【5】減価償却と減損の違い

 ※こちらの文章は作中に出てきたトピックに関する解説ページとなっております。物語の展開に一切関係ないので、興味のない方は読み飛ばして大丈夫です。


 今回のテーマは、「固定資産の費用化」について取り上げようと思います。


 仕入れた商品が売れて、その商品原価が「売上原価」に計上されるように、固定資産についても費用に計上されるルールがあります。


 というわけで今回は「減価償却」と「減損」について解説していきます。


 ・減価償却


 減価償却とは、資産計上した固定資産の金額を、毎期一定額費用計上する処理です。資産は時間が経つにつれて、価値が減少するだろうという考えの下で行われます。


 売上原価の章でも少し説明がありましたが、商品の仕入をした時点で全額費用処理してしまうと、その期間の収益と費用が上手く対応しなくなってしまいます。これと同じことが固定資産にも言えるわけです。


 しかし、売上原価は売った商品にかかる原価を費用に計上すれば済むのに対し、固定資産に関してはいくら費用に計上すればいいのか明確ではありません。そこで固定資産が何年間使えるのかを見積もり、その期間を通して徐々に費用計上する必要があるのです。


 4年使える資産を100万円で買ったら、1年に25万円を費用計上するイメージです。


 会社は商売をするに当たり、工場である建物や商品を製造する機械を持つ必要があります。そしてそれらも商品の原価と同じように、収益と対応させる必要があるのです。


 このように、売上収益と固定資産にかかる費用を対応させるため、使用期間に渡って徐々に費用計上する必要があるわけです。そしてこれを減価償却費と呼んでいるわけですね。


 減価償却費は事業を営む企業であれば通常計上される科目ですので、損益計算書上では販管費区分に計上されます。営業を行う上で当たり前に計上されるので、営業利益の計算区分の範疇ということですね。


 ・減損


 これに対し減損は、固定資産の価値の下落に合わせて評価損失を計上する処理です。


 固定資産の価値の下落とは、例えば企業がある事業から撤退した場合、その事業で使っていた資産が他の事業で使えない場合、減損損失を計上する必要性が出てきます。


 ここでその固定資産の計上額が1億円で、実質的な価値が1,000万円しかないと判断された場合、その固定資産の価格は1,000万円として計上され、差額の9,000万円は評価損失として計上されます。


 1億円で貸借対照表に載ってる資産の価値が1,000万円では、投資家に誤解を与えてしまいますから、その分の価値を落としてあげようということですね。


 また、ここでの実質的な価格とは、その資産を使うことで将来いくらの現金をもたらしてくれるかで決まります。これに関しては見積もりの要素がかなり強いので、実務でもかなり揉めるポイントです。


 このように、減損は資産の価値低下にともない臨時的に行うものなので、損益計算書上では特別損失区分に計上されます。










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