82話

 膝枕の余韻が大きすぎて未だに心臓がバクバクしております。

 なんか、花ちゃんがジトッとした目で見つめてくるんだけど、きっと何も関係ないよね!


「なぎくんも男の子だねぇ……対象が春風さんなのが納得できないけど」


「え? 男なのは当たり前だろ?」 


 後半部分はボソッと呟いていたから聞こえなかったが、前半に関しては当たり前だろ。


 すると、あからさまに花ちゃんは『はぁ……』とため息を吐いてかぶりを振った。

 やれやれみたいにするのやめてもらって良いですかねぇ。


「私、大体なぎくんのがわかってきたよ」


「性質?」


 呆れた目で見ながら花ちゃんはそう言った。

 俺が聞き返すと、舌をベーッと出してふんっ、とそっぽを向きながら


「なぎくんには教えない! ……教えてもわからなそうだし」


「え? なんだって?」


 またも後半部分が聞こえなかったから聞き返すと、イラついたように俺の肩を優しく叩いた。

 そんな何気ないスキンシップに少しドキッとしてしまった。……我ながら何というか……。そもそも女友達をどういう目線で見れば良いのかもハッキリわからないしな。

 女子として見るとどうも裏切りのような気がしてならない。そういう観点で言うと日夏と花ちゃんは少々無防備すぎだと思う。

 他の男にもそういうことしてるなら絶対勘違いされるだろうな……


 俺がそこまで思考を広げた瞬間、ふと胸にチクりと刺さるような痛みが走った。

 痛みには慣れてるはずのこの体だけど、この痛みだけは慣れる気がしない。


  

☆☆☆



「Let's プレゼント交換んんっ!!」


「テンション高っ」


 ゲームを2、3時間ほどした頃、日夏が唐突に立ち上がり、腕を高く掲げて宣言した。


「来たぁぁぁぁ!!」


「テンション高っ」


 花ちゃんもかい。

 二人とも元気なようで何より。まあ、プレゼント交換ってテンション上がるよな、ははっ。

 …………プレゼント交換は初めてだけど。

 いや、何か親睦深めようってことで、『天笠』でも組員一同で会してプレゼント交換をしようってなった時があったのさ。

 4年前くらいかなぁ……。俺も参加するってなったから、なけなし(¥5000)のお小遣いを使ってプレゼントを買ってきた。ちなみに、モデルガン。なんでそのチョイスにしたかは覚えてない。


 それで、いざプレゼント交換になったんだけど、物がね。ヤバイのよ。


 俺に当たったの何だと思う?


  

 『ドス』だぜ? 五十万くらいする。


 それを見たジジイ。何て言ったと思う?



ジジイ『おいおい。ドスは恋人同士で渡すもんだろ? 何プレゼントに入れてんだよ。アッハッハ!!!』


組員『『はははっ!!』』


俺『?????』


 それ以降、両親がぶちギレしたからプレゼント交換はなくなったけど。ツッコミ入れるとこそこじゃねぇだろって思ったわ。

 何故プレゼントにドス入れんだよ。そこだろ、普通。 


 

「なぎくん? そんな鋭利な刃物みたいな目してどうしたの?」


「どんな目だよ」


 まあ、昔のことを思い出して険しくなってたかもしれん。ただしツッコミがタイムリーすぎて返しがムズイでござる。


「さあ、お二人さん、準備良いかい!?」


 俺たちのやり取りは聞いていなかったようで、前に回り込んできた日夏が息巻く。


「はいはい、そんな急がなくたってプレゼントは逃げないぞ」


 日夏をまあまあ、と宥めると、途端に自分のテンションが恥ずかしくなったのか、顔をカーっと赤くさせた。


「もうっ、せっかく良いテンションだったのに……」


「春風さんの場合、焦って空回りしたりすることが多いんじゃない? だから、落ち着いて……


 なんだろう。花ちゃんがしっかりアドバイスしてあげてるように見えるのに悪意を感じるのだが。

 俺の予感を証明するように日夏は少し黒いオーラを出しつつ花ちゃんを睨んだ。


 そんな不穏な雰囲気が漂うなか、俺はふと二人を見て思った。


「なんか、ライバルみたいだよな」


「「え?」」


 一斉に振り返った。

 俺はその様子にだなと思って笑いが込み上げてくる。


「ははっ!! いやぁ、何のライバルかはわかんないけど、お互い高め合って目指す目的が一緒って感じがするんだよなぁ。しかも、時々息ピッタリだし」


「「どこが……!」」


「ほら」


 反論しようと思ったのか、バッ! と顔を上げて言うも、再び息の合った反応に顔を見合せ押し黙る。


「まあ、仲が良いに越したことはないけど、互いに譲れないものがあるからこそ、むきになる関係も良いんじゃね?」


 って、なんかクサイな。ってか、偉そうじゃん俺!!

 今更後悔というか、恥ずかしさというか、そういうのがふいに溢れて二人に赤くなった顔を見せないように後ろ向きになる。


 日夏と花ちゃんの二人は、目をパチクリしながら二回、三回と顔を見合せて──笑った。


「なんか、ね」

  

「ね」


「「渚くん(なぎくん)に言われると腹立つよねぇ」」


「どうして!?」 


 え? え? と慌てふためくと、二人はふふっと笑う。え、これ俺が悪いの!?

  

 笑い合う二人。どこかその姿は前よりも仲が深まったようにも見えた。


 


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


そして、次はプレゼント交換。一体誰のプレゼントが渚に当たるのでしょうねぇ……

それと、渚が選んだプレゼントとは一体……!?


次回!◯◯死す!!(ごめんなさい冗談です)


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