第6話 村案内
村案内
「アミ様、会場の設営がまだ終わっておりませんので、村の中を案内しながら、会場に参りましょう」
乃理が私に村を紹介してくれるそうだ。ここは言葉に甘えて、
「うん、お願いするよ」
それにしても、敬語で話されるのは、慣れないなぁ。それにしても狭い村だ。
「こちらは、神奈様の研究所、紀光研究所本部です。たまに変な音や声が聞こえてきますが、皆気にしておりません」
紀光研究所? 効いたことある名前だ。確か、謎の研究をしている施設って聞いたことがある。
「次はここ、長屋? 長屋という名のマンションです。ものすごく高いですね」
高い。高層マンション並みに高い。そして、横にも広い。その上日当たり良好っぽい。
「この中には全員の住居があります。一階には食堂もありますよ」
「へー、紀光研究所は日陰にあるんだね、でも、マンションの名前が長屋って、長屋って」
「そうですね、少し面白いですよね」
うん、そういう事にしておこう。
「で、食堂って一食どの位のお金がかかるのかな?」
「いいえ、この世界でお金はありません。無料ですよ。ただ」
「ただ?」
「当番制で、食事当番が回ってきます。なので、アミ様にも回ってきますよ」
「ううううううん、わわかったよ」
「調理は苦手ですか?」
「いや、野菜切るぐらいなら出来るんだけど、火を使うと、ダメなんだ」
「得意属性火なのにですか?」
「うん、いきなり燃え盛るんだ」
「なら練習していきましょう」
練習でどうにかなるかな?
「う、うん」
「では次に行きましょう。次は……」
歩きながら説明を聞いていたため、次の場所にもう着いていたので、
「お店かな? でもお金がないならどうするのかな」
「ええ、店ですが、ここは物々交換の場ですね。あの透明になっている蓋のあるロッカーに交換したい物と欲しい物を打ち込むと、他の人が来て交換してくれていたり、欲しい物を見つけたら、その人が望んでいる物と交換できるという場所です。また、良い物を定期的に出せるようになると、こちらの特別コーナーがもらえます。例えばこちらは皐文さんのコーナーです。ここだけ、渡す人を指定していますので、勝手に持っていけませんが、皐文さんにメールや、手紙などで、お願いしておけば、欲しい他の世界の物を持って来てくれますよ」
「へー。なら、私も頼めるのかな?」
「そうですね、あの方は、コカトリスの肉が好物なので、それを用意できる我らなら可能かと」
「そういえば、なんで皐文だけが、他の世界に渡れるのかな? 私達だって、陣さえ書けば行けたりしないかな?」
「無理でした。リーちゃんが試していましたが、陣がすぐ消えてしまい、とても発動しません」
「そっかぁ」
私は落胆した。今すぐにでも、戻って、両親を助けたい気持ちがあったのに、
「まあ未練があるのは分かりますよ。でも、この世界から解放される時は来ます。来るはずです」
皆それを信じているんだ。けど私は少し信じられない。だって、それのやり方を誰も教えてくれないから。
あれ、なんか乃理が交換してる。なんか入れた後に、宝石が出てきた。って宝石!
「ちょ、宝石って高価じゃないの? そんなぱっと買って良いのかな?」
「良いんですよ。だってこれ、コカトリスの羽10枚で簡単に交換できる物ですから」
「さっきからコカトリスって出て言ってるけど、あれって伝説上の生き物だよね! 本当に大丈夫?」
「ええ、コカトリスは近くの森にいるので大丈夫ですよ」
うん、どういう事?
「後、ここには店番がいますが、ここも当番制なので、アミ様にも当番が回ってきますよ。では最後です。参りましょう」
「ちょ、コカトリスについてもっと教えて!」
「ほぼ伝説通り、ですね。視線と吐息に毒があります。ので、狩れるのは一部の人間だけですよ」
「だから高価なのかな?」
「そうですね。では次、銭湯ですよ」
見た感じ銭湯だが、とても大きかった。けどそのままただ単に、入れる人数を増やすように大きくしたというイメージを持つ機能的な銭湯だった。
「ここも番頭はいますが、日替わりなので当番制なので、アミ様にも回ってきます。後ここは入る時間は自由ですが、夜中の2時から30分は整備のため、入れません。その期間中に、ロボットが整備してくれているそうですよ」
「ほえー、成程」
それにしても気持ちよさそうな銭湯の香りがする。入りたいけど、我慢我慢。
「では、そろそろ会場の設営も終わった頃です。参りましょうか」
「うん、行こうか」
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