第6話 2人の会話と雷獣

 2人の会話と雷獣




 5日ほど修行の日々を過ごした後、夢の中の私は、ホログラムを各地に配置する任務に当た。


「つまらないんだが。でも、二人の会話を聞いているのは楽しいけど」


 思わず独り言を呟く。奈波と光の会話は瑠亜の気分ではないけど、聞いているだけで楽しいなって思えるね。二人の会話は、聞いているのは楽しいんだけど、入る気になれない。二人が話しているのがちょうどいい。そう思える会話だった。そんな会話を聞きつつ、私は大きな歩幅を武器に、ホログラム装置を置いて行く。かなりの苦行だね! なんでこんな事しなくちゃいけないの! けどまあやるけど。


「ああ、そろそろ起きないと」


 起きる時間かな? そろそろ起きて、向こうでは特訓だ。なんかしんどくない最近、私元々引きこもりだよ。そんな人間にこの仕打ちは非道だよ? いや、他の人でも非道かも。そんな事を考えて、起きて、部屋を出る。すると今日も皆、先に座っていて、


「じゃあ、今日から進行を再開しよっか」


 と珠樹がいきなり切り出した。どういう心境の変化なんだろう。


「いいけど、あれから強くなった気はしないよ」


「いや大丈夫だよ。君たちはかなり強くなった。と言うより、対代美戦闘に特化したって言ってもいいね」


「なにその局地的な戦闘能力は。でも、私たちが戦いに行っても、勝てるって思われたって事だよね」


 珠樹は頬をポリポリと掻きながら、


「いやぁーそれはそうなんだけど、それよりも重要な事が有るんだ。そろそろ、期限がやばいんだ」


「期限?」


「私の予想よりも、進行が早いんだ」


「成程、それで、侵攻を止めるために、代美様を福留の魔の手から救うのですね」


「そうだね、救って助けてもらわないと」


 多分、代美を救った後に、里に迫ってくるはずの代美コピーから守ってもらうって事かな? それなら、


「分かった。でも、それなら皆にも応援を頼んだ方がいいんじゃないかな?」


「うーん、少し考えておくよ」


「なんか話がすれ違っている気がするでござる……」


 千代がなんか言ったけど気にしない方向で行こう、私はすれ違っている気はしなかったし。


 外に出て、平野を進んでいく。途中で、


 バチバチ


 と音を立てて、空から雷が落ちた。


「いきなり雷落ちて来たよ。雨降ってないのに」


「あーそれ多分、雷獣だよ」


 その言葉に呼応するかのように雷はどんどん姿を変えて、オオカミみたいな獣へと纏まっていった。こわ! 雷だけでも怖いのに、獣って、獣って! 多分雷撃飛ばしてくるよ! ああゆう姿の奴って!


「ど、どうする?」


「戦おっか。今の所、代美コピーの介入は無さ……」


 瞬間に、目の前に壁ができる。けどそれは小さくて、珠樹の前のみを遮った。その壁に矢が当たる。


「来ちゃった」


「来ちゃったね。ありがとう、乃理」


「いいえ、ですが、かなり遠いですね」


 豆粒が飛んでいるように見える。それが恐らく、代美だね。この雷獣を掩護するつもりみたい矢をこちらに向かって攻撃している。と言うか掩護ですらないかも。雷獣だから突き抜けてきてるけど、あいつこっちを雷獣含めて倒すつもりかも!


「拙者があのコピーを倒すでござる、主らであの雷獣を倒してくだされ」


「え、あ、わ、分かった」


 コピーの方を狙い撃ちしたほうが気は楽かなと言う言葉を飲み込んで、恐らく一番賢い選択をしたつもりだけど。


「じゃあ行くよ! 乃理は防衛体制、みんなを守るために動いて。私と瑠亜とアミは雷獣を倒すために、金属性の攻撃で戦うよ」


「金属性? それだとこっちが痺れちゃうよ」


「遠距離攻撃なら大丈夫だよ」


「あ、はい」


「あとは土や水に閉じ込めてもいいんだけど」


「そんなので簡単に倒せるの?」


「まあ、放電させるだけだけどね。そしたら普通に倒せるか、姿が保てなくなるはずだから」


「へー、そういう手があったのけー」


 瑠亜が感心している。私も感心する。そっか、水に電気を移動させる方法、土で電気を分散させる方法、鉄などで避雷針のように電気を吸う方法、この短時間によく考えたなー。多分戦闘分析が得意なんだろうね。


「じゃあ、私が水で封じ込めるよ」


「じゃあその電気を逃がせるよう、鉄杭をつくるべぇ」


「え、瑠亜ちゃんは金属性の魔術使えるんだ。ならお願い」


「りょうかいだべー」


 私は大量の水をイメージする。あの雷獣を覆い隠せるほどの、けど敵はそんな隙を見逃すはずもなく、矢と雷撃が飛んできた。


「守るよ!」


 珠樹が何やら大きな岩を召喚して、目の前に飛び込んでくる。そして、すべてを防いだ。


「準備はできそうかい?」


「まだ! けど頑張る」


 まだ小さい、人を包む程度の大きさ。もっと大きく、もっと多く、もっと生成する! 水は大量に出来上がった。後はこれを操作して、って、やっぱり逃げるよね。右に左と逃げまわる。その間にも、雷撃は飛んできて、そのたびに珠樹が防御してくれている。


「準備出来ました。これで、あの雷獣を抑え込みます」


 雷獣が前後左右から箱のように壁に阻まれて、身動きが取れなくなる。よし、これなら!


「ありがとう、乃理! これで倒せる!」


 雷獣に水を箱の上からぶつける。水を纏わせられた雷獣は溺れて、いや、電気が霧散して、消え去った。よし! 千代の方は?


『御免、倒せそうにないでござる。コピー代美に囲まれた!』


『え、今すぐ助けに行くよ!』


 私は助けに向かおうと、森の方に体を向けると、そこに動くなと言うかのように、矢が飛んできて、地面に刺さる。それでもいかなくちゃ、千代がやられちゃう!


「私に任せて! アミと瑠亜でここからあの敵を狙い撃ちして! その隙に私と乃理で救出してくるよ」


 遠距離攻撃慣れてないけど、でも、やるしかない! 乃理にマシンガンで狙ってもらってもいい気がするけど、乃理に救出に行ってもらった方が千代は生き残れそうだし、それに、珠樹の方が戦闘は慣れているはずだから。


「お願いするよ、瑠亜、私が砲弾と砲身を準備するから、撃ちだしお願い」


「わ、分かっただ」


 氷で固定砲台を作成、まあ形だけだけど。そこに二人で入り込んで、氷の中に鉄の玉を入れたの弾を作成。それを瑠亜が撃ちだす!


「さあ、行って!」


 二人は森に向かう。それを見ずに砲弾の起動を見続けて、少しおかしい事に気づいた。


「どんだけ力強いの? 瑠亜」


「お、おらの能力は怪力だべ。後天的に摩擦の軽減も手に入れているけど、主な能力は怪力なんだべ」


「成程。だから、あんなに高速で飛んでいくんだね」


 コピー代美が回避行動をとろうとしたけど、氷が融けて、中に入っている鉄の玉が大量に飛び出る。それらは散弾のように飛び出して、コピーに当たり、空に居たコピーは消え去った。けどすぐに、森から一人上がってきて、矢を放ってきた。


「何度やっても同じだよ!」


「んだ!」


 同じ手段で攻撃したら、普通に回避された。あいつらコピー同士で、情報共有している? と言う事は、


「数撃てば当たるよ」


「んだんだ!」

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