第2章 伝説を作ろう
第10話 宿屋『獅子奮迅』
俺は、エルネイアにある『
特にコレといった特徴は無い……ことはない、めっちゃある。
この宿屋はたまたま俺が【宇宙衛星】で調べておいた飯屋のはずだった。
俺はここが二階の宿屋とくっついているとは思っていなかった俺はここの一階にある飯屋兼飲み屋へ入り、例の『魔猪の香辛料煮込み』を食べていた。
この店で俺は、労働者の話を盗み聞きしたり、ここの女店主が結構事情通な元ギルドの冒険者ということで、何かと情報を集めるためもあって、店のカウンターでその女店主と話し込んでいたところ、つい泊まる方向になってしまったのだ。
なもので、もうここで二晩泊まっていた。
その二日目の朝、俺の部屋の扉が勢い良く開けられた。
ノックされたのではない、ノックも無しに開けられたのだ。
扉には鍵もついていないから開けられた訳なんだが、ここの店の礼儀というか客に対する態度はどうなっているんだと思う。
というか防犯上、絶対駄目だろ!
鍵をつけろ!
まあ、宿泊費も安いし、飯が美味いんでいいんだけど。
「ヒロシ様!おはようございます!」
そう言って部屋に入ってきたのは、リカルディアというこの宿屋の女店主であった。
まだ、30歳くらいで美人でスタイル抜群だ。
これだよ、これ!
あの『ファングオブラビット』の小娘どもにはこの色気は出せまい。
俺がこの宿に泊まることになった理由のひとつがこの女店主だった。
いやあ、いい女がいる宿屋っていいねえ。
えっ?オッサンみたいだって?
俺は見た目は18歳かも知れんが、元々は45歳だ!
綺麗なネーチャンに鼻の下を伸ばしてもいいじゃないか!
相手は、俺を年下だと思っているみたいなんで、全く相手にはしてくれないが…くそ!
俺は、早朝の惰眠を貪っていたが、リカルディアが入って来たため、仕方なく起きる。
「ふああ、今何時だ?」
俺は大あくびをしながらリカルディアに時間を聞く。
「ヒロシ様、もう、朝7時を過ぎていますよ。」
うーんそれって俺的には結構早い。
もうちょい寝たい。
と思っていたが、リカルディアに布団をもぎ取られる。
「うわあ!」
俺はパンツ一丁で寝ていたからそれはそれでビックリした。
流石に気になる女子から布団をもぎ取られると色々と困ることがあるからだ。
「食事の用意が出来てかいますから、早く降りてきてくださいね。」
とリカルディアは布団を片付けて持っていってしまった。
万年床は許さないようだ。
俺はこの宿屋に泊まりだして二日が経った。
俺は既にこの宿というか街では有名人になっていた。
初日には飯を食って寝ただけだが、二日目に例の『シュセン堂』事件を解決したということで、皆に顔を覚えられてしまった。
余り目立つことはしたくなかったのだが、昨日の件は成り行き上仕方がなかったと言うしかない。
とにもかくにも、俺はしばらくこの街に滞在する事にした。
まあ、あちらこちらに飛び回るのも良いのだろうが、まずはじっくりとこの世界の事を知ってから動き出そうかと考えたのだ。
で、俺の今後の予定としては、
・【魔法全鑑】の修得。
これは自分のレベルアップのためである。
・この街の図書館でこの世界の事を調べる。
【神の導き手】は基本的に声だけであり、絵等のビジュアル的なものがあれば理解しやすいところもあるだろうし、こちらがある程度聞かないと答えないところがあるので、わからないことがわからない場合の調べものならばやはり図書館が良いという結論に至る。
・目標や目的の設定
とりあえずの自分の目標となるものや目的を決めて、挑戦する。
まあ、何をするかだな。
ということに決めたのだった。
冒険者ギルドに登録して冒険者になるというのもあったが、別に無理に入らなくてもいいかという気持ちなので、入らないことにした。
「うめえー!」
俺は朝飯の美味さに感動して叫ぶ。
この世界は、主食は『米』ではないが、パンのようなものが主食となっている。
しかし、この世界の飯は一体何が入っているんだ?
何でも美味くなる魔法の調味料でもあるのか?
これは、パンに野菜とどんな動物か知らんが焼いた肉が挟んであるだけだが、このタレ、何なんだよお~!
甘辛が絶妙ぉー!
美味すぎい~!
トマトの様な野菜が入ったスープも美味じゃあ~!
ということで感動の朝食が終了した。
部屋に戻ると、まず俺は予定していた【魔法全鑑】を紐解くことにした。
インベントリから【魔法全鑑】を取り出した俺だったが、その最初のページを開くと、とんでもない事が起きた。
それは、いきなりの解説付きだった。
『この魔法の書は、そのまま読んで覚えようと思えば最低100年はかかりますので、自動修得機能を推奨します。なお、機能を利用した場合の所要時間は約10分です。』
というような解説が入ったのだ。
それも日本語だ。
多分、最初に覚えた【スキル 異国言語理解】が発動したのだと思う。
100年のところが10分って…スパコンかよ。
当然、答えはイエスだ。
俺がそう答えると、【魔法全鑑】は置かれている机の上で物凄い速さでページがめくれていく。
そのページだが分厚さが5センチ位なのに、かなりの速さで、パラパラとページがめくれている。
結構時間が長いはずなのだが、まだ、半分以上ページが残っている。
こんなんで魔法なんか覚えられるのか?
と、かなり胡散臭いのだが、真面目にこの全鑑を覚えるのなら100年はかかると言われれば誰だって楽な方とる…っていうか100年も生きとれるか!という話だ。
ところで、これって覚えられてるのかなという感じだが…
それに…
『俺って魔力が無限だし、この本の中で一番強い魔法さえ覚えられればいいんじゃないか、それさえあれば、別に他の弱い魔法なんか覚えられ無くったっていいんじゃないか?』
と一瞬、思ったのだが、やはりモノには限度というものがある。
あの美味い魔猪の肉を食べるのに究極超絶極悪強力火炎魔法なんぞ使った日にゃ、形すら残らないだろう。
しかも、そんな魔法を毎回、使っちまったら、世界中にある恵みの森が確実に地上から消滅していくことになるだろうな。
なので、限度は必要だ。
『【スキル 適当】を思い出しました。』
えー !?【適当】って?あの【適当】ですか?
俺、そんなもの設定してたかな?
って言うか、そもそも【適当】って何?
聞く感じでは、なんかめちゃくちゃフワーッってしてるよね。
『【スキル 適当】は魔法を展開する相手に、一番【適当】、つまり、ヒロシ様が脳内で想像しうる理想的な結果が出せる魔法を自動で【魔法全鑑】からセレクトしたり、不必要な魔力の出力を抑え【適当】な限度に加減をするセーブ機能を持っています。』
あーなるほどね、ということは【スキル 適当】は安全性を常に考えたリミッタースキルということなのか。
『正解です。』
それって、凄いな。
つまり、どんな奴が敵になったとしても、俺の想像しうる『結果』を、つまり、この場合、『倒したい』という結果を選択すれば、相手の弱点を瞬時に探しだして、勝手に倒してくれるという『オートパイロット』スキルということであり、加えて安全機能というサービス付きだ。
そんなもの、チート過ぎて怖いわ!
まあ、思い出してしまったんなら仕方がない。
元々考え出したのは『俺』だからな。
とか頭の中でブツブツ言いながら、【魔法全鑑】は修得を終了した。
「あれっ?何これ?」
俺は脳内の状態が異常にスッキリしていることに気付いた。
別にアブナイ薬をやっている訳ではないが、【魔法全鑑】を修得したことにより脳内が整理され、『覚醒』したようだった。
それに、先程立てていた計画だが、既に終わっていた。
別に図書館へ行く必要も無くなっていた。
理由はこうだ。
俺が【スキル 適当】と【魔法全鑑】を修得したことにより、脳内の機能が飛躍的にアップし、【スキル 宇宙衛星】が【スキル 神の目】に進化、それにより世界中にある図書館や本屋、役所や各家庭の図書という図書、本という本を『全網羅』した上で、それを掌握した。
いわゆる【全知全能】状態となったのだ。
いやぁ、それ、ホントに【適当】過ぎるでしょ…
だが、俺は何でも知りすぎてしまうと、覚めてしまうものと思っていたが、この世の図書館の知識を全て取り込んだはずの俺が気になるのは、この世界にはやはり未だに解明されていないことが沢山あることに気付く。
図書館だけの知識だけではなく、それら世界の謎を解き明かすことができれば、【全知全能+α】となり、より賢者の格が上がって、いずれは大賢者、いやさらに上位となる『天賢者』になれるのではなかろうか。
そうなれば、また見える世界も変わってくるだろう。
って、俺は一体何者になりたいのであろうか…
ということで、最後は俺の目標、目的を作ることだが、まずは、身体の能力のうち、知識面、つまり脳内の状態はとりあえず充実したし、体力年齢も18歳になったので、後は、筋力、要は瞬発力、持久力等の体力面も向上してみるか。
そんなことを考えながら、自分の得た知識を脳内で整理していたら。
【スキル 神の目】に反応がある。
このスキルは確かに凄いスキルなのだが、あまり範囲を拡げてしまうと目が回ってしまうほどの情報量になってしまうので、普段は自分を中心に狭い範囲に限定して展開している。
これにより、索敵や気配察知はもちろん、人間であればある程度の情報が入るようになっていた。
「ヒロシ様、お客様が来られていますが?」
リカルディアが俺の部屋にやって来て来客を伝えてきた。
「誰だ?」
「お役人みたいなんですけど…何か様子がおかしいんですが…」
リカルディアも頭をかしげる程だから、よっぽどおかしいのだろう。
「役人?」
俺は大賢者グラビナイトからもらったローブを羽織り、下に降りた。
宿屋では一階は食堂部分となるが、一般の客には飯屋兼飲み屋となる。
その人物は護衛なのか部下なのかわからないが、二人の兵士を連れて来ていた。
「ヒロシだが…何か用か?」
俺はその人物に声をかける。
男かと思ったが女だよ。
年の頃は30歳くらい。
目力が強いが、かなりの美形だ。
そして確かに身なりは役人みたいで、抑え気味のカーキ色をした、制服とか軍服といったような服装であり、黒いブーツを履いている。
他の二人は軽鎧に身を包み、腰には剣を装備している。
俺は食堂のテーブル席にそいつを座らせた。
他の二人は立ったままだ。
まあ、護衛とかまで座ってしまうことは…それは無いな。
「私の名前は、スワシュワと言います、実は、ヒロシ様に折り入ってお願いがあって参りました。」
「お願い?」
まあ、昨日はかなり派手にやらかしたからなあ、何か言われるのかと思ったが…ちょっと違うようだ。
だが、このスワシュワが持ち込んだ話はこの【全知全能】の能力を得た俺に、かなりの刺激を与えることになるのだった。
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