第5話


「なんだと?」



「人間を使った投薬実験。その最終段階が成功したからこうして私は覚えていない」



「君にそれをさせたのは誰だ?」



「両親…あるいは私自身でしょうね」



「…どうしてそんなことを」



「ディアモンド様にもありませんか?忘れたかったこと。私はそれらすべてを忘れなければいけなかった。だって私は彼らの道具だったのだから」

それを聞いたディアモンドが聞いてはいけなかったことを聞いてしまったという顔をした




それにつられて私もしまったという顔をして話を逸らす




「あぁでも!人を助ける仕事は好きでしたよ。誇りに思っています」



「君の仕事とはいったい…」


「ケガや病気を治す医者でした」



「その薬を作ったのは君か?」


「えぇ?私ですよ。それが?」


「君以外でそれを使用する目的はなんだ」




「さぁ、私も知りません。もしかしたらそれも消されているかもしれませんね」




「…ただ、私以外でこの薬を使用するのを抵抗していた覚えはあります。何度も何度も…その度に薬を投与されたこともね」



「何故それを知っている?覚えていないんだろう?」



「私が覚えていなくても、時間が飛んでいるんです。それだけで薬を投与されたとわかる…だから何回目かは覚えていませんが反対をするのを止めました」


「そうか」




「…思い出してほしいですか?」

彼女が本気を出せばそれは可能だろう…だがさっきのあれを見てしまった以上強引に記憶を思い出せばどうなってしまうかは分からない


「必ずしもその記憶を思い出さなければいけないわけではない。」



「ですが…」



「…ならばこれは君への命令だ。二度と記憶消去の薬を自分に使うな」





「そうですか、分かりました」




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