第2話 ボディメイク

 ボディメイク




「アミ! 君もだよ」


誰! どうしてか、イライラが吹き飛んだ気がした。声の聞こえた上のほうを見上げると、皐文が男の人にお姫様抱っこされながら、降りてきた。


「あれ? 皐文だ。ってこの姿でも、私だと認識できるの?」


あ、声が元に戻った。と言うより、落ち着いて、いつもの声を出そうと思ったら出た。というのが正しいのかな?


「うん、アミだろ。僕は神奈から話を聞いているからね。やっぱりあの人形が、トリガーかな。君が憑依すると、人形が大きくなって、いや元のサイズに戻って、鬼に成る、そんな感じだと思うよ」


「へーそうなんだ。で、この憑依を無くす方法ってわかったのかな? 鬼に成るの嫌なんだけど」


「僕にはわからないや。でもいいんじゃないかな? 君はこっちの世界に来れるから。まあ僕の持ち物扱いになるけど」


「嫌だよ。私は自分の体でこっちの世界に戻りたいの!」


「けど、一日3時間だけ、それも鬼の体でも、戻れるのはいいんじゃないかな?」


「それはそうだけど」


「とりあえずここは僕を手伝ってよ。あそこの4人を助けてもらえるかな? と言っても、もうやれることは無さそうだから、今日のうちにやっておきたい事をやりに行こうと思うんだけど。手伝ってくれるなら、いい情報あげるよ、と言うか、手伝わないと、君の人形その辺に放置するよ」


「情報気になるね。分かった。手伝うよ。あとその脅し怖いからヤメテ」


「じゃあ、一つ、神奈しらべだけど、恐らく、その体、細部まで大きさを変えれるよ」


「つまり?」


「体を自由にカスタマイズできるってことだね」


「んな馬鹿な」


でも、それだったらうれしいな。とりあえず、皐文と同じ大きさの体を想像する。すると一瞬で、その大きさに変化した。


「ね?」


「う、うん」


「あ、鏡貸してあげるよ。後、服だね。これは、神奈からの貰い物だから、礼は神奈にね」


「ありがとう! って手鏡じゃなくて、姿見なんだ! じゃあ、この醜い体を好みにメイキングするから、危なくなったら教えて、後服ありがとうね」


そこから私のカスタマイズは始まった。まず出ているお腹を引っ込め、服を着た。そして、足から爪を小さくしたり、見た目の筋肉を減らして、最終的には、


「やった!  理想の美少女になった! 角は消せなかったけど、まあいいや。ぐへへへへ」


「アミ、変な笑い声出ているよ。それはそうと、あそこで震えている少年は敵なのかい?」


「うーん、分からないよ。でも、あの人たちとは、戦闘状態だったよ」


「へー、飯野のお兄さんたちと戦っていたなら、僕たちの敵だね。でも怯えて端っこにいるなら、別に放っておいても」


しかし、その少年兵は意を決してように顔を上げる。そして、近くにあった槍を拾い、


「ま、ま、待て!」


やっぱり立ちはだかるようだ。震えているが、戦う意思は万端。それなのに、向こうの4人中2人は、そんなに戦う意思の無さそうで、少しおどおどしている。


「どうした少年。君は殺される心配はないんだぞ? 此処で声を上げて、死亡率を上げるつもりか?」


そう言った、皐文と一緒に下りてきた男性からは、戦う意思を感じず、でも、警戒値は高めているようだ。


「確かにこのままだと死ぬかもしれない。でも! 隊長や団員、指導者とも約束したんだ! ここでサターンを殺して、僕たちの世界に安寧をもたらすと! だから、逃げるわけにはいかない!」


やっと立ち上がったね。足はまだ震えているけど、瞳は怒りに燃えている。槍を構え、此方を睨む姿は、物語の主人公のようだ。まるでこれだと私たちが悪役みたいじゃないか。


「隅で、震えていたのにかい」


「それでも、皆死んだわけじゃない! まだ生きている人もいる! 助けられるのは僕だけなんだ!」


「アミ、僕たちの敵はあいつだよ」


「わかった。行くよ、火球5連弾!」


「アミ、君は何でそんなに暴力的なんだい? その鬼の体のせいかな? それにしても、あの少年兵に武器、見たことある気がするんだよね」


そう言いつつも、皐文も苦無投げているじゃないか。と思いつつも、火球を投げつけた。火球は紙一重で回避され、苦無は何故かダメージがない。


「敵の兵士は、全員金属性防御を持っているみたいなんだ。だから金属の武器は効かないよ」


後ろからの声、成程、だから、苦無が刺さらないんだね。


「じゃあ僕はこの大量にある水を使うとするよ」


後ろの会話が途切れ途切れ聞こえる。そして、私を避けるように水の刃が少年兵に襲い掛かる。それでも、少年兵は槍を回転させて、水の刃を相殺する。なら! 此処は接近して! 一撃を腹に入れた。まあ、回転する槍の上からだけど。


「ぐはっ!」


へ? 力入れて殴ったけど、私のこの体形だと、そんなに力でないと思ったのに、壁に叩きつけてしまったよ。つまり、強度、筋力は鬼のまま? なら、あの槍も恐れることはないかな。


「あの槍、蜻蛉切なんだ! あの槍は、穂に触れると、真っ二つにされるんだ!」


少年兵が槍を向けて来るけど、私の拳の方が速い! このまま振り下ろす! だけど、皐文が割り込んできて、


「ごめんね! 僕たちはこのまま撤退する。後は頼んだよ」


私の手を流しつつ触れて、少年兵の槍を苦無で抑え込んだ。のと共に世界が歪み始めた。そして気がつくと、

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