第9話 聖女、謁見をする。
ライオネルに連れられたわたしが
すぐに、
「王様のおな~り~~!」
大きなドラがバイーン!ってならされて、ブリスタニア王がやってきた。
そして、
「ひ、ひぃぃぃっっっ……!」
王さまを見たわたしは思わず情けない悲鳴を上げた。
というのも、
「そなたがクレア殿か」
よく通る声でそう言った王さまは、筋骨リューリューでムキムキの筋肉マンだったからだ――!
ライオネル(23歳だって言ってた!)のお父さんだからもう50歳くらいだろうに、まるで30代みたいに若々しくて、そしてガチムチだった。
リアル筋肉の鎧を着てらっしゃった。
歩く時も大またでノシノシ!って感じ。
しかもね、顔が怖いの。
すごく怖いの。
ほっぺには古い大きな刀傷まであるんだもん。
加えて目がやばかった。
ぜったいこれ、今から人を殺す肉食動物の目だよ……ふえぇぇっ、わたし殺されちゃうの!?
冒険物語に出てくる「砂漠の傭兵王」とか「
そして腰には剣をさしていた。
王宮でよく使われている綺麗な細工のされた、見栄え重視の儀礼用の剣じゃあない。
実戦で使うためのシンプルでガチな戦闘用の剣だった。
きっと気に入らない返事をした相手はあれで容赦なく斬り殺すんだ……。
ブリスタニア王に
だってわたしへっぽこでヘタレなんだもん……。
わたしは内心ブルブルと震えていた。
うう……っ!
優しい人だって言ってたのにどこがよ!?
キングウルフだってこんなに怖くなかったよ!?
ライオネルの嘘つき!
――なんて思ってたら、
「話はすでに息子――ライオネルから聞いておる。クレア殿、すでに我々は打つ手を失っておる。こたびのことどうかクレア殿によろしく頼みたい。神龍国家シェンロンで『神龍の巫女』を長年務め、聖女とまで言われたその手腕でどうかブリスタニアを救ってほしい」
ブリスタニア王はそう言うと、わたしに向かって深々と頭を下げたんだ――!
「ふえぇっっ!?」
ブリスタニア王の突然の行為にわたしはアホな声をあげてしまった。
だって、だってだって!
王様が庶民に対して頭を下げるなんて信じられないよ!?
だって王様っていうのは一番偉い人なんだよ?
で、庶民は庶民なんだよ?
ぜんぜんちっとも偉くないんだよ?
なのに王様が庶民に頭を下げるなんて――。
うん、やっぱり――やっぱりブリスタニア王はライオネルのお父さんなんだね。
わたしはそれがよくわかった。
ちょっと――ごめん、ちょっとじゃないや――かなり外見が怖いでだけで、心の中は優しい王さまなんだ。
なにより、今までわたしは誰かからこんなに期待されたことは一度もなかった。
しかも相手はなんとこの国の王様、一番偉い人なんだ。
ここまで期待されたら頑張らなくちゃだよねっ!(。>д<)
「わかりました王様、不肖クレアすぐに取りかかります!」
だからわたしは強い決意でお返事したんだ。
すると、
「まことかクレア殿! ありがたい! では必要なものがあればライオネルに言うがよい。できる限り用意しよう」
ブリスタニア王はそう言って、もう一度深々と私に頭を下げてから
「ふぅ……」
わたしは緊張感から解放されて一安心、小さく息を
「だから緊張しなくていいって言ったでしょ?」
ライオネルが言ってくるけど、
「だってすごく顔が怖かったんだもん! 筋肉もムキムキだったし!」
「ああ、父の趣味は筋トレなんだ」
「しゅ、趣味が筋トレ……? で、でも目を細めてずっとわたしを
「あれは単に近眼だからさ。目を細めないと相手の顔がよく見えないんだ」
「ふえええぇぇっ!? なにそれ!?」
「まったくメガネをすればいいだけなのにね。メガネは陰キャに見えるからイヤだって駄々をこねるんだから」
「ぽかーん……(*'▽')」
王様の何とも言えない秘密を知らされて、わたしは開いた口がふさがらなかった。
「さ。とりあえず謁見も済んだことだし、そうだね、今日はもう夜も近いから仕事は明日からするとして。まずは君の部屋に案内するよ」
ライオネルはそう言ってわたしを王宮の一室に案内してくれた。
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