81話

 ステージは最初に選んだ簡単なコースだ。特に大きなギミックはないが、アイテムが多い。 

 そのため、初心者でも比較的簡単に逆転することが可能となっている。


「よしっ……この始まる瞬間、何だかドキドキするな……」


「勝つわよ……! 私が……!」


「みんなガチで怖いんだけど……」


 うん! 全員やる気マックスなようで良かった良かった!

 特に花ちゃんなんか……ほら、邪魔するやつは殺すぜ的な勝負師の目をしてやがるぜ! 穏便に頼むぞ。


 そして、いよいよレースが始まる。


 プゥープゥープゥープゥゥ!! と3.2.1の合図で─────よし! スタートは良い感じだ。

 NPC含めて12人が参加可能のこのゲームでは混線も予測できる。


 今のところ、俺が1位、花ちゃんが2位、日夏が5位と各々良いスタートを切っている。


 俺も勝つ気満々なので、容赦なく攻める。


「いくぜ! 最強のNPC相手に放ってきたドリフトぉ!」


「お、大人気ないわね……。というか、テンション高くない? なぎくん?」


「どりふとって何……?」


 三者三様のリアクションだ。日夏は論外だけど。

 というか、当たり前だ花ちゃん。ゲームをすると二重人格と呼ばれてるのだからな、ふっはっはっ!


 俺は設置型アイテムの『背中の針』をセットする。これを踏んだ者は一定時間動けなくなるのだ。

 というか、背中の針って自分のやつ毟ってね? 怖い。


 さて、誰が罠に引っ掛かるかな……ケッヘッヘ。


「ふんっ、甘いよ、なぎくん」


 花ちゃんは難なく『背中の針』を避ける。俺は心の中で小さく舌打ちをすると、隣から日夏の叫び声がした。


「あ~っ! 何これ! 動けないんだけど~!!」


「引っ掛かったのは日夏かよ……」


 アイテムの説明は散々したんだけどな……。まあ、良い続きだ。


 日夏が脱落して、9位まで下がった。レースは中盤。俺と花ちゃんは変わらず1.2位だ。  

 俺が微かに優位を保っているが、この距離差だと抜かれるな。


「やった! なぎくん! 抜くわよ!!」


 嬉しそうな声と共に、花ちゃんが猛スピードで迫ってきた。


「なっ!? あれは『針BOooo!』!?」


 一番低確率のアイテムだ。自動操作で猛スピードで走る最悪のアイテム。

 俺はあっという間に抜かされ、花ちゃんとの距離は大きく差がついた。


 さらに、まだ終わりではなかった。


「あ、私も出た」


 今まで9位だった日夏までもが『針BOooo!』を当て俺たちを追随してきた。


 そして、花ちゃん、俺、日夏で並んでしまった。


 くそ! 俺もアイテムを……!


「来い!! ……って、『背中の針』じゃん!」


 後続で来ているやつにしか効果ないから、日夏しか効かないじゃん!

 ……いや、こうなっては仕方ない。初心者には負けるわけにはいかん!!


 俺が『背中の針』をセットしようとした瞬間、ふいに俺の膝に柔らかな感触が走った。


「あ、ごめん。バランス崩れちゃった♪」


 それは、日夏の頭だった。

 てへっ、と可愛く微笑み頭に手を当てている。

 俺はその可愛さと膝枕をしているという事実に脳がフリーズし、コントローラーを落としてしまった。


 その間に花ちゃんが1位でゴールイン。そして、俺の膝に頭を起きながらちゃっかり操作していた日夏が2位でゴール。

 俺はビリケッツで終わった。


「日夏さん? なんで終わったのに避けてクレナイノ?」


 レースが終わっても依然として俺の膝に伝わる柔らかい感覚はそのままだ。

 そして、俺の問いに日夏は黙って上目遣いでじっと見つめてくる。

 な、何がしたいんだ!?


 今一日夏の意図が読めない。  

 さらに、俺たちの状況に気づいた花ちゃんが『しまった!』と言わんばかりの表情で抗議した。


「ちょっと! 何してるの!?」


 俺も聞きたい!!!


「日夏? 黙ってないでなんとか……」


「……ちゃった」


「「え?」」


 小声で呟かれた音に俺と花ちゃんが同時に疑問を口にすると、日夏は恥ずかしそうに赤い顔をして言った。


「足、っちゃった」


「絶対嘘」


 花ちゃんが秒でそう答えて、日夏の足側に回り込んだ。

 おいおい、何するつもりなんだ。


「ていっ」


「あひゃんっ」


 花ちゃんは、日夏の両足を触ると、可愛らしいような艶かしいような声が響いた。


「あ、ごめん。本当に攣ったんだ」


「そう言ってるのにぃ~!」


 日夏は自分の出した声が恥ずかしかったのか、口元を押さえて恨めしい視線で花ちゃんを見た。


 うん、俺の理性が限界を迎える前にどうにかしてくれない?


 さっきから、俺の膝の柔らかい感触が理性をガンガン削っていくんだよぉぉ!!


 日夏が身動ぎする度に、ふわっと良い匂いが漂ってくる。そのあまりに女子女子した感覚に目眩すらしてくる。

 誰か女子に慣れるための特効薬ください。……そんなもんあったら苦労しないよなぁ……。


 結局その後、五分間、膝枕は続いた。


 何とか耐えた俺を誰か褒めて!!



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


というわけで膝枕エンドでした。

正解の方もいれば、惜しい! という方もいましたね~


実は、花ちゃんの方に倒れ込んで百合ルートとか考えたんですけど、これ私の趣味じゃん、と思ったので正規ルートに致しました(笑)


ちなみにハリオカートですが、実在の人物、団体、とはまったく関係ありませんので…




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