【3】収益認識基準について

 ※こちらの文章は作中に出てきたトピックに関する解説ページとなっております。物語の展開に一切関係ないので、興味のない方は読み飛ばして大丈夫です。


 今この文章を書いているのが2021年の1月なのですが、実は企業の収益認識の基準に大きな改定がありました(投稿日と乖離があるのは、長い間下書き状態であったためです)。


 ちょっと小難しい内容なので、この場で取り扱うかは迷ったのですが、少しだけ説明します。詳しい説明は自分の想定する読者層には合わないので、興味がありましたら調べてみてください。


 この新しく定められた「収益認識に関する会計基準」は2021年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用されます。


「収益認識に関する会計基準」によれば、企業の収益は以下の5ステップを踏んで認識(計上)されます。


 1.顧客との契約を識別する

 2.契約における履行義務を識別する

 3.取引価格を算定する

 4.契約における履行義務に取引価格を配分する

 5.履行義務を充足した時に(または充足するにつれて)収益を認識する


 やたらと難しい言葉で説明されていたので、先程の前受金30,000円を受け取って商品を売った取引を例に考えてみましょう。


 1.顧客との契約を識別する


 企業が収益を認識するにあたり、まずその取引の契約を識別する必要があります。例にならって説明すると、企業は「商品を30,000円で顧客に販売する」という契約を識別します。この契約というのは書面だけではなく、口頭によるものや取引慣行から導き出されるものも含まれます。


 2.契約における履行義務を識別する


 契約を識別した次に、その契約における企業の義務は何かを識別する必要があります。今回の例において企業の義務は「契約した商品の販売」です。そしてこの履行義務が、契約に置いて発生する収益の識別単位となるわけです。


 3.取引価格を算定する


 収益の識別単位が決まったら、次はその金額の算定です。取引価格をざっくり説明すると、「契約における販売価格」のことです。先程の例に当てはめると30,000円がこれに該当します。


 4.契約における履行義務に取引価格を配分する


 取引価格が算定されたら、次にその金額を履行義務ごとに配分していきます。今回の履行義務は「商品を30,000円で顧客に販売する」の1つだけですので、全額がこの履行義務に配分されることになります。もし他に履行義務があるのであれば、その履行義務にも取引価格を配分する必要があります。この時点で認識する収益の金額については、ほぼほぼ確定します。


 5.履行義務を充足した時に(または充足するにつれて)収益を認識する


 識別単位である履行義務、配分される収益の金額が決まったら、後は収益を計上するタイミングです。企業は上記の収益を、履行義務が充足されたときに認識することになります。同じく例にならって説明すると、企業は「契約した商品の販売」という履行義務を果たした時、収益である30,000円を識別することになります。物語の中でも説明がありましたが、「代金の回収」は関係ありません。それはあくまで「契約した商品の販売」という、企業目標の達成から生まれた副次的な活動に過ぎず、本質的な部分では無いからです。


 まあ長々と話してきましたが、結局なんでこんな基準が新しく作られたかと言うと、それまで企業が収益を計上するための、明確なルールがなかったからです。


 この明確なルールが無いことによって、同じ取引でも企業によって微妙に収益を計上するタイミングが異なり、純粋な企業の業績比較ができませんでした。


 こういったこともあって、『収益認識に関する会計基準』が作られたっていうわけですね。

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