幕間:妹の願いに
「はぁ……」
あの後家に帰ってきた諒と
正座し座卓に並ぶ夕食を少し食べては、露骨に困ったようなため息を
「
「え? あ、ううん。別に……」
母、静江の問いかけに慌てて平然を装おうとするも、普段より進んでいない食事が現実を物語らせている。
「あまり無理はするなよ」
「う、うん。ありがと」
短く口にされた父、
「お母さん。ごめんなさい。今日、残しても良い?」
彼女はそんな事を言ってきた。
「いいわよ、無理しないで。先にお風呂でも入ってすっきりなさい」
「うん。ご馳走様」
先に席を立ち二階に上がっていった
「何があったんだ?」
「さあ。諒は何か知ってる?」
「いや。今日知り合いの家でTwo Rougeのライブ中継を観たってのは知ってるけど……」
「そう。受験生なんだから、あまり遊びに夢中でも困るのだけど……」
心配そうにする静江に対し。
「まあいいじゃないか。人生は一度きり。ちゃんと志望校に合格できるなら、少し位は大目に見てやればいいさ」
何処か楽観的な
そんな対照的な二人を見ながら、諒は思わず微笑む。
──しかし、何があったんだ?
内心そんな疑問が浮かんだ諒だったが、今は食事中。
その謎を追いたい心を抑え、ただ静かに食事を食べすすめるのだった。
* * * * *
「……つまり、あいつはその企画に
『そうみたいだね。二人共相当本気で頑張りたいみたいだけど……。でも、考えていることが本格的過ぎて、中高生でどうにかできる範囲を超えてる気がするんだよね』
夕食を済ませた後。
風呂を済ませた諒はパジャマ姿でベッドに横になりながら
だからこそ
「確かに。でも
『今日の感じだと間違いなくね。正直お手上げだったし……』
「……お前も大変だったんだな」
珍しく疲れた声を上げた
『諒はどうする気だい?』
「まだ直接
『でもきっと、すごくお金とか掛けちゃいそうだよね』
「まあそこは色々考えて親とかにも相談してみるよ。悪いんだけど、
『それは大丈夫だよ。勿論多少はカンパしてもいいしね』
「そこまで無理しなくてもいいって」
『僕だって折角なら力になりたいし。まずは何か動きがあったら教えてくれるかい?』
「ああ分かった。悪かったな。こんな時間に」
『大丈夫だよ。明日も休みだし。その代わりその内またテニス付き合ってくれるかい?』
「分かった。じゃあまたな。おやすみ」
『おやすみ』
就寝の挨拶を交わした諒は、スマートフォンをベッドボードに置くと、両手を頭の後ろにやり、足を組んだまま天井を見つめた。
──どうりであれだけため息を
その理由は間違いなく、金銭面だろう。
だからこそ、本気でこれを成そうとした時に、妹が頭を抱えるのも分かる。
──きっと、まずは父さんや母さんに相談するだろうけど……。
そう考えた時。
多分父親は寛容に協力してくれそうだし、母親は戒めようとする未来が充分に予想できる。
協力してくれるかどうか。
こればかりは、どちらに転ぶか何とも言えないだろう。
──仕方ない。少し調べてみるか。
ふっと呆れた笑みを浮かべた後。
諒は起き上がると自分の机にあるノートパソコンを起動しログインすると、ネットで色々と調べ始めた。
Two Rougeのコスプレ衣装の価格に始まり、スタジオ代や、ショルダーキーボードのレンタル代に購入代。
それらを調べていくほどに、恐ろしく費用が跳ね上がっていく。
──きっと動画だって、ただ撮ったら終わりって訳にはいかないんだろうな……。
金額の総額には一旦目を瞑る。
そこはどちらにしても問題になるのだから、後から考えるべき話でいいのだ。
ただ、そもそも計算していく中で、自分の想定する必要な物や工程に漏れがないか。それがどうしても不安になってしまい、思わずため息を漏らす。
──こういうのに詳しい友達がいれば……。
「……あ」
いた。
その道のプロが。
とはいえ。
突然の再会もあったものの、友達となったばかりの椿を相手に、こんな話をしても良いのか。
今度はその事で悩んでしまう。
──今日がライブ当日だったんだし、今は疲れてるだろうからな。休みが明けたら話だけでもしてみようかな。
一旦そのアイデアは心に留め、諒はそのまま深夜遅くまで、
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