第2話

 (ああ、夢だったのか)

 私はがっかりとして伸ばした手を下ろした。完全に縁日を楽しんでしまっていた。今日は土曜日なので仕事は休み。そうだ、そろそろ夏期休暇の時期でもある。あと一週間すれば、夏休み。何も予定はない。彼氏いない歴が自分の年齢なのだから、悲しいことこの上ない。

 あ、先ほどのキラキラしたドリンクの名前、何だったっけ。そう、あれ。

 ええと、確か電球ソーダだったかな。去年の夏に近くの地蔵盆に行った時に夜の縁日で中高生がスマホを片手に自撮りしていたっけ。

 リアルな夢のあとに残るのは、虚しさと、贅肉と汗だけ。

 クーラーの設定温度は二十三度だがそれでも汗をかいている私。今の体重では夏の空気は堪える、おまけに普通の女子のようにタンクトップやショートパンツなど着られるはずもない。中学生の時までは五十キロの前だったのに。どんどん増えていく体重に私はうんざりしていた。


「ねえ、いつまで寝てんの。少しは動かないとだめじゃない?」

 私の母は身長百六十センチはあるが、何かを食べているのをあまり見ない。体重は四十五キロの不動が自慢で脚などは二回ほどクロスして組んで椅子に座っている。

 おかしい、何かが違う。私の中で怒りを通り越して諦めに似た気持ちがどす黒く渦巻く。単身赴任でもう何年も顔を見ない父親が相撲部屋の親方みたいな体型で彼に似てしまった私は、お腹が空いたと思いながら起き上がる。

 布団の凹みは隕石が落ちたようだった。悲しい現実が私を打ちのめす。

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