第10話 鬼vs悪魔憑き

鬼vs悪魔憑き

 

 

 町をマンマルちゃんを飛ばしたり、倒したりしながら進んでいると、昔に活躍したであろう軍艦が見えてきた。


 「あの船かい?」

 

 「うん、そうだよ。あの船にさえ乗れれば僕は戦える」


 「待って! この音、悪魔が来る!」


 真井の声に皆が止まった。確かに何かが聞こえる。まるで刃物が、風を切るような音がこっちに向かって! 振り返るとそこには、大きい鎌が目前まで迫っていた。マズイ、まったく防御が間に合わない!

 

 「拡大コピー! 右手!」


 その声とともに、目の前に、巨大な右手が現れた。現れたのとぶつかるのが同時。手の中で鎌は動きを止めた。


 「なにこの大きい右手」

 

 「私の右手のコピーよ。私の能力はコビー。私は、自分のどの部分でもコピーできるの」


 「ありがとう、でもこれが飛んできたって事は、投げた人が近くに」


 大きい右手が引き裂かれる。そしてそこに現れたのは、悪魔のような羽をはやした、女の人だった。


 「あれが悪魔? 私より悪魔みたいな姿になっているけど」


 「あ、ありえないよ。あの子見た感じ16歳ぐらいだけど、確か、悪魔憑きになるのは、12歳以下のはず。だって、あの子が死んだのが12年前だもの、その時に悪魔憑きは生まれるようになったはずなんだ!」


 皐文がかなり驚いている。そんなに驚くことがあるのかな? そんな会話を無視して、悪魔は、鎌を振り上げて突っ込んでくる、かなり速いよ! 防御が間に合わない。だから私は前に出て、鎌の刃に当たらないように、柄を掴んだ。へ、なんで私こんなことできているの?


 「やっぱり鬼の体はすごいね。あの動きに対応できるんだもん、でも相手が空を飛んでいるのが厄介だね」


あ、何とか皐文が落ち着いてくれたみたいだね。


 「なら私も飛ぶまでだよ!」


 しかしいくら背中に力を入れて、翼をイメージしても、翼は授けられなかった。

 

 「なんで?」


 「そりゃ、元々翼の生えていない鬼に翼を生やす、いや巨大化させるなんて無理なんだよ」


 「なるほど」


 やっとの思いで、相手は、鎌を私の手から引き剥がし、空に上がる。どうすれば、


 「皐文。僕を船のところに連れて行って。そしたら、あいつを空から落とせるから」


 「何か策があるんだね。わかったよ。じゃあアミ、真井、君たちに此処は任せるよ」


 「うん」


 「え」


 私は悪魔に皐文たちを追いかけさせないように、立ちはだかる。しかし、悪魔は追いかける意思はないようで、真正面からこちらに突っ込んでくる。私はこぶしを握り、腕に力を入れて思いっきりカウンターを入れる。悪魔は鎌で防御することもなく突撃して鎌を振り下ろす。間一髪で拳が届き、


 「グラァアアアアア」


 飛んだ。だけど、上空で体勢を立て直し、またこちらに飛んでくる。


 「アミだっけ? 私たち囲まれているわよ」


 確かに周りにマンマルちゃんがたくさん集まっている。


 「任せたよ」


 「はあ! ま、まあわかったわ。やってみるわよ。奥義、人海戦術!」


 真井が増えていく。増えて増えて、ふ、え、て?


 「増えすぎで怖いよ!」


 真井で埋め尽くされた。私と悪魔の阻害にならないようにだけ気を使ってくれているみたいで、私の動ける範囲はある。


 「このコピーたちは攻撃を受けると、消えてしまうけど、時間稼ぎにはなるでしょう。後は、あいつがここを突破しないようにするだけよ。私じゃあいつを抑えられないから、任せたわ」


 「わかったよ。悪魔はまたこっちに突進しかけるみたいだしね」


 その瞬間、後ろから銃声のような、それより大きい音が大量に聞こえ出した。それと同時に、空を飛んでいた人々や、戦っている悪魔は怯えるように地面に降りた。後ろを見ると、二隻の駆逐艦から大量の弾が天に向かって飛んでいくのが見える。


 「これがあの皐月の策かな? こりゃ凄いね。って、あいつを相手しないと!」


 悪魔は、こちらいや、私の後ろにある船を睨む。そして、そちらに向かって一躍。私はそれを止めようと、立ちはだかるが、無視された。


 「拳が追い付かないなんて」


 慌てて地面を蹴り、地面が抉れる音を聞きつつも、追いかける。すぐに追いついた、このまま拳で、殴りつけようと、


 「ヒヒッ」


 羽を広げ地面を蹴り跳躍で私の拳を避けた。どうなってるんだよこれじゃあ、皐文たちに顔向けできない! 何か手段は何か!


 「そうだ!」


 私は体のサイズを操れるのを思い出した。腕と手の大きさを大きく大きく! そして、叩く。


 「グギャア」


 地面に叩きつけた。しかしまだ藻掻いている様だ。


 「渚……、奈美ちゃん……、私は……ここまで……ですわ」


 悪魔が普通に喋っている。もしかして、さっきまでのが、憑りつかれていた状態で、今は正気? ならば!


 「貴女正気に戻ったのかな? なら話を聞いて。私は悪魔の将軍、アミ・ホーネット。貴女を違う世界で保護しようと思うんだけど、どう?」


 「……いや、ですわ。私には、やるべきことが!」


 「皆そういうと思うよ。けどさ」


 「私には、私には! 追いかけなくてはならない人がいるのですわ」


 血を吐いてまでもそうしゃべり続ける悪魔。でも、私にもやりたいことはあった。でもあの世界に放り込まれたんだ。なら、この人もそうしないといけない。私は心をも鬼にして、口を開く。


 「いいですわよ。貴女に暴走の兆しはもう見えませんし、それに、わたくしはあなたが気に入りましたわ。だから、貴女。この場の事件を解決し次第、その人を追いかけなさいな」


 なんか勝手に口が動いている。どうして? 悪魔の声が聞こえないから安心していたのに、なんで!


 「あ、ありがとうございます」


 『これでこの子は暴走しませんわ。体の持ち主の方。どうかこの子を助けてあげてくださいまし、もし、この時点で、あっちの世界に送ろうものなら、この体の主導権は私が奪いますわ』


 脳で誰かが語り掛けてくる。

 

 『貴女誰なんだよ! 私の中から出て行ってよ』


 『わたくしは六角小麦ですわ。悪魔に憑りつかれて死んだ。貴女の前の将軍ですわ。まあ出ていくのは、無理ですわね。だって、貴女の魂と私の魂融合してしまっていますもの。まあ、魂を半分にすれば意識の分離ぐらいはできますわね。ですが、記憶や、感覚、気持ちなどは混ざったままになりますわ』


 『なんでそんな事に!』


 『悪魔のせいですわね』


 『悪魔厄介すぎだよ』


 『そうですわね。激しく同意しますわ』


 何か不思議なものを見る目で、真井が見てくる。


 「ごめん考え事してたよ」


 「いきなり過ぎないかしら? まあいいわ。じゃあこの子はどうするの? まさかさっき言ったように無罪放免にするのかしら?」


 「え~っと、私に任せてくれない?」


 ジーっとこちらを睨まれたけど、


 「いいわよ。この戦いはあんたが功労者なんだから。それはそうと、皐文たちを追うべきかしら?」


 と許された。


 「そうだね。私は皐文がいないと、こちらの世界に来れないからね、だから皐文を守らないと! 君も来るかい? え~っと悪魔憑きの……」


 「杉谷 真美ですわ。もちろん行きますわよ。この恩を返したいしそれに、私に無理やり武器を渡してきたゴトにも、お礼をしませんとね」


 「あの鎌、ゴトって人にもらったんだ。あの鎌、神秘の力を感じたけど、なんて武器なのかな?」


 「私は存じ上げていませんわ。私に投げつけて、キャッチした所で、器工装備と言われて、装備させられたのですわ。その後に暴走しまして、あなた方に助けられたわけですわ。でも名前だけはわかりますわ。というか脳裏に焼き付いて離れません。名はアダマスの鎌ですわ」


 「そうなんだ。なるほどアダマスの鎌。っとじゃあ出発しようか」


 「ええ」

 

 「そうですわね」

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