3年ぐらい掛かりました。.....こんなに食べてくれる人が居て.....泣きそうです。報われたなって」


そして静葉は目尻に涙を浮かべる。

俺は.....その姿を見ながら笑みを浮かべて味付けも完璧な筑前煮を全部食べた。

あ、しまったな。

静葉の分.....まで全部食ってしまった。

俺は勢い良く頭を下げる。


「.....すまん。お前の分も有ったんじゃないか?」


「.....私の分なんて何時でも食べれます。だって私が作るんですから。私は.....貴方に食べてもらえるのが幸せです」


「.....!」


『幸せだよ』


静葉のその嬉しそうな姿を見ていると。

かなり.....昔の記憶が蘇ってきた。

俺は少しだけ.....唇を噛んでから静葉を見る。

そしてゆっくり口角を上げた。


「お前が来てくれて良かった気がする。.....俺は腐った惣菜ばかりで.....心を忘れていた」


「本当ですか!?.....私、嬉しいです」


「成長したな。静葉」


「.....はい!嬉しいです!」


それから頬を掻いて頬を朱に染めて笑顔を浮かべる静葉。

俺はその姿を見ながら.....、さて、と言う。

静葉は?を浮かべて俺を見てくる。

俺は外に出よう。


「.....お前、今の今まで風呂に入って無いだろ。俺、近所のコンビニに行ってくるからその間に入りな。配慮した方が良いだろ」


「え!?良いですよ!お兄ちゃん!私、着替えは洗面所で.....」


「大丈夫だ。酔いも覚めたし。雑誌読んでくる」


「.....そういう優しい心遣いが.....」


「ん?なんか言ったか?」


何かブツブツと聞こえた気がしたが。

い、いえ!、と声を発する静葉。

それから、じゃあお言葉に甘えて、と話す静葉。

俺は、ああ、と回答しながらそのままアパートに鍵を掛けて外に出た。

そして.....近所のコンビニに向かう。


ガー


「.....あれ?新?」


「.....ん?よお。優。.....お前、この時間にバイトだっけ?」


コンビニに入ると優を見かけた。

目の前に茶髪のロングの女性が居る。

俺を見てビックリしながら.....柔和な笑みを浮かべる。


長嶋優(ながしまゆう)24歳。

俺の同級生に近い知り合いの女性だ。

顔立ちも薄化粧で済むぐらいに整っており、一般的な美人の女性と言える。

そして泣きぼくろに少し凛とした目。

更に.....口元にも黒子。

そんな感じの女性で俺が住んでいる場所の近場のコンビニでバイトをしている。


「新。何だか顔が綻んでるね」


「.....そうか?俺は何時も通りだが」


「そうかな。私は.....貴方の表情をよく見るから」


「.....え?それってどういう意味だ」


言ってから.....優は真っ赤に顔を染めた。

それから、あ!ふ。深い意味は無いから!!!!!、と顔の前でブンブンと手を振って否定をする。

俺は目をパチクリして、そ。そうか、と言葉を発する。

そして優は俺を上目遣いで見てくる。


「で?何で今日はこんな時間に来たの?」


「.....ああ。えっと.....ちょっと理由があってな。まあ深い理由は無いけど」


「.....?.....そうなんだ。.....私に会いに来たんじゃ無いんだ.....」


「?.....今何つった?」


「な、何でもない!!!!!」


どいつもこいつも声が小さいんだが。

聞き取れないんだが。

考えながら雑誌に手をかける。


そして読み始めた。

優が肉まんとかのケースを拭き始めた.....のだが。

直ぐに俺に向いてきた。


「そういえば.....何だか新から女の子の香りがする」


「.....え?.....え?あ。そうか?気のせいじゃ.....」


「.....」


「.....気のせいだって」


「本当に?怪しいな。こんなハーブの香りは初めて嗅いだんだけど」


ジト目で俺を見てくる優。

俺はなんて誤魔化そうかと思ったが客が来た。

優は、いらっしゃいませ、と対応する。

た、助かった。

女子高生が俺の部屋に居るとかあまり言いたく無いしな.....。


「.....」


優の姿を確認しながら目の前の雑誌の表紙を見る。

そこには女性が服でコーデした写真がある。

俺は.....その姿を見ながら、俺の家に来たらこんな贅沢も出来ないのにな、と思ってしまったが。

そうだ、と思う。


「.....どうせ外に買い出しに行かないといけない。じゃあ.....買ってやろうかな。服とかも」


思いつつ俺は雑誌を置く。

それから飲み物を見たりパンを見たりしてから。

そのまま忙しそうな優を一瞥してから家に帰ろうとした。

その時だ。


「待って。新」


「.....どうした?」


「こ、今度.....一緒に.....」


「.....?」


「.....一緒に買い物に出かけない?その.....嫌じゃなかったら」


俺は驚きながら優を見る。

優は赤面でモジモジしながら俺を見てくる。

ダメ?的な感じを出しながら、だ。

俺は、いや。それは構わないが.....、と返事する。

すると優はぱあっと顔を明るくした。


「じゃあ約束だよ。一緒に.....買い物に行こう」


「あ、ああ.....」


「今週の土曜日とか空いてる?」


「.....あ、ああ.....」


じゃあ.....今週の土曜日、ね?

と優は俺の手に触れた。

そして鼻歌混じりに店に戻って行く。

俺は目をパチクリしながら、何だろう?、と思った。

優からまさかそんな提案を受けるとは思わなかったから、だ。

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