第7話 混濁した意識の中

混濁した意識の中




後悔の念が私を蝕む。なんであの時、私は自分の生まれ育った町を襲ったのだろう? なんであの時、友達を襲ったのだろう。悪魔のせいにしてもいいけど、それでも、私の弱さのせいだと思う。あの優しい友達が泣いている。私のせいで、悪魔化が進んでいった友達、私のせいで意識を乗っ取られかけていた友達。そんなことになったのに、私の死で泣いている。もう私はここまででいいですわ。そう思ってしまうほどに、嬉しかった。けど、


「お前はそれでいいのか?」


悪魔がささやく。


「この先、もっとお前を頼りにしてくれるかもしれないぜ。もっと好きになってくれるかもしれないぜ? もっと命を張るべき時が来るかもしれないぜ!」


そうだ! 私はまだ珠樹を助けたい、私はまだ珠樹の力になれていない。だから、だから! ってなんで、私は珠樹の力になりたいのかしら? それに、この記憶は? どうなっているの? そうかコレは夢なんだ。噂に聞く予知夢かな? とりあえず目を覚まさないと!




目覚め




「う~ん、薬盛り過ぎたかな? ねえ起きて、アミちゃん」


もう少し寝ていたい。そういう思ったけど、さっき起きないとって思ったところだったんだ。ゆっくりと体を起こし大あくび。


「……よかった、目を覚ましたか。珠樹、君はもう少し薬の量を考えて吸わせるように。この量は、生死の境を彷徨っていたぞ」


「ごめんね。アミちゃん! 私がちゃんと説明書を読んでないばかりに」


「いや、こんな使い方、説明書には書いてないでしょ。って、なんで私薬で眠らされたの!」


私は激怒した。こんな扱い耐えられぬと。


「ごめんごめん。アミちゃんに寝てもらってないと、話ができない相手がいたからね」


まだ頭がはっきりしない。え、私が寝ていると話せる人? 誰だろう? 首をかしげていると、


「……君に憑りついている、悪魔だ。あいつに、魂の分裂や保存方法を聞いたのだが、理解はできるし、再現も可能だと解ったのだが、使用目的には使えないことが判ってな」


「じゃあ、私は寝かされ損じゃない?」


「ごめんね! ついでに生死の境の近くまで薬盛っちゃって」


「ごめんねじゃあすまないよ!」


「何かお詫びするからさ」


あ、そう言われるとちょっと困る。何か欲しものとか、やって欲しい事あったかな? うーん。あ、そうだ!


「乱戦魔術部隊のメインサーバーを作った人を紹介してよ! あのゲームもの凄い好きなんだ」


すると、珠樹と神奈は顔を見合わせ、その後、珠樹は笑い、神奈は感情が乏しい顔でもわかるほど、驚き、


「……あれ、人気なのか?」


「人気だよ? 何? 魔術部隊の悪口言うのかな?」


「……いや、そこまで人気が出ているとは思わなかったからな」


隣で、珠樹が大笑いしている。腹を抱え、のたうち回っている。


「ちょっと、珠樹は何がおかしいんだよ!」


「ご、ごめん、いやだって、作者がここまで自信ないのに、ファンがとても自信あるっているのも面白いし、その作者っていうのも気づかないで、聞いているアミちゃんも面白くて」


「作者? って、もしかして、作ったのって神奈?」


「……ああ、私が通信状態の維持の為に作ったんだが、まさかそこまで人気とは」


「そ、そうな……いえ、そうだったんですか! とても面白いゲーム有り難うございます! いつも楽しませてもらっています! 神奈様!」


「あ、様付けになった」


珠樹がなんか言っているけどまあいいや。そんな事より、今は魔術部隊の話だ。


「楽しすぎて、毎日やってました! 此方の世界でもできるんですか? 召喚術師の強化は来ますか! 次の追加魔術は何ですか?」


「……落ち着け。今考えているのは、召喚術師の強化だな。流石にあのままだとゲームバランスが悪いからな。まずは、クールタイムを……」


数分後


「……成程、プレイヤーの生の声を聞けて新鮮だった。ありがとう」


「まだまだ話せるけど?」


と言うか話したりない。もっともっとこの話をしていたい。と言うか聞いていたい。そう思っていたのに、


「それがね、君がやる気を出した事を、皆に話したら、シューと木下と百地が喜んでね。連れてきちゃったんだ」


後ろから皐文の声が聞こえるけど無視無視。って、え。


「3人が来てるの?」


「私も来てます。アミ様」


あ、これ、なんか修行する流れかな? いやでも、私は神奈様と話が!


「アミ殿! 今から特訓でござる」


「いやだよ! 私は今神奈様と話しているの!」


「……行ってきていいぞ」


そう無情に告げる神奈。すると、両サイドを乃理とシューに挟まれ、腕を掴まれる。


「さあ、今から、詩織の所に行くぞ。昨日の分を取り戻さないとな!」


こうして私は、詩織の修業屋に連行され、昨日の分もきっちりと絞られるのであった。

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