乙女ゲーム エンド
仲仁へび(旧:離久)
01
リアリティがない。
この世界はまるでモノクロのようだった。
知ってる光景に、知ってる人物、知っているセリフに知っている言動。
まるで、よくできた劇の中に放り込まれたようだった。
だから、まともに生活なんてできるわけがない。
私は、なぜか気が付いたら別の世界にいた。
でもそこは、私がプレイした乙女ゲームの世界だったのだ。
乙女ゲーム転生というやつだろう。
はじめはワクワクした。
その世界で、私が主人公の立ち位置にいると知った時は、ドキドキもした。
恋愛ゲームの世界だったから、好きなキャラに会えると思って胸が高鳴った。
けれど、興奮は一瞬。
私の熱は冷めていった。
まるで映画。まるで劇。
いいや、それらよりもたちが悪い。
それらは見るのをやめる事ができるのだから。
でも、私は逃げる事が出来ない。
周囲のすべてを予定調和で囲まれてしまっているのだから。
映画の中の、劇の中の登場人物が、どこに逃げるというの?
私は、この気持ちの悪いゲームのシナリオが終わるまで、ひたすら息を殺してじっとしていることにした。
そして、最後のイベント。
恋愛ゲームとしての多くは、告白でしめられる。
想いが実ってめでたしめでたし。
けれど、自分の殻にこもって過ごしていた私には、そんな相手はいない。
やがて、誰とも思いを通わせることなく、原作シナリオのすべてが終わった。
ああ、これでやっと解放される。
そう思った瞬間。
世界が暗闇に包まれた。
「ねぇ、これ変わったゲームだったね。主人公の性格がずっと暗いし。マルチエンディングなのかな? 何かフラグ立てそこねた?」
「攻略サイト見てみようか。あれ、これシナリオが違う。もしかして偽物買っちゃったとか? えーやだぁ。高かったのにぃ。気味悪いし捨てちゃおっか」
「そうだね。面白くなかったし」
乙女ゲーム エンド 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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