第五話:話の裏に
翌日。
ゴールデンウィークも最終日となった祝日の昼過ぎ。
それは立場こそ違えど、直接イベントの告知を見ているメンバーだった。
彼女達はテーブル席に仲良く向かい合い座り、飲み物も用意し一息ついた所だ。
「皆、集まってくれてありがと。椿さんもライブ明けで休みたい所ごめんね」
「いえ。お気になさらないでください」
いつになく真剣な顔の
──随分気負ってるね……。
「妹ちゃん。諒君に今回の件って話をしたの?」
「あ、いえ。ちょっとタイミング逃しちゃってて……」
困ったような顔で俯く
母親から、彼がショルダーキーボード代を肩代わりしてくれた事を知ったものの、その件を話そうと思う前に、安心して寝付いてしまい。
朝には既に諒が出掛けていたため、結局礼を言う機会を逸して今に至っていたのだ。
「そっかぁ。まあ私もまだ萌絵に話せてないんだよね〜」
「そうなのですか?」
「うん。萌絵ってこういうのに否定的っていうか、きっと私が本気で頑張るって言ったら怒りそうでさ〜。『こんなにお金とか掛けるなんて無茶はダメよ!』、とか言われそうだし……」
多少なりとも今回の計画の無茶を知るからこそ、
「あの。お二人はやはり、『Two Rougeなりきりフェスタ』に参加されるおつもりですか?」
「うん。私は本気で頑張りたいんだけどな〜。妹ちゃんもそうだよね?」
「は、はい」
緊張した面持ちで頷く
「それでね。萌絵や諒君にも納得してもらう為に、外堀固めようって思ってるんだけど、そこで二人に協力して欲しいの」
「勿論、頑張るというなら応援はするけど、協力って具体的にどんな事すれば?」
至極最もな質問を返した彼に、
「
「僕が?」
「そ。私と萌絵が話したら絶対話が
その話に、
既にその話に
だが、タイミング的に言い出しにくくなってしまい、そのまま俯き塞ぎ込んでしまう。
それに気づかない
「椿さんにはその……自宅にあるスタジオ、借りれないかなーって」
「
「うん。色々考えたけど、練習する場所とかの充てもないし、お金もめちゃめちゃ掛かっちゃうしで正直八方塞がりでさ〜。だから少しでも予算を抑えるのに、せめてスタジオ代だけでも浮かせたくって……。お願い!」
「お、お願いします!」
まるで神頼みするように両手を合わせた
──「スタジオの件と
同時にこんな話もされていたのだ。
──「多分萌絵さんはこの話したら怒りそうだから、俺が話をしてみるから」
一方、昨晩椿も諒にこの話の相談をされた時、こんな話をされていた。
──「ちなみに、きっと
と。
──諒って、もうこういう所まで理解しちゃってるのか。
──やはり、諒様の仰っていた通りですね。
既に友達の性格をしっかりと理解している諒の凄さを知り、感心した二人は、再び向かい合う
「はい。スタジオの件は承知しました。もしお二人がよろしければ、衣装についてもご協力致しますよ?」
「え!?」
「
「で、でも真行寺先輩。衣装代って結構な金額するんじゃないですか!?」
「はい。ですが何時もお二人にはお友達として仲良くして頂いておりますので。そのささやかなお返しです」
自然に優しげな笑みを浮かべる椿を見て、今度は
「僕も構わないよ。けどきっと、二人だって
その時、ふっと
──あれ? そういえばお
確かに、母親は諒から
だが、勿論
となれば、諒に話したとすれば
──それに、確かに
あまりに出来過ぎな位、話がスムーズに進み過ぎている。
その違和感もまた、彼女の心に疑念を生んでいた。
「ほんとに? ほんとに二人ともいいの?」
戸惑いが喜びに変わり始めた
だが、そこにある
「妹ちゃん?」
「あ、はい」
「……もしかして、あんまり嬉しくない?」
どこかすっきりしない反応に、
──もしかして妹ちゃん、私があまりに乗り気だったから、合わせてくれてただけだったとか……。
そんな心の不安が一気に湧き上がった為か。さっきまでの表情から一転。彼女の表情に影を落とす。
それを見て、
「ち、違うんです! 私も凄く嬉しいですよ! じゃなかったら限定のショルダーキーボードを買うわけないじゃないですか!」
「え? 妹ちゃんあれ買ったの!? っていうか当たっちゃったの!? 昨日抽選あったあれだよね!?」
突然告げられた真実に驚愕し、捲し立てたのは
だがそれも仕方ないだろう。彼女もあの価格に、抽選があったことまで知っていたのだから。
思わず口を滑らせた
彼女は思わず身体を小さく縮こまらせると、うつむいたままおずおずと話し出す。
「は、はい。抽選に当たっちゃって……それで、親に、相談して……」
「その事、諒君は知ってるの?」
「……えっと、その……」
その質問にどう答えるか迷った
「あの……お
「え? 内緒でって、妹ちゃんに?」
「はい。やっぱり高い買い物だったし、受験生なんだからってお母さんに反対されて……それで、諦めようと思ったんですけど……。お
「でもあれ、十五万位したよね!?」
「え? 十五万円ですか!?」
その驚きは彼も同じだったが……。
「……相変わらずだね。諒は」
ふぅっとため息を
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