78話
時は来たれり! いざ! くりすますぱーちーへ!!
Let's Go!! ふぉぉ!!
いや、テンション高いのは許して。女の子とクリスマスパーティーなんて、初めてだぞ? テンション上がらないわけないだろぉぉ!!
ふぅふぅ。落ち着け。こんなテンションで行ったら百パー引かれる。俺はあくまでクールなキャラ……ではないか。まあ普段通りに行こう。
待ち合わせ場所は無く、直行で日夏の家に集合だ。
事前に二人から、この日のために準備していたこともあるそうで期待が膨らむ。
現在時刻は、13時10分。待ち合わせは13時30分集合だから今家を出たら10分に着くだろう。
社会人になったら10分前行動が基本だからな! 今のうちから習慣を付けておかないと。
☆☆☆
外に出ると、真っ白な空間が視界に入ってくる。そして、芯まで凍るような寒さが出迎え思わずブルッと身震いしてしまう。
北海道の寒さというのは、単純に気温が低い、とは言えないのだ。何て言うか、纏わりつくような寒さと言えばいいのかわからないけど、これだけは言える。
とにかく寒い。
案外北海道って寒くないんじゃね? と思っている人は即座にその考えを捨てたまえ。ぜっっったい後悔するから。
ロングコート一着? Non,Non,Non。マフラー、手袋。帽子も結構必需品ではある。
札幌だから、マフラー、手袋で済んでいるが、豪雪地帯となると話はまた違う。
まあ、もう一度言うと……
とにかく寒い(圧二倍)。
「ふひぃー。寒いぃ」
泣き言を口にしながら、雪に染まった道をてくてくと歩く。
時折転びそうになることもあるが、何とか歩く。
たまに雪道で自転車を走行する強者がいることがあるのよね。あれ、頭おかしい。
雪道で自転車って北海道人なら一回は試したことがあるかもしれないけど、余程のセンスがなければ乗れない。
ズルッと滑って転んで頭打つのが関の山だ。ある意味雪道で自転車乗るやつは尊敬してる。
あ、絶対に真似したらだめだぞ。
そんなことを考えていると、日夏のマンションが視界に入った。
そして、扉の前。なんか緊張するな……。ま、まあいい。さて。
呼び鈴を鳴らすとピンポーンと聞きなれた音がした。すぐにガタガタと音が聞こえ扉が開く。
「あ、渚くん、いらっしゃい! なんか会うの久しぶりだね」
はにかみながらドアを開けてくれたのは、確かに久しぶりの日夏だった。
ぎっくり腰中はもちろん、遊びに行くことなんてできないし、俺から誘うのはちょっとハードルが高い。……ん? ヘタレだって? ……ほっとけや。
「お邪魔しまーす。花ちゃんはもういるのか?」
「うん、二人で早めに来て準備してたから」
「手伝うことあるなら、俺も呼んでくれればいいのに」
すると、日夏は少し困った顔をしてわざとらしく視線をずらした。
「んー、すぐ終わることだから大丈夫なんだ。それより、玄関で話をするのもあれだし入っちゃってよ」
「おっけー」
しっかり靴を揃えて家に入る。
この、人の家に入った時の何とも言えない感じ……あぁ、人の家なんだなってわかるような感覚がするのは何故だろうか。
一説によれば過ごした空間に微細な粒子が……って言ってたけど小難しいことはわからん。いやまぁ、読むのが面倒なだけだっただけだけど。論文とか読む気にならん。
リビングに入ると、まずその光景に目を奪われた。
「おぉ……。めっちゃ飾り付けされてるやん……!」
「結構頑張ったんだよ」
クリスマスツリーはかなりの大きさで、壁には様々なクリスマスグッズで溢れている。
相当数が飾り付けられていて、確かに大変だっだろう。
俺がリビングを見回っていると、別の部屋から花ちゃんが現れた。
「あ、なぎくん! ぎっくり腰、ちゃんと治った?」
「あぁ。以外に早く治ったな。まじでキツかったけど」
「あー、何しても痛いって言うもんね」
俺たちがぎっくり腰の話をしていると、日夏が小首を傾げて聞いた。
「ぎっくり腰って渚くんが? 二十歳以下はならないんじゃないの?」
「いや、全員全く同じ反応」
すげぇな。このぎっくり腰偏見の広範囲さが。
花ちゃんは俺のぎっくり腰の話を、何故か膝枕の部分を強調して日夏に喋った。
お、おい。そこは隠すところじゃね……? い、いや、もうきっと二人は親友なんだ……! 親友には隠し事はしないって言うもんな!!
「へぇ……。膝枕……ねぇ……」
日夏は子供が見たら泣き叫ぶほどの黒いオーラ全開であった。俺も本能的に恐怖を感じ、膝が勝手にガクガク震える。
な、なぜだ! 組の暴動に巻き込まれて百人に囲まれた時も恐怖なんて微塵も感じなかったのに……!!
てか、親友相手にそんなオーラが出せるかーい!! やっぱり、何か裏がある気がするんだけど!?
ぬぅ、疑ったらキリがない。いずれ暴くしかないか。
さて、クリスマスパーティーは無事に楽しく終わることはできるのかな。
あ、日夏が花ちゃんの首根っこ掴んで隣の部屋に連れ出した。
はは、あはは、仲良しだなぁ……。
渇いた笑みで、俺はその様子を見守った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
次回は二人視点です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます