第5話 昨日の
昨日の
「はぁ、はぁ、もう無理」
やっと走り終わった! しんどい! 私は原っぱに倒れ込む仰向けになり、草の香りを感じる、それが気持ちいい。風も通り、それもまた私の疲れを取り去ってくれる。
「すごく頑張ったね。君がそこまで気合があるとは思わなかったよ。どうしてだい? どうしてここまでやる気を出したんだい?」
「それ、は、目の前で人が死……いや、何でもないよ。ただただ弱い自分が嫌になったんだよ」
「成程ね。じゃあ、ここまで来たご褒美だよ。ほらあそこ」
そこには、ワイバーンの雛がいた。けどそれのどこがご褒美? ってあれ、こっちを見つけて喜んでいるよ。という事はもしかして、
「昨日のワイバーン?」
「きゅい!」
此方に走ってきた。わわ、どうしよう。餌持ってないよ。本当に好かれているのかもわからないしどうすれば……。そんなことを考えているうちに、手の下に頭をくっつける。か、かわいい!
「そういえば、まだ名前を付けてませんね。どういたしましょう? 良い名前思いつきますか?」
「う~ん、ドーリとかどう?」
すると頭の中で、
『契約完了。個体名:ドーリ認証。これからマスターアミの配下に入ります』
「いいですね。ではこの子は今日からドーリです」
「なんか頭の中で響いたんだけど、皆は聞こえなかった?」
「いいえ、聞こえておりません」
「あー確か、それは契約の声だよ。よくわからないけど、テイム持ちの人間がテイムしたときに、聞こえるらしいよ」
「え、何それ、怖い。それで、皐文、なんでここにドーリがいるってわかったのかな?」
「えっと、僕は知らなかったんだけど、珠樹が君が部屋に帰った後、とぼとぼと帰るドーリを追いかけて、発信器を付けたようなんだ。そして、場所を把握してたみたいだよ」
「よかったよ! 二人にありがとうって言っておいて」
「いや自分でいいなよ。今から行くからさ」
「へ?」
「僕は、君を探しに来ていたんだよ。もちろん、神奈に言われて、ドーリも一緒に連れて行くように言われていたから、ちょうどいいかなと思って鍛えちゃったよ」
ついでで鍛えられたんだ、私。
「じゃあ行こうか。あ、帰りは、歩きで良いよ。これ以上は精神的負荷も高すぎると思うからね」
「いや、元から高いよ!」
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