第8話 過去の話と筋肉痛
過去の話と筋肉痛
んん? 目が覚めた……。のかな? そうだね、今私ベットの上だもん。あの声だけの人酷いよ。時間ギリギリまで腕の伸ばす練習しかさせてくれないんだもん。
「あ、アミ、起きたんだ。もうご飯できているよ」
「はーい」
あ、珠樹が呼んでいる、起きないと。あ、あれ、足が思うように動かない。てか、痛い。でも少し頑張ったらうご……。
「イタイイタイイタイ!」
「どういたしましたか! アミ様」
ああ、乃理が来てくれたよかったよ!
「あ、足が痛いんだ、上がらないんだ」
「少し見せてください……デバイスくんどう?」
『肉体に異常なし。筋肉痛です』
「なに? もしかして不治の病! ああ、私死ぬんだー。ああー」
「一日休めば治ります! ですが、まあ、普通の湿布でも貼っておきましょう」
そう言うと、乃理は、何もないはずの、空に手を突っ込み、そこから、湿布を取り出して、私に貼ってくれた。ああ、ヒンヤリしてるよー。
「気持ちいいよ! ありがとう。で、乃理、今どこから出したんだい?」
「私めは、亜空と呼んでいる場所から取り出しました。時間の流れがないので保存に最適なのです」
「私もそれ使いたいなー」
「それでは、やり方をお教えします。簡単ですよ。道具入れ開けと願うだけです」
「え、それで開くの?」
とりあえず、道具入れ開け! って思っても何にも開くはず……。なんか目の前に時空の裂け目っぽいのがあるよ。
「出来ましたか? これは自身でしか開けませんし、取り出せません。ですから盗まれる心配はありませんよ」
「ほへー。こんな便利な物あったんだ」
ん? 廊下がドタドタ五月蠅いなぁ。ってこっち来たよ!
「大丈夫かな? アミちゃん」
「アミ殿! 大丈夫でござるか!」
あ、珠樹も、千代来てくれたんだ、なんか嬉しいね
「うん、大丈夫だよ。で二人とも、そんなに焦ってどうしたんだい?」
「いや、さっき痛い! って喚いていたから、料理を終わらせて、来たんだけど、千代ちゃんが、サラマンダーの尻尾とか、ユニコーンの糞とか持ってたから……」
「いらないよ! そんなもの!」
「そうなのかい? じゃあ貰っとくね」
「ああ、拙者の苦労がー!」
「へ?」
珠樹壊れた? いやサラマンダーの尻尾は価値ありそうだけど、ユニコーンの糞なんて。
「ユニコーンの糞は、いい触媒になるんだ。それはそうと、おそらくだけど、アミちゃんは筋肉痛だよね。なら今日は、ここで休憩して、話をしようか。これまでの事とか」
「いいですよ。ですがまずは朝ごはんです」
「そうでござるな」
そして私は、千代に抱えられて、食卓に着いた。足は痛いけど、まあ食べれなくはないし。
「で、言い出しっぺの珠樹殿からお話しいただけるのでござろうな」
「うん、もちろんだよ。まず私が、魔術を知ったのは、12歳の頃だよ。あの時は親が事故で死んじゃって、お兄ちゃんと二人きりになっちゃったんだ。その時に出会ったのが、今ならわかる。あれは闇の精霊だった。ルシフィーユって名乗ったけ? そいつと両親を生き返らせるためにって、頑張って、世界の皆を助けてくれていた天使を撃破していったんだ。もちろん私はそれを正義と信じてね。騙されていたんだ。で、その時に立ちはだかってくれたのが、成水 詩織。修行屋の詩織ちゃんだよ。何度も戦って、殺しかけたり、殺されかけたりして、最後、闇の精霊は、パンドラの箱と呼ばれる、闇の精霊が開けたかった物、悪魔が封印されている物、最後に希望が残る物を開けたんだ。もちろん、悪いのは私だよ、天使の持っていた鍵を集めたのは私だし。けど、そんな私のために詩織ちゃんは戦ってくれて、最後には認めてくれたんだ。でもこう言葉にしてみると、私が悪魔を出したんだよね。だから君たちからすると、憎悪するべき対象だし、嫌悪すべき敵だし、怨むべき仇なんだろうね」
何も言えなかった。あとの二人が許すか分からないからっていうのと、私は別にいいやって思ってしまったから。けど、ここで怨まないよって言っても、二人がどういうかそういう恐怖もあった。けど一番は珠樹が断罪してほしそうだったから、というのもあったんだ。申し訳なさそうな顔で。
「じゃあ次は私の話を聞いて。と言っても、話せることなんて限られているけど。私は引きこもりだから、外には出たこと覚えている限りではほぼ無いんだけど、出来ればゲームの話したいんだけど、残念ながら、一回外に出たときの話があるんだ。7歳の時の事なんだけど、すでに引きこもっていた私は、妹に嫌われていたんだ。まあ、しょうがないよね。で、その日は当たりが強くて、喧嘩になったんだよ。たしかその後で分かったんだけど、スクールで私が引きこもっていることで、口論になったそうなんだ。まあそれで、私と妹の部屋は一緒だったから、妹が、家から出て行ってしまったんだ。そしてその喧嘩が起きたのが、夜寝る前の時間だったから、それにこっそりと出て行ったから、親は気づかなかったんだよ。1時間たって戻ってこないことに疑問に思った私は、家の外に探しに出ようとして、気を失ったんだ。そして、次気が付いたら、ベットの上で、お父さんとお母さんが心配そうに見つめていたんだ。でもそこに、妹、ネットの姿は無かったよ。ネットは? って聞いても、親は分からない様子だったし、私の記憶違いかなとも思ったんだけど、でも何かおかしい気がして、今話してみたんだ。どうしても妹がいた気がして」
「何それ、怖い系は無理だって! いや、私幽霊とか見えるけど、そういうのはダメだって!」
「え、両親共々妹のことを忘れていたでござるか、何故でござるか?」
「分かりませんが、ネット様が魔術に近づいたのでしょう。そして、魔術を手に入れ、記憶を消した。まあ、魔術自体はたしか、あれ、アミ様の出身て何処でしたっけ?」
「うん? 最良世界だよ」
「ならば、ありふれているるはずなので、問題なく知ることはできるでしょう。まあ、教えてくれる大人がいればですが。それでも、親がその魔術にかかるのは納得できませんね」
「それはそうだね。そういう世界なら親も魔術使えるはずだもんね。可能性としては、両親を上回る魔力の持ち主だったか、技術力があったか、または化学か。というところだね。でもまあ今悩んでも仕方ないかな」
皆悩んでいるみたいだったけど、珠樹の声で、考えることをあきらめたみたい。
「まあ、気になるところではありますが、私めの話に聞いてください。私めと木下様、徐様は同じ施設の違う場所で育ったのです。そこでは研究がひたすら行われていました。人道的なものばかりでしたよ。ですが、私は悪魔に憑かれていた。それの発覚によって、私は皐文様に此方に連れてこられたのです。その研究の日々に、木下様、徐様の事は存じ上げておりましたので、こちらに来た時は少し安心しました」
「え、それって、紀光研究所の事?」
「ええ、その通りでございます。やはり知っておりますか」
「うん、皐文ちゃんから聞いたんだけどね」
「では拙者の話でござるな。拙者は隠れ里の出身で、一族は、悪魔の力を取り込むために、拙者を生んだとの事でござった。しかし、拙者が暴走するようになって、どうしようもなくなったそうでござる。そこで、皐文殿の耳に入り、回収されたのでござる」
「回収って物じゃないんだから、そんな言い方しなくても」
「いや、当時の拙者は物でござった。次世代の兵器と言ったところでござる。こちらの世界に来て得をした、自由を得た特殊な事例でござる」
「それなら私も特殊な事例だね。こっちに来て久しぶりに家から出たっていう」
シーンとなったよ。あれ、笑い取れる予測だったのに……。
「あの、その自虐ネタは笑っていいか分からないから、やめよう?」
「はい」
しかも諭された。なんでだろう。でもこんな感じで、いろんな話をしたんだ。珠樹が戦った敵の事、乃理の研究したいろんな話、千代の頑張った修行や暗殺の話。どれも興味深かったし、とても楽しかった。私は話せることなんてなかったけど、皆の話を聞いているだけで、自分の事のように思えてきたんだ。そして夜になって、また皆と夕食を取りに行くと、
「おめえなにもんぞ!」
という声とともに、苦無が飛んできた。いや、苦無危ないよ。てか、
「あなたこそ誰!」
「おらは、悪魔憑きの奥羽 瑠亜ってもんだ。でおめえは何だ? おめえを見ているとゾワゾワするんじゃい」
うわ、また苦無! 声は聞こえるけど姿は無い。それでいて、苦無はさっきから、当たるか当たらないかを攻めてくる……。うんかなり怖い状況だね!
「私は怪しいもんじゃないよ。ただの悪魔憑きの将軍だよ」
また苦無! 今度は、当たるところだったよ!
「おらたちを殺しに来るって、予言に出ていた、悪魔将軍! ホンにきおったか! おらが討ち取ったる!」
「そんなことしないよ。というかさっきから姿も見せないで攻撃してきて! 何なんだよ!」
とりあえず逃げよう! そう思って、木々の間を走る。あ、横っ腹痛い! 筋肉痛だったのも忘れていたよ! 疲れた! もう走れない! ヤダ、木の陰に隠れる!
「なぜ攻撃してこねぇんだ! どういうつもりだっぺ」
「い、いや、こ、こう、攻撃、すうはあ、すうはあ。する意味が、ゲホゲホ! ない、かなって!」
「どういう事だっぺ!」
「だって、こ、こっち、は、殺す、つもり、ないもん」
「そんなはずない! あのもんたちが話していたのが嘘のはずないんだっぺ」
やっと呼吸が整ってきたよ。
「まず、誰から聞いたのさ! 私が君たちを殺すなんて!」
「そ、それは、同じ集落の者に聞いただ」
「ん、おめえなにもんだ? ってわぁあああ」
え、何事? なんか悲鳴が響き渡ったけど、
「あ、アミ殿、この不届き者は捕まえたでござる。では、テントでこの者の話を聞くでござる」
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