2章

第1話 いきなりの夢

 いきなりの夢


「お、おい。なんだ? あれは!」


その声で目を開ける。ぼんやりした眼をこすりつつ、周りを見渡すと、そこは、円柱の形をした空間だった。いや何処だよ。しかも足元水浸しだし。私なんか立ち上がっているし、狭いし。あれ? 周りがざわついているけど、何処にも姿が……ああ、周りにいる小人の声かな? それも沢山いる。という事はこれは夢?


『コロセ、コロシナサイ!』


そんな声が頭の中に響いてくる。まあ夢だし、小人なら倒すのも楽だろうし、いいかな? 真下を見ると、出っ張った赤いお腹が見える。あ、これ鬼の夢だ。でもどうしよう。さっきから響くこの声に、抗えない。私を見て、鬼という人もいれば、私を見て、悪魔という人もいる。私を見て、逃げ出す人もいれば、私を見て、攻撃をしてくる人もいる。とても潰したい。声に抗えない。……潰してしまおう。私はこの狭い空間で走り出す。小人は逃げ惑う。何か白い馬っぽいものに乗ってい逃げている小人もいる。


「ちょ、意識は無いのかしら! まるで戦闘狂ね」


違うよ、私はか弱い、逃げ腰の女の子だよ。何でそんな馬鹿みたいに言われなくちゃいけなんだよ。まあ今は違うかもしれないけど。思わず、その声を発した小人を睨みつける。


「あなたたち皆倒せば、この夢は覚めるかしら!」


指の先に一つ一つに火を灯す。この火で小人どもを焼き尽くして、燃やし尽くして、灰にしてやろう。そんな悪い事が頭によぎる。


「何するつもりか解らないけど、ヤバそうね、止めるわよ!」


どうやら、対抗するみたいだね。水でできた魚や、鎌が投げられた。けど、この火球はそんなやわな水じゃ消えない!


「間に合わなかったわね」


これで、この小人たちも死んだだろう。だけど、そこにいた3人は死んでいなかった。一人は、巨大化した手で火球を握りつぶし(どんな手だよ)そしてその小人は、打つ術なしになった小人の方に何かを投げていた。それが、周りの鉄製品を集めて、塊となり、手となり、その小人を守った。最後の気配が強そうな小人は、大量の鎌を火球に投げつけて、相殺した。仲間を守った小人も強そうだけど、この小人の方が強そうだ。なら、この小人を狙って、先に倒したほうがやりやすいよね? 手を振り下ろし、足を踏みしめ、時には火球を飛ばして、周りにいた、兵士の格好をした小人が一人また一人と絶えていく。しかし、鎌の小人には掠りすらしない。


「くそ! くそ! どうなっているの! あの回避力、速度! 人間じゃないよ!」


あ、でもこれ夢だよね。なら望めば消えたりしないかな! けど望めど望めど消えはしない。それどころか、鎌は体に鎌を投げつけられ、


「痛い!」


鎌は筋肉注射程度の痛みしかないけど、それでも鬱陶しいものは鬱陶しいよ。だから、狙いを定めて、火球を投げまくる! けど、本人には当たらず、周りにいた兵士っぽい人たちに当たる。


「すばしっこいね!」


今の所一撃も当ててない! どうしよう、まず、あの守った小人を倒しておくべきだったかな?


「 そうだね~、まず鬼かな?」


いつの間にか、小人は3人になっていて、いや、あの隅っこにまだ一人、兵士がいるね。そんな事より、私は3人の小人に囲まれた。とりあえず、一番弱そうな小人に火球を投げつける。


「僕に任せて!」


その声と共に、弱そうな小人が、前に走り出し、何かを投げる。それに火球がぶつかると。火球と同じ大きさの火の蜥蜴になり、下にたまっている水によって消火された。


「おとなしく消されてよ!」


ああ! もう腹立つ! なんで、鬼の力をもってしても、この三人は倒せないんだよ!


「三人ともストップだ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る