第39話


 まず、俺は模試に向けての勉強方法を一新することに決めた。

 部活で事情を言って、欠席し、日夏の勉強を優先させる。


 これまでの日夏との勉強会で、効率のよい勉強方法や、難易度の高い問題のコツなどは教えてきた。

 すでに日夏の学力は飛躍的に上がり、このままでも充分な点数を取ることができるだろう。


 だが、日夏は充分な点数、などという曖昧な目標ではない、290点以上という明確な数字の目標を達成しなければならない。

 そのためにすべきこと。実践的な勉強だ。


 具体的には模試の傾向を理解し、過去問から抜粋した問題を解きまくるのだ。


 大問ごとに出る、範囲は決まっているのだ。

 

 数学だと


 大問1は小問集合と呼ばれる、様々な計算。大問2は二次関数……などだ。


 国語だと、評論文、物語、古文、漢文などだ。

 英語は、リスニング、リーディング、ライティング、などだろう。


 傾向を理解し、しっかりと対策すればなんの脅威にもならないのだ。


「よし、日夏。結果を発表する」


 実践的に基づき、過去問を解かせてみたのだ。

 やる気の塊である日夏の額には、目指せ290点と書かれてあるハチマキが巻かれている。


 いや、やる気があるのはわかるけどさ……ハチマキて。

 今時、受験生でもそんなことしないよ……。

 

 ま、まあやる気があるのは良いことだからな。うん。


「結果は……国語98点! 数学92点! 英語97点! 合計287点! おしい!」


「自信あったのに……過去問でこれか……」


 日夏が点数を聞いて意気消沈をしている。


 俺は落ち込んでいる日夏に、松並(松岡◯造並みのこと)で熱く話す。


「何を言ってる! 残り二週間でこの成績なんだ! あと14日もあるんだ! 日夏ならいけるぞぉぉ!」


 俺、キャラ崩壊してね? なんだかんだで松並が気に入ってしまった……。

 まあ、応援という意味だと……合ってる……よね?


「うん! 私頑張る!」


 俺の松並への不信感を知らずか、やる気を取り戻す。

 腕を捲り、ふんすっ! と擬音が付きそうな勢いだ。そして、机と向き合い、間違った問題の確認をする。


 勉強で重要なのは、間違った問題への取り組み方だ。


 ただ、あ、間違った。で答えを見て、直すだけではなんの意味にもなりやしない。

 

 なぜ、間違ったか。

 どういう系統の間違いをしたか。正しく自己分析をすることで、苦手な部類の傾向を克服することができる。


 反省という文字の通り、『自らを省みる』ことが重要だ。


 そして、俺が解き方を教えたりする。



 そして、そんなこんなで二週間が経過した。




☆☆☆



 時は来た。

 今日は運命の模試の日だ。

 教室に座っている俺が、日夏の方を見ると、案の定ガチガチに緊張していた。

 いつもにこやかな表情は、石のようにピしりと固まり、挙動が不自然だ。


 まだ開始まで時間があったので、俺は紙に文字を書き、日夏まで届くように。

 伝言ゲームのように紙を届けるよう近くの人に頼む。


 いつも、あまり人前で喋らない俺が話したことに、頼んだ人が驚いていた。

 


 俺は紙が届き、日夏がフッと表情を和らげるのを見て、安心する。


 ──これで俺も快くテストに挑めそうだ。





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 テストは嫌いです。

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