第15話 嘘つきはベッド泥棒の始まり
「あー、暑いわねぇ。ね?
「え、そうか?」
「ええ、すごく暑いわ〜」
今日は朝から
「こう、足が熱いって言うか……太もも?すごく暑いのよね〜」
「……大丈夫か?」
ベッドの縁に座りながら、やたらスカートをヒラヒラさせてくるし、どこかオドオドしているというか……暑くもないのに暑いなんて言い始めるくらいだからな……。
「熱でもあるのか?」
「へ?いや、そういう訳じゃ……」
「本当か?ちょっとおでこ貸してみろ」
俺は彼女の額に手を当てると、「熱いな……」と呟く。頬もほんのりと赤い気がするし、やっぱり熱があるっぽいな。
「保健室に行こう」
「ちょ、待って待って!熱なんて本当にないから!」
「いや、ある。紅葉が俺の顔色を伺ってくるなんておかしい」
「……私、そんなふうに思われてたの?」
紅葉は俺の手を振り払うと、近くのイスを持ってきて机に突っ伏す。よく分からないが、落ち込ませてしまったらしい。俺は心配してただけなんだけどな。
「ごめんな?」
「……許さん」
「どうしたら許してくれるんだ?」
俺が「何でもするぞ」と言った瞬間、彼女はガバッと顔を上げて見つめてきた。あれ、何かまずいこと言っちゃったか……?
「何でも、なんだよね……?」
「え?あ、ああ」
「じゃあさ――――――ハグ、してくれない?」
ハグ。それは、海外なら挨拶の時に当たり前のように行われるもの。しかし、日本ではそうはいかない。
よほど仲のいい間柄でなければ、それも男女でなければまずすることは無いだろう。
「お前、やっぱりまだ熱あるだろ」
「だから違っ―――――――うん、熱ある。あるからハグして?」
「わけがわからん」
熱があるなら、マスク無しでの接触は厳禁。それに安静にしていて貰うのが常識だ。
それなのにハグを求めるとは……さては、熱で心まで弱ってるんだな?
「変なことを言うのはやめろ。ほら、このベッド使っていいから、しばらく休んでてくれ」
背中を支えながら横にならせてやると、さっきより更に顔を赤くした紅葉は、「……いいの?」と遠慮がちに聞いてきた。
「夜には帰ってもらうけどな。その様子じゃ、隣まで歩くのも辛いだろ」
「別に……いえ、そうね。しばらく借りさせてもらうわ」
「ああ、水を持ってきてやる。冷えピタもな」
「ありがとう」
弱々しく微笑む紅葉の頭を優しく撫でてやってから、俺は部屋を出て1階で薬箱を探しに行く。
5分後、戻ってきた時に枕が鼻血でべっとりと汚れていた時にはさすがに驚いたな。
「ごめんな、そこまで酷いと思ってなかった……」
「気にしないで、幸せだったから」
「幸せ?」
これはかなり重症だな。あとで紅葉のお母さんに迎えに来てもらおう。俺一人じゃ連れていけそうにないし。
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