第4話 修業屋
修業屋
修業屋に入ると、白い帽子に白い長い髪、白い洋服、目が茶色の少女が市内を持って座っていた。
「あ、来ましたか、珠樹。今日も身体検査ですか? っとそちらはどちら様ですか?」
「わ、私はアミ・ホーネットと言います」
第一印象は白い、その次の印象は強そう。そう感じた。でもどこが強そうなのかと聞かれると困ってしまう。けど只々強そうと感じさせてしまう力を感じたんだ。
「新しく来た子ですか? 成水 詩織です。以後宜しくお願いします」
「宜しくお願いします」
「で、私に何用ですか? こんなにもそろって」
「えっと、この子の才能の調査をしようと思ってきたのと、詩織ちゃんにはこの子の修業をしてあげてほしいんだけど、いいかな?」
「お安い御用です。ですが、珠樹たちが連れてきて、直接修業をつけるように言うとは、珍しいですね。大体は、言伝で何故来たか分からず修業させられる子が多いと思うのですが」
「そうだね。基本、皆ここに行かせれば、強くしてもらえるからね。安心しているよ」
「まあそうですが、今後は一人ついて来てくれるとありがたいのですが」
「……それは珠樹の怠慢だな」
「そうだね、頑張って珠樹」
「やれたらやるよ、じゃあ後で」
あ、珠樹、やる気ないよこれ。あれ、珠樹は違う部屋に入っていった。
「まあ、いいでしょう。で、どういう修業がお望みですか?」
「あ、なら楽な……」
「詩織さん、アミ様は悪魔の統率するお方、将軍としての力量を付けさせてください」
「ちょ、何言っているの? 乃理! 私にそんな体力無いよ!」
「わかりました、では防衛能力方面、体力をつけるのも並行しての方向で調整しましょう」
なんか余計に厳しくなってない? 私失言した? それにしても、なんで防衛なんだろう?
「詩織なんで防衛なのかな?」
あ、皐文も首傾げている。私と同意見なんだ。けど、防衛なら楽そうだなとか思ってたのに、それ訊かれたら、もっときつくなりそうなんだけど。
「彼女は指示を出す役になるのでしょう。ならば、死ぬわけにはまいりません。ですので、防衛術です。その後に戦闘技術などを身に付ける形になるでしょう。ついでに、座学で、部隊戦闘についても教えましょう」
あ、泣きそう。私の主張ができない。キビしい方になっていく。つらい。けど泣くわけには……。
「待って、待って! 詩織、乃理、勝手に話を進めるから、アミ泣目だよ」
「皐文ありがと。でも私泣いてないよ。私引きこもりだったから、いきなりそんなにできないよ。でも、防衛の訓練はしなくちゃここの世界で生きていけなさそうだからお願いします」
「わかりました、では簡単な修業から。ですが、アミ、泣いてましたよ」
「泣いてたね」
「泣いてましたね」
「……ノーコメント」
「泣いてないよ!」
その会話中もいつの間にか機械を触っていた詩織さんは、まだ機械を触っていた。というか少しチョップしているし。
「では、才能調査と、得意属性の特定、才能開花を行います。それから修業です。いいですか?」
「はい、解りました」
「では、この機械を腕に巻いてください。これで、才能調査、得意属性の特定ができます」
「へ? この機械でそんなことが判るの? それに魔術の特定なら、魔術でやったほうが良いんじゃないのかな?」
まあ、巻くけど、これ腕時計みたい。ん、いたっ、なんかピリッと来た!
「……ああ、それで判別できる。ちなみにそれは、魔術と機械の複合物だ」
成程、私にいた世界でもこのような物はあったけど、気付かなかった。魔力反応を調べると、確かに微弱ながら反応はある。
「へー。これどうなっているの? 解析の為に解体していい?」
「……後で図面を渡す。それでいいか?」
「え? 図面もくれるの!」
「……いや、も、じゃない。も、じゃ。解体はしないでくれ」
「えー」
「……えー。じゃないが」
「わかった。図面だけでいいよ」
「なんで、神奈がマウント取られているんだろうね」
「……本当だ」
「判別、覚醒完了です。では読み上げますよ。先天的能力は調教、つまり、動物のしつけ、命令系の能力ですね。後天的能力はまあ、悪魔の力と、貴女は精神攻撃無効化が付いてますね。魔力量も申し分ない。それで、得意属性は、火と、闇ですね。では、防衛の訓練の準備をしてきます。では」
あれ何で、悪魔は私に精神攻撃ができたんだろう? 精神攻撃無効化が付いているなら、できないよね?
『お、大当たりじゃあねえか。無効化系の能力なんて、なかなか見れた物じゃないぜ。良かったな、アミ』
ランダムで付くっぽいかな? あ、珠樹、戻ってきた。
「珠樹どうだった?」
「うーん、やっぱり、ダメっぽいかな。代美ちゃん探しに行かないといけないかもね」
「代美は今、通信範囲外なんだっけ? 珠樹しか追えてないって聞いているけど」
なんか珠樹と、皐文が深刻な顔で話している。何か困りごとかな?
「どうしたの。珠樹と皐文は」
「……ああ、珠樹は体の調子がおかしいんだ。簡単に言うと、一部が違う形になってしまうんだ。13年前の戦いで、サモンエッグを呑み込んだのが原因だろうな」
「サモンエッグって、もしかして、召喚簡略化できるっていう卵型の触媒の事? って13年前! あの子何歳なの?」
「……ああ、そのサモンエッグだと思う。それと、言ってなかったが、この世界では、よその世界から来た場合のみ年を取らない。私達は13歳の時に来て、あれから12年たっているから25歳と言ったところか」
「え、私より年上? 敬語」
「……敬語の必要はないぞ。精神の成長はあるがな。それに今更警護は少し引くからな」
「そっか」
「それはそうと、サモンエッグだが、何故知っているんだ」
「えっと、確か、祖父が、いやなんでもないかな。違う世界に渡っているとは思えないし」
「……そうか、で、具体的には、尻尾生えたり、羽が生えたり、色んな部位が変形するんだ。その後元に戻るのだがな」
「それは、サモンエッグを呑んだんなら、当たり前だよ。今まで体が戻っていることの方が不思議だよ」
「……やはりそうだよな。だが、何か突然変異を起こす理由があったようだ、恐らくだが、魔力体外放出を封印されていた時に、呑み込んだから、体外に影響を及ば差ないようにした結果か、代美の封魔矢の力だろうと思っている」
「体外魔力放出封印では、力が違い過ぎて、防げないだろうし、それに、封魔矢がどんなものか知らないけど、封じるのは一時的な物だと思うし、それでも力が足りてないと思うよ。私のいた世界でも、呪いを封じこめる者は開発できなかったもん。呪いの解除は成功事例はあるけどね。でもサモンエッグに関してはそんな研究結果はないかな。呪いの解除例だって、解除呪文や、対抗の呪文の詠唱でしかないからさ」
「……だろうな。だが、現実に抑えることには、成功している。その戦いの時は、暴走していた珠樹を止めれたんだ。そして、封魔矢は神力で作られている可能性がある」
「神力かあ、でも稀に持っている人がいるあの力、その稀でも10、つまり、魔力が1000と変わらないんだよね。普通の人間の持つ魔力が100だから、常人の10倍の魔力だけど、それじゃ足りないよ。たしか、抑え込むには、その100倍の神力が必要だったかな?」
お爺ちゃんが死ぬ前に試算したから覚えている。お爺ちゃんが救いたい人も呑み込んだらしく、その計算を手伝ったんだっけ。
「……成程、ならば、代美なら可能かもしれないな」
「へ、どういう事? それじゃあまるで、その代美って人、めちゃくちゃな、ん? 機械動いている、なんか紙出てきたよ」
私その紙をつかもうと手を伸ばすが、先に皐文にとられ、皐文が驚いている。
「……どうした皐文、見せてくれ」
それを貰い、見て、神奈は何故か袖を叩き出した。
「神奈ちゃんどうしたの? って今操作中かな?」
「操作中?」
「うん、神奈ちゃんは、記録、共有したい風景やデータを眼鏡から読み取り、袖のキーボードでコメントを書いて、ホストコンピューターに保存してるんだ」
「キーボードってどこにも……って袖のあれが!」
「そう、神奈ちゃん自体が機械だからね。服も機械になっているんだ」
「成程」
不謹慎だろうから言わないけど、機械の体が少しうらやましい。って、そんな事よりさっきの紙だよ。
「神奈ちゃん、先に紙見せてよ」
「……あ、ああすまん」
珠樹の手に渡され、私も隣から覗き見る。さっきまで私が使っていたから、私の物なのかな?
”隠匿能力解析成功
・先天的能力:魂情報の保存
・後天的能力:復活666
・得意属性:水”
隠匿能力? なんだろうそれ、それにしても3人は何に驚いているんだろう?
「成程ね、じゃあ、あの子が憑りついているんだ」
「そうなるね、じゃああのアーマーも出せるのかな?」
憑りついている? たしか、悪魔も言っていたけど、私の中にはあと一つ魂があるって確か言ってたような、その人かな?
「……アミ、君の誕生日はいつだ?」
「いきなり誕生日? 12月24日だけど?」
「成程、一緒だな。確かに可能性はありそうだな」
「わ、解るように説明してもらえないかな」
思わず言ってしまった。いやこれ混乱するよ。もしかしてこのもう一うtの魂について知っているのかな? ってなんかこそこそ話しているし。あ、終わったみたい。
「……まあ、不確定要素が多すぎて、何とも言えないが、君は、私達が昔仲間だった、悪魔憑きの生まれ変わりなのかもしれないという事だ。まあ与太話だと思っておいてくれ」
「な、成程?」
生まれ変わりってあり得るのかな? 私にはよくわからない。
「そうだ、珠樹、さっき神奈と話していて思ったんだけど、珠樹がサモンエッグ持っているのかな?」
「ううん。今はもってないよ。お兄ちゃんにとられたんだそれにしてもなんでサモンエッグが気になったの?」
「えっと、あれはお爺ちゃんの持ち物だったから」
「へー。サモンエッグっていっぱいあるんだね」
私は頷く。珠樹が盗むような人だとは思えない。だから、多分他にもサモンエッグはあるのだろう。
「あと、珠樹、代美さんって人探しに行くんでしょ?」
「うーん、考え中かな。私は行こうかなと思っているんだけど、皐文ちゃんは1日に一回一時間だけ違う世界に行くから助力は求められないし、神奈ちゃんは情報収集や、発明でここから離れたくないだろうし、詩織ちゃんは、皆の修業を見なきゃだし、私だけで行くのがベストかなって思っている所なんだ」
「それなら」
「ん?」
あ、けど、私が行っても、力不足だよね。外には危険もあるだろうし、それに、体力もない。だから今は人のことより、自分のことを優先しなくちゃ。
「なんでもないです」
「まあ、今は詩織に稽古つけてもらう事だね。ほら来たよ」
「準備ができました。さあこちらにどうぞ」
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