稲村 知恵 消息不明

「わーい、わーい」

商店街を笑顔で走り回る稲村知恵の様子。

右手にはソフトクリームを持っている。


「そんなにはしゃぐと危ないぞ」

「アイス落としちゃうわよ」

稲村 慶彦、稲村 文枝、稲村知恵を遠巻きに注意する。


「はーい」

稲村知恵、両親からの注意を受け、走るのを止めて、両親の元へと歩いていく。


しばらく稲村家の三人が歩いている様子が映っている。


「ね、ねぇ……おとうさん、おかあさん、あれ何?」

稲村知恵、足を止めて、街灯の方を指差す。


「あれって、ああ……街灯だよ」

「夜になったら光るの、知ってるでしょ?」

「違うよ!街灯じゃなくて……あれだよ!」

稲村知恵、両親の返答に頭を振り、叫ぶ。

あくまでも街灯の方向を指差しただけで、

実際に彼女が示したいものは街灯ではないらしい。

ただし、その方向に街灯以外のものはない。


「おばけだ!おばけがいるよ!」

「おばけはお前だ」

「おばけはお前だ」

「おばけはお前だ」

「おばけはお前だ」

「おばけはお前だ」

「おばけはお前だ」

「おばけはお前だ」


稲村 慶彦、稲村 文枝、及び通行人が一斉に稲村知恵に視線を向け、呟く。

映像終了。


以降、稲村 知恵の消息は不明である。

稲村 慶彦、稲村 文枝、及びビデオカメラに映っていた人間は全員死亡している。


ビデオカメラの撮影者は不明。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る