第201話 守るべき存在
コミュニケーターをタップしようとした瞬間だった。
天空を破るように迫りくる巨大な光球、隕石のようなそれが空から墜ちてきた
そのあまりの迫力に、オレの身体は固まったように動けない。
あっという間に地上に激突、風圧と熱波にオレとミーコは吹き飛ばされる。
核爆発のようなものだろう。
放射能がないだけまだいいが、普通は死ぬ。
そんなことを考える余裕があるのが自分でも不思議だったが、保管域を開く間もなく、オレとミーコは散り散りに吹き飛ばされてしまった。
必死に木にしがみつくオレ。
ミーコを探さねば。
オレはコミュニケーターでミーコの名を叫ぶが、風が生み出す轟音で声にならない。
こいつのセンサーが使えればいいが……
コミュニケーターのミーコの反応、吹き飛ばされた先からあり、オレは風圧を利用してそこまで飛ばされる。
「ミーコっ!」
木にしがみついているミーコの手を握って抱きしめるオレ、二人同時に飛ばされる。
くそっ、この状態では“窓”を開けない……
とにかく、まずどこかに落ち着かねば。
飛ばされた拍子で、大木に背中を強く打ちつけれたオレは、あまりの激痛に声を上げた。
ミーコをかばっていたので、彼女に衝撃はなかったはず……
気絶する寸前、オレはミーコの手をとって、
「ミーコ…… 先に逃げるんだ…… オレは……」
無理やりボックスを開けようとしたが、うまく体が動かない……
「いやっ! おにいちゃんを助ける」
「ミーコ!」
オレはその時にだせるありったけの強さで言ったが、ミーコは素早くオレを抱えると凄い速さで走り始める。
追い風もあったのだろう、景色が見えないほどで、あまりの素早い動作と俊足に、オレは声も出なかった。
森を抜け、爆風の嵐から遠ざかったのを確かめると、ミーコは走る速度をおとして岩陰にかくれるように止まった。
息をきらせているが、それほど疲れている様子もない。
「ミーコ……」
オレは何と言っていいかわからなかったが、ミーコの顔をしっかりと見つめて言おうとした。
「おにいちゃん、あたしおにいちゃんに何かあったら、もう生きていけないの」
「……」
ミーコはオレの手を握って言った。
「あたし、おにいちゃんが危ないときに助ける力くらいあるよ」
オレは、今しがた見た彼女の力と俊足を全身で感じた直後だけに、もはやその言葉に抗う気持ちもなかった。
「ミーコ、オレはミーコが大事だ、だから危ない時はミーコだけでも……」
「おにいちゃんが危なくなったら意味がない! あたしは、おにいちゃんが危ないことをする方が嫌なの!」
ミーコは強くオレの手を握って言った。
その目は、鳴きながらオレの帰りを待っていたあのミーコの目だった。
身体中を激痛が走る。
オレが軽く呻いていると、ミーコが横に寝かせて光を当て始めた。
黙って彼女の施術のままに身を任せる。
この直前に何かあったよな、思い出さなくては……
そうだ、通信が入っていたんだ。
シグナルは消えていたが、4Dボードには小さく履歴が残っている。
これは…… ネクスターナル?
地震だ。
いや、他の地域に落ちた光球による地鳴りだろう。
何とも言えない地場の波が感じられた。
オレはネクスターナルに通信を試みる。
“オールドシーズ一洸…… 大丈夫だったのか?”
“……これは、どういうことなんですか”
一瞬の間があったが、抑揚のない声は一気に伝えてくる。
“高位知性種による惑星への大規模破壊が実施されている。
今現在我々も防御に回っているが、完全には防ぎきれていない。
亜空間からのエネルギー波による直接攻撃だ”
“……すぐ対策します、ご連絡ありがとうございます”
オレは大分動くようになった身体を起こすと、ミーコを抱きしめて言った。
「保管域に戻って戦闘準備に入る……
オレを、助けてほしい」
ミーコは小さく、だがしっかりとオレの肩越しに頷いた。
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