4章

第1話 迷いの森越え

 迷いの森越え




 珠樹が、


「どうにかして、代美ちゃんを探したいな」


 と、とても心配そうな声を出したんだ。それはとても不安そうで、今にも泣きだしそうな声。今はこの一昨日戦った、場所を少し超えて、珠樹の言う方向に行っている。ただ手掛かりは少ない。分かっているのはくる方向だけ、そっちも森が広がっている。その奥には山も見えるね。


「どこを探すべきなんだろうね」


 私、アミは思わず言ってしまう。


「とりあえず、昨日の偽物がやってきた方へと向かって行くべきかな。昨日のうちに、佐久間君たちに聴いておいたんだ」


「ありがとうございます。珠樹様」


「では、拙者は先に行って、安全確認をするでござる」


 乃理はお礼を言って、千代は、さっさと警戒して森に入る。そんな急がなくていいのに。一緒に行ってほしいかな。


「じゃあ私たちも行こうか」


「ま、待ってくんろ!」


 後ろからの声、瑠亜が来た? 皆振り返る。そこには装備を整えている。けど戦う意志はなさそうな瑠亜が居た。


「どうしたんだい?」


「お、おらも連れていってくんろ!」


「うん、いいよ」


 即答したった。


「い、いいんか?」


「うん、仲間が多い方がいいと思うよ。案内も頼めるし」


「この森なら案内出来るだあ」


「じゃあお願いだよ」


「んだ。この森は迷いの森って言われてて、迷うこと必至だべ。だが、回避方法はいくつかあるんだ」


「必至になのに?」


 珠樹が思わずツッコむ。まあ気になったけど、なったけど!


「そうだべ、回避方法を知らなければ必至って事だべ。まずは、正攻法。道順を覚える。北を正面に、赤い葉の木を通り過ぎたら右に、少し行くと、次は黄色い葉っぱの木があるから次もそれを右だべ。次は人面のような模様の木があるだ。それをまた右。その次に虹色の木があるからそれも右だべ。そして、葉っぱの形が……」


「うん、覚えれないから先頭は瑠亜で」


「いきなり瑠亜呼びだか。なんか仲良くなれそうでいいなあ。それで行ってもいいんだが。もう一つの方が楽でな、上を飛んでいくんだ」


「……それを早く言って欲しかったでござる」


「あ、千代お帰り」


「ただいまでござる。拙者、おかげで迷子になって帰ってきたでござる」


「「「「ああー」」」」


 すごいボロボロになっているね。何があったんだろう?


「簡単に言うと、道に迷っているうちに、上から矢で狙われまくったでござる」


「ああ、アレかあ」


 たしかに目前に弓を持った巫女の集団が飛んできている。よおーく見ると、全員同じような顔をしている気がする。遠くてわからないけど。


「恐らく、代美ちゃんのコピーだね」


「クローンって事ですかね」


 乃理の言う通り私もクローンの方が適切かなぁっと思う。


「うーん、クローンならあんな消え方しないと思うんだよね。だから恐らくコピー、複製だと思うよ」


「な、成程。たしかに、クローンなら肉体が残るはずだもんね」


「たしかに」


「っと向こうから射てきそうだね」


 コピー代美が弓に矢を番えているみたい。なら、


「戦闘用意! 乃理が壁を作るから、その隙に、皆準備」


「え、わたくしですか! できますけど」


「あ、駄目だよ! 壁はダメだよ。そして、あの矢も当たらないようにして!」


「ど、どうして?」


「いいから、回避だよ! ブロックするために、一瞬の壁はありだけど!」


 そう言いつつ、珠樹は、その場で盾を召喚して、防衛の体制にはいったみたい。


「最悪、逃げきれないなら私の後ろに入るんだ」


「うん」


「けど、次元超越して射て来るから気を付けて」


「どういう事!?」


「もっと簡単に言うと、どこに居ても狙ってくるよ!」


「はあ!?」


 珠樹は盾を二つ召喚して、防衛を強化している。


「だから、みんな散開!」


「うん」


「分かりました」


 3人で回避するために、私はコナン(大きな犬)を召喚して、飛び乗り、オハン(スライム)を召喚して防衛のために周りに取り付かせ、乃理は壁をすぐ出せるように、そして、背後にも気をつけれるために、珠樹の後ろに入った。そして珠樹はその様子を見て、正面だけを守れるように、盾を構える。瑠亜は空に逃げた。しかし、


「先に仕留めてしまえばいいでござる」


 千代が木の上から、苦無を投げて命中、5人中3人が姿を消す。しかし二人は、残って、矢を放った。一筋の矢だったはず。けどそれは数多の矢の道へとなる。


「何あのチート!」


「まだまだ、あんなもんじゃないよ!」


「何威張っているんですか! 珠樹様」


「まあ、親友だからね」


 コナンは走り出して、着矢予測地より外れたところへと向かってくれたよ。珠樹たちは盾を構えて、踏ん張れる体制をとっているね。かなりきついよ! でも、コナンがうまく避けてくれているよ。その隙に千代が苦無で撃ち落した。


「ふう、なんとかなったね」


「やっぱり、この森の向こう側から来てたべ」


「そうだね、やっぱりあの向こうに敵の地があると見て間違いないね」


 珠樹は意気込んで言う。この先に手掛かりがある。そう確信できただけでもみっけものだろう。


「なら、飛んでいくべ。飛べる人は誰だべ?」


「私は飛べるよ」


「私は飛べません、ただ、空中にブロックを出せますよ」


「拙者は、飛行は可能でござるが、木の上を通って行った方が早く動けるでござる」


「じゃあ飛ぶべ」


 飛行魔術を使って、5人で森を超える。乃理はブロックを生成しつつそれを足場にして、それに続いて、千代もそのブロックを乗り継いでいく。二人とも落ちないのが凄いね。


「よし、ついたべ」


 時計を見ると、もう夕方。まあ日は落ちないんだけど。さあどうしようかな?


「そろそろ、キャンプしたいよね。どこか洞窟を探さないとね」


 丁度よさそうな洞窟があった。けどなんで洞窟?


「何故洞窟なんですか? 珠樹様、近くにテントを張れば……」


「いや、敵拠点が近いからね。隠れつつ休まないと」


「! 成程。そうですね」


 そっか、敵地の近くかもだもん、そりゃ隠れていないとだめだね。じゃあ、洞窟の中にテント立ててっと。


「よし、みんな入って。ご飯食べて寝るよ」


「うん」


 他愛ない話をして、ご飯を食べて、風呂に入って寝た。

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