第3話 話を聞く

 話を聞く


こちらに向かって、手を振りながら、走ってきている少女がいる。あ、躓いた。あれ、あの人、見たことがある。確か最近見たような、あれは、幻覚で見た親友かな? 黒い髪の毛、ショートボブで目は黒い。黒い和服っぽい服を着ており、全体的に黒というイメージの人だ。あれ? そういえばさっきの幻覚に皐文も出てなかった?


「ごめんね、皐文ちゃん。待たせたね。君がアミちゃん? 飯野 珠樹だよ。宜しくね」


「アミ・ホーネットだよ。宜しく」


握手したけど、どう見ても、さっきの幻覚の子だ。どうして? 何かなつかしさを感じる。


「ひさし……何でもない」


口が勝手に開いた。今度は普通に自分の口を閉じれたけど、どうなっているの? 二人も不思議そうな顔をしている。


「どうしたの? 大丈夫?


「う、うん、大丈夫」


「ならいいかな。で、あなたに頼みたい仕事はね」


「えっとね、珠樹、さっき判明したんだけど、この子、悪魔の将軍だったんだ。だから、狩りより悪魔の統率の仕事をしてもらおうと思っているんだけどどうかな?」


「いいよ。じゃあ、念話を飛ばしておくね。ライル姉妹も喜ぶよ」


「うん、頼んだよ」


あれ? 珠樹黙って何してるのかな? もしかしてこれが念話? どうやってるんだろう?


「やっぱり、エスキ姉妹は喜んでたよ。もう悪魔の統括しなくていいって。それに、今聞いたら、意識を失って、暴れていた30名は、意識を取り戻したって」


「なんで? ってそうか、将軍が現れたからか。その子達は会話できそうなのかい?」


「聞いてみる」


「将軍様。我らはいかがいたしましょう?」


その声に振り向くと皆まだ私に頭を下げた体制で待っていた。なんで?


「ええっと、じゃあ楽にして。それで私の話を聞いてほしいんだけど」


楽にしてと言うと、皆、立ち上がり、足を肩幅ぐらいに広げ、また不動になる。まあいいけど。一番前の少年が口を開く。


「ははっ」


「私はあなた達の将軍と呼んでいる人格ではないよ、だから、アミって呼んで」


「仰せの通りに、アミ様」


「で、どういう状況か教えて」


「はっ、まず、我らは、この世界の人たちに救われた身です。その恩を返し次第、世界への復讐を行おうと思います」


「復讐?」


「ええ、復讐です。皆世界から迫害されたのです。だから、復讐です」


「復讐かぁ、いやそんな情報じゃなくて、この世界の情報が欲しいんだけど」


「この世界の情報ですか。村があちらにあり、そこにほぼすべての人間が住んでいます。後森には魔物がいます」


「成程、それで、他の所は? って高層マンションがある」


「川もあります。あの川を境に森側には魔物が闊歩していますが、村側には魔物は来れません」


「ふむふむ」


「以上です」


「ほえ? それだけ?」


「はい。元が何もない世界なので」


「まあ、村には少しぐらい見る場所はあるけどね。例えば、最初からあったログハウスとか、紀光研究所とかね」

 

「皐文ちゃん連絡終わったよ。会話も可能だって。村の外には私が念話を送るから少し待ってね」


あ、珠樹、念話終わったみたいだね。


「じゃあ村に行ってみるかい? アミ」


「うん、行くよ」


「じゃあ出発だね」


と珠樹と皐文が先頭をきって歩いていく。


「それではアミ様失礼します!」


あれ、さっきの皆はついてこないのかな? そのまま森の方に向かって行く。一人を除いて。その一人はメイド服で、二本角、ピンクの髪の毛で、おさげ。目は黒色の少女だった。


「アミ様、今日から貴女の補佐をいたします、葛西 乃理と申します」


「よろしくね。知ってると思うけど、私はアミ・ホーネット。さっきの男の子は名前聞けなかったけど教えてもらっていいかな?」


「はい、あれはアミ様が来るまで、皆をまとめていた、木下 猛です。アミ様が相応の力を身に付けるまで、彼が悪魔たちを統括します」


「そうなんだ、ありがとうね、で私はどんな力を付けなきゃいけないの?」


悪魔の力を操れるようになってもらいます。操り方は私や、木下、修行屋の者がお教えします」


「あ、そっか。じゃあ、詩織ちゃんの所に行かないとなんだね」


前を歩く珠樹がこちらを振り返り言う。修行屋? なんかゲームっぽい施設。


皆が静かに歩いていいる。私は考えがグルグルしてきた。本当にお父さん、お母さんは大丈夫かな? それにあの町は被害ないかな? 私のせいで色々と、


「アミ、大丈夫だよ。君の親は生きているよ。どうしても気になるなら、紀光研究所に後で行ってみるといいさ」


「う、うん」


顔に出ていたみたいだ。思い切って色々聞いてみようかな?


「それにしても、なんで私は追われていたの? 角が生えただけなのに」


「それはね、調べた感じだと、魔術、機械が発展している世界と、機械のみ発展している世界の戦争の際、一人の悪魔憑きが呪いを発生させたんだ。それも7つの世界すべてを呪ったものだったんだけどね。生まれてきた子の666人を悪魔の子とする呪い、それを彼女は死ぬ前に宣言したらしいんだよ。皆それで混乱して、色んな対策を打ったんだ。ただその対策も表立ってはできないから、こっそりと行なわれているんだ。その中の一つに悪魔狩りがあったらしいんだ。しかしそれを大々的に大手を振って行うわけにはいかない。だから、犯罪者として捕まえに来たのさ。ちなみに、君があそこで捕まっていたならば、実験台になっていたか、殺されていたかのどちらかだと思うよ」


その戦争は調べたことがある。確か、私が生まれる前に起きた戦争だっけ? 私は両方が成長している世界に住んでいたから、ネットで見た。私の住んでいた世界の大勝利に終わり、大々的に報道された。その後、生き残った将たちが暗殺されたんだっけ? それを機械のみ発展している世界のせいにして、賠償金を求めたはずだよね。けど、そんな悪魔の話見たことないけど、極秘だったってことかな?


「じゃあ、その対策のせいで私は、いや私達はこんな目に遭っているんだね」


「まあ、そういう事かな。で、この世界で君にやってもらいたいことなんだけど、まずは、悪魔の統制してもらいたいんだけど、その為には最初は修行かな? で、その後は招集に皆で応じてもらえるとありがたいかなと思っているんだ。何か、神奈と珠樹のお兄さんが企んでいるみたいだから」

「……企んでいるとはなんだ。企んでいるとは。珠樹の兄が企んでいるんだ」


「あれ? さっき別れた、えーっと夜永だっけ? どうしてここに?」


「……私は神奈。夜永は私と同機種の別固体だ。まあ、ホストコンピューターで繋がっているから、どこで何をしていたかは知っている」


「大丈夫? この子自分が機械だと思っているのかな? それともそういう設定?」


「悪いけどどちらでもないよ。この子は正真正銘、機械の体になっている、紀光 神奈だよ。紀光の名の付いた、機械少女のメイン固体、神奈。7つの世界に12人いるんだ」


確かに髪型が違う。私と同じボサボサの髪を伸ばしているだけだ。それ以外は夜永と一緒に見える。


「……私のことはどうでもいいんだ。それより、どういう事をしたいのかを伝えに来た。簡単に言うと機械発展世界の奪還だ」


「というか、発展とか高発展とか分かりづらいから、いつもの言い方にしようよ」


「……そうだな。先ず機械高発展世界は機械世界、機械発展世界は絡繰り世界、魔術高発展世界は魔法世界、魔術発展世界は魔術世界、両方高発展世界は最良世界、両方発展世界は両立世界、そしてここはゼロ世界だ。そう私達は名付けた。だからこの名前で行くがいいか?」


「うん、分かったよ。で、その珠樹のお兄さんは何を企んでいるのかな?」


「……あいつは、色んな世界から、戦力になりそうで、現状に違和感を持っている者たちをこっちの世界に送り、絡繰り世界を、最良世界から解放するために集めているんだ。力が足りない者は鍛えてな」


「つまりは、私達は、最良世界を攻撃するために集められたってことかな?」


「……まあそういう事だ」


「なかなか酷い事しているよね」


「……みなまで言うな解っているだが、子の戦いへの参加は任意にしている」


「けど、それって元の世界に戻れないって脅している様なものじゃないのかな? というかこの世界からどうやって出るの?」


「……方法は例外を除けば一つ、エルピスに頼むのだ、全エルピスが祈ればこの世界はほかの世界への道が開かれるとの事だ。その為に珠樹の兄は動いている。だから、この方法が成功すれば、皆出られるんだその話は悪魔憑きたちを除いて皆にしてある、だから、アミ、君には悪魔憑きの子たちを説得してはくれないか?」


「うーん、まあいいけど、期待しないでよ」


「……ありがたい。来年までに伝えてもらえればいいからな」


「分かったよ。それにしてもまだ着かないのかな?」


「もう着いたよ。ここ、修行屋だよ」


それは予想通りの道場だった。あまりにも想像通りで、道場のレプリカと思うほどに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る