第7話
庸二さんの携帯がつながったのは、夜中過ぎだった。私は何度もコールしたが呼び出し音が無限にループするだけで、今までにない状況に焦りを感じていた。
「もしもし」
しわがれた知らない声で誰かが電話に出る。やっと繋がったが間違いかと思ったが、とりあえず尋ねてみる。
「あの、庸二さん?」
「あなたは?」
「岬、カンナと申します」
こちらは大原警察署ですがと機械的なおじさんの声が意味のわからないことを日本語で言っているが、私は立ち尽くしたまま涙が出るばかりで現実を受け入れることなど到底できなかった。
庸二さんは煽り運転を受けて、グリーンベルトに激突して即死したと言うことが事実として私に叩きつけられた。
何もかも終わった、髪の毛が全部真っ白になるような寒気と震えが私の全身を覆う。翌朝になっても、全く理解できないまま部屋で座り込んだままだった。
もっとちゃんと顔を見ていたら良かった。
食事を残したから、神社に無断で入ったから。
あのとき、神社に行きたいと言ったのは、二人だけで結婚式をするつもりで
いたのかもしれないと私は思った。
が、庸二さんに聞くすべはもうない。
あの笑顔は二度と見ることはできないと婚姻届けを見るのは辛く、机の引き出しに入れた。
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