姫宮 華 享年17歳


娘は幸せ者だ。

姫宮華の母親である姫宮咲さんは涙ながらに記者に語った。


「娘のためにね、

 クラスの皆さんがこんなに心温まる寄せ書きを書いてくださったんです」


咲さんが取り出したのは

『ブス、二度と学校に来れなくなって良かった、屑野郎、地獄に堕ちますように

 自分が何をしたのかわかっているのか、地獄で詫びろ、許さない、

 お前の担任になったのは教師人生で最悪の汚点だ』

等の文章が所狭しと書かれた色紙だった。


「私もね……娘に思いが届くように……色紙の裏ですけど、

 メッセージを書いたんです」


記者が色紙の裏を見ると、

丁寧な字で『お前なんて産むんじゃなかった』と書かれていた。

咲さんの人柄が窺えるような柔らかで温かい字体である。


「大丈夫、娘さんは間違いなく地獄に堕ちますよ」


姫宮華が何をしたのかは知らないが、間違いなくそうなるだろう。

不思議とそう思えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る