第5話 子喰

老人に託された地図を見ながら進む朝陽とうらら。

小屋のあった熊切地方から一番近い、「鬼呼町きよびちょう」へ向かっていた。地図を見ながら手帳を読むうらら。

「私たちが向かおうとしてる鬼呼町では、獣魔による子供の誘拐事件が多発しているみたい。詳しい事を知るには、町長に会うべし…だって」

「子供はまだ汚れを知らない。新鮮な肉は上手いんだろうさ。狙われるのも無理はねぇな。俺を育てていた獣魔も子供をよく喰ってたよ」

「酷い…。弱い者を狙うなんて…」

「抵抗する力もねぇからな…。俺たちでそいつをぶっ殺せば解決だろ?」

「口悪いよ朝陽…」「やる事は同じだろうが」「…まあね」


野原道をしばらく歩いていると、城下町のような通りに行きつく。道中は人々で賑わっていた。入口付近の看板を見るうらら。

「ここが、鬼呼町みたいだね。この先にお城があるみたい」

「城なら分かるぞ!あのでっかい建物だろ!?」

「うん。間違っては無いけど、大分アバウトだね…。大抵、町長っていうのはお城とかに住んでると思うから、行ってみよう」

2人は城下町を通り、城へ向かった。


5分程進むと、大きな鬼が模られた扉の付いた二階建ての城が現れる。

両脇には甲冑を着た門番が立っていた。

「通行人よ、町長に何か用か?」

朝陽が答える。

「あぁ。子供をさらう獣魔について、詳しく聞きたい」

「ほう…。狩人か」「まぁ、そんな所だ。門を開けてくれよ」

「お前は異様な匂いがする。信用できない。そこの女ならば、通行を許そう」

「何だと…?どうしたら信用してくれるんだぁ?おい…」

うららが、朝陽の腕を掴んで止める。

「朝陽…。ここは私だけで行くよ。出だしから揉めるのは嫌だし」

「そ…そうか。おいデカブツ、命拾いしたな」

門番を煽りながら去る朝陽。門番は表情一つ変えず、うららのみを通した。


「ち…。俺だって好きでこんな匂いになったわけじゃねぇよ…」

朝陽は城の近くの木陰に腰を降ろして、うららの帰りを待った。


門番の一人に連れられ、ロウソクが均等に配置してある廊下を進むと、大きな広間に出る。

「ここでお待ちください」

門番は、更に奥の小さな扉をノックすると。向こう側から中年男性の声が聞こえる。

「入りなさい」「失礼します」

門番も部屋へ入り、3分程経過した。事情を説明しているのだろうか。


うららが広間に飾ってある装飾品を眺めなら待っていると、貴族風の恰好をした中年男性と先ほどの門番が歩いてきた。

「待たせてすまないね。門番から聞いたんだが、お嬢さんは狩人なのかい?」

「はい。まだ駆け出しですけど」

「中へ入ってくれ」


豪華なソファーが置かれた来客用の部屋に案内され、テーブルにはコーヒーが出される。

「申し遅れたが、私はこの鬼呼町の長 実原 源治だ」「鴨江うららです」

「どこまで知っているのかね?」

「子供をさらう獣魔がこの町に出没しているという事しか…」

「こんな田舎町の事をよく調べたものだ。警察には要請しているんだが、なにせ小さな町で起きたよくある事件だ。彼らはすぐには動いてくれない」

「そうなんですか…」

「前置きはこのくらいにしておいて、本題に入ろうか。あれは2年前だった

。鬼呼町には孤児院があってね。親を亡くした子供たちが通っていたんだよ。

そんなある日の事だった…。情報を嗅ぎつけた獣魔が、町に来て孤児院を襲ったんだ。誘拐された子供の数は32人。腕利きの兵士に奪還を試みてもらったが、帰ってきた者はただ一人だった。瀕死の重傷を負って、入院している…。その兵士に聞けば、場所が分かるはずだよ。ずっと君のような狩人が通りかかるのを待っていたのだ。どうか子供たちを助けてやってくれ」

「分かりました。最善を尽くします!」


町長の話が終わり、朝陽と合流するうらら。

「よぉ、どうだった?」「子喰獣魔は、孤児院を狙ったみたい」

「孤児院って…子供が通う学校?」「うん。親がいない子がね」

「怖かっただろうな…。必ず子喰獣魔を仕留めるぞ」

「もちろん!まずは病院に行って情報を掴むよ」「病院?」

「子喰獣魔と戦った兵士が入院しているんだって」「勇敢だな」


鬼呼町病院へ向かった…


その頃、鬼呼町付近の森で獣魔を狩る者がいた…

大剣を振るうその者は、以前盃村で朝陽たちと共闘した剣士 雨潮だった。

「はぁ…はぁ…。こいつじゃねぇ…いつになったらあの赤い獣魔に会えるんだ…くそぉぉぉ!!」

雨潮は、恋人をさらった赤い獣魔を追っているのだ。


「威勢がいいねぇ」

その時、木陰のほうから女性の声が聞こえる。

「あぁ?誰だてめぇ」「口の聞き方には気を付けたほうがいいよ」

影から出てきたのは、真っ赤な軍服を着た同い年くらいの女だった。黒髪で左側から三つ編みを垂らしていた。

「軍の人間か?」

「そんな所だね。ねぇ君、半分獣魔の青年を知らないかな?この付近にいると思うんだけど」

「知るかよ」「だよね。もし心当たりがあったら連絡ちょうだい」

女は名刺のような紙きれを渡す。雨潮は、軍の人間なら追っている獣魔を知っているのではと思い、聞いてみた。

「おい女。赤い獣魔を知ってるか?」

「赤い…獣魔…?赤魔せきまの事かな?」「知ってるのか」

「当たり前でしょ。ウチは獣魔討伐班"イコライズ"だよ?」

「そんな事はどうでもいい。その赤魔はどこにいやがるんだ?あぁ!?」

雨潮が詰め寄るように、女の胸倉を掴もうとしたが、次の瞬間には背後に回られていた。{こいつ…早い…}

「君の態度は鼻に着くね。そうだな。ウチらが追ってる青年の情報を持ってくれば、教えてあげるよ」

「ちっ…軍人ってのは嫌な奴しかいないのかい?」「かもね」

女は一瞬で姿を消した。

「半分獣魔の青年だと…?知るかよ…。しかしまぁ…手がかりが掴めねぇまま動くよりは…ましか…」

名刺には、イコライズ 赤木有来あかぎ ゆうらと書かれていた。


一方、鬼呼町病院に入院している帰還兵の病室を訪ねた朝陽とうららは…

顔まで包帯が巻かれた帰還兵が、2人に子食獣魔について話していた。

「ここから北西に5k程進むと崖が見える。そこを下って行けば奴らのアジトに辿り着くよ」

「奴ら…ってことは複数いるんですか?」

「あぁ。どうやら、子供の居場所を確認する偵察役と誘拐する実行役がいる。そして、子供を預かるボスもな。そうだ…奴らの唾液には注意しろ」

「唾液…?」

「直接浴びたら残るのは骨だけだ。かすっただけでも皮膚を溶かす。俺みたいになりたくなければ用心することだな。…どうか、子供たちを救ってくれ…」

帰還兵は、涙を流しながら朝陽たちに思いを託した。


病院を後に外へ出ると、既に日が落ちていた。そこへ、護衛を連れた町長 実原がやってくる。

「話は聞いたようだな」「あぁ、これからそいつぶっ倒しに行ってくるぜ」

朝陽が答えると、危険を感じたのか護衛が前に出る。

「下がれ」「ち…。またそれかよ」

「すまんな少年よ。私は心配症でね」

「別にいいけどよ。子食を倒した後はもてなせよ」

朝陽の態度に呆れるうらら。

「朝陽…失礼だよ。少しは礼儀を学びな」「…分かったよ」

「もちろん、子食獣魔を倒した暁には褒美をやるさ。だが、今日の所は泊まっていけ。暗闇では奴らの方が有利だからな。すぐそこの宿を手配した。好きに使うといい」


実原の助言通り、今日は休むことにした朝陽とうららは宿へ向かった。


思いの外美味しかった。

「うま…。しかし…気味の悪い夢だったな…」

そこへうららが帰って来る。

「ご飯来たんだね…って先食べてるし…」

「おう。悪いな。お前が言ってた魚牛、めっちゃ上手いぞ!!」

「良かったね。ゆっくり休めた?」

「あぁ。大分回復したよ」


程なくして、夕食を終えた2人。うららは先にベットに入り眠る。

朝陽は先ほどの夢が気になり、メモ書きを残して1人入浴城へ向かった。


露天風呂に浸かりながら夢の事を考える。

{ジジィを襲ったあの獣魔を食い殺した時は、不味すぎて吐いたよな…。何は美味しいと思えてくるのか…。人間の肉も…}



やがて夜が明け、装備を整える朝陽とうららは宿屋を後にして鬼呼町を出た。

帰還兵から受け取った子食獣魔の居場所が記されている地図を片手に森を進む。

「朝陽大丈夫?」「え?」「昨日うなされてた」

「あぁ…悪い夢を見たんだ…。人間を食ってる夢だった…」

朝陽の表情が少し暗くなる。

「大丈夫だよ。朝陽はそんな事しないって」

「ありがとう。だと…いいんだけどな」


鬼呼町 実原が住む城の前に軍服を着た人物が2人立っていた。

一人は、雨潮と接触していたイコライズの赤木有来だ。門番と話していた。

「半分獣魔の青年?あぁ…そういえば昨日、女性を連れて訪ねて来たな」

「そうか。今どこにいる?」

「さぁな。ところで軍人さん。応援要請に来たつもりなら足りているぞ。あんたが探している青年が行ってくれたからな」

「そんな事は聞いていない。どこにいるか…と聞いているんだよ」

門番の態度が気に障ったのか、睨みつける赤木。彼女の殺気を感じ取ったのか、門番は少し怯えながら答える。

「あ…。三影崖…北西に5km進んだ洞窟へ向かった」「どうも」

赤木は部下を連れて去って行った。


情人よりは戦闘の経験を積んでいる門番が、身の危険を感じた"イコライズ 赤木"とは何者なのか…


地図に習い三影崖に向かう朝陽とうららは…

渓谷を進むと、滝が見えてきた。地図には、滝の横の穴から降りて崖へ向かうように記されている。蔦が茂った穴を降りると、薄暗い洞窟に行き当たる。

足元を気にしつつ進む。殺気を感じた朝陽は刀を抜いた!

次の瞬間、蜘蛛のような形をした獣魔が襲いかかって来たのだ。毒牙と刀が衝突して火花が散る。刀を振り払い一度距離を取る朝陽。


刀の刃を伝って紫色の液体が垂れ、落ちた所が酸化した。

{地面が溶けた…?あの兵士が言ってた唾液ってこの事か…!!}

「うらら!奴の毒牙に気を付けろ!!」

「う…うん!」

{うえ…また虫だよ…}

うららは虫が大の苦手なのだ。しかし逃げるわけにも行かず朝陽の助言を聞きつつ、背中に装備していたロッドを広げて構える。

蜘蛛獣魔は毒牙を剥き出しにしてうららに飛びかかる!

{尖った二本の歯から毒が出てくるんだ…。それなら…!!}飛んでくる前足にロッドを叩き付けて、攻撃を防ぎつつ、尖った歯に狙いを定める。

{やっぱり気持ち悪!!}

初級討伐時と同じように目を瞑って攻撃を仕掛ける。

「精神結集!結晶砕き!!!!」

精神を集めたロッドで思い切り歯を砕き割る!

朝陽も空かさず動き、猛スピードでもう一本の歯を斬り落とした。

「グォオオオオオオオ!!!!」

激しい痛みに悲鳴を上げ、洞窟の穴から逃げてしまう蜘蛛獣魔。

「逃がすかよ!」

朝陽は後を追って穴に入る。


「た…倒したの?あれ…?」

ゆっくりと目を開くうららだが、蜘蛛獣魔と朝陽の姿は無かった。

穴に入ると狭い道が続いていた。走っていると、ぽっかりと空いた部分から日差しが差し込んでいた。出口だろうか。蜘蛛獣魔に追いつき、ほぼ同時に穴を抜けると、そこは地上から4m程の高さだった。空中で必殺技を放つ朝陽。


「閃光拡線!雷ぃぃっ!!!」

刀を振り下ろすと同時に、雷が蜘蛛獣魔に落ちる!!

凄まじい地響きが起こり、少し離れていた所を歩いていた雨潮が気付く。

「今のは…?まさか、あいつか…?」

ムカデ型獣魔を倒すために共闘した雨潮は、朝陽の技を知っているのだ。


雷が直撃した蜘蛛獣魔は、黒焦げになって落下した。

着地に成功した朝陽は、再び気を引き締めて刀を握る。着地した所は運悪く、子食い獣魔の住処だったのだ。幸せそうな顔をして、子供を頬張っていた。

うららも、朝陽の隣に着地する。

「こいつらが…」「そのようだぜ。早速子供を食ってやがる…!」


味方の断末魔を見た2匹の子食獣魔は怒り、叫ぶ

「くるぞ!!」「うん!」

トサカが生えた子食獣魔は朝陽、頭部が銀色に輝く子食獣魔はうららを狙って飛びかかる!2人は其々の獣魔を引き付けて、つば競り合った。


一方、半分獣魔の青年を探すイコライズの赤木と部下の下田も近くの渓谷を歩いていた。

「もう近いですよ」「流石だな。私は何も感じないよ…」

女性の上司に褒められ、頬を赤くする下田。

赤木は草木の間から、朝陽と獣魔のつば競り合いを目撃する。

「獣魔狩か…?下田、あそこにいる青年の匂いは分かるかい?」

「あ!あの子ですよ…。俺たちが追っている青年は」

「何…?半獣魔の匂いか?」「はい。人間と獣魔の中間のような匂いです」

「そうかい。…さて…と。まとめて退治と行きますか」

赤木は、腰に装備していたレイピアを抜いて、朝陽の方へ向かう。

下田も剣を抜いて後に続いた。


キンッ!キン!!朝陽とトサカ獣魔の激しい攻防が続いていた。

スピードに乗った刀激を仕掛けるが、トサカ獣魔の反応速度が異常に早い。

{くそ!…攻撃が通らない!それにこいつの腕…金属みたいに硬い頭部…}

そう、トサカ獣魔の両腕は銀色に輝く金属のように固い皮膚で覆われていたのだ。


うららが戦っている獣魔は、トサカ獣魔とは異なり頭部だけが硬い皮膚に覆われていた為、ボディにロッド攻撃の連打を浴びる。

{ダメージは追ってるみたいだけど。致命傷を与えるには、頭部の攻撃が効果的か…。でもあの銀色の皮膚…どうみても硬いよね…。ま、やってみよう!}

うららは、猛攻を避けながら飛び上がり、頭部に結晶砕を放つ!

「結晶砕き!!!」

凄まじい音が鳴り響く。なんと、結晶砕きでも通用しない硬度だった。

反動で両腕が痺れるうらら。

{く…腕が…}

そんなうららを見逃すはずもなく、殴り飛ばす。

「うらら!!」

心配する朝陽だったが、トサカ獣魔の猛攻を防ぐのがやっとだった。


擦り傷を負いながらもなんとか立ち上がろうとするうららだったが、獣魔は銀色の頭部を向けて突進してきていた。

{私…こんな所で終わるの…?}

避ける体力が残っていなかったため、死を覚悟して強く目を瞑る。


キィィィィィィンッ!!!!!!

甲高い衝突音が響いた。ゆっくりと目を開くと、真っ赤な軍服を着た女性がレイピアで突進を防いでいたのだ!


突進を防いだのは赤木だった!

レイピアを強く握り、必殺技を放つ!!

「錆進連鎖 赤錆!!!(しょうしんれんさ あかさび)」

レイピアの刃が錆びると同時に獣魔の銀色の頭部も錆びる。

「グォオオ?」

自身の身に何が起きたのかも分からず混乱する獣魔。

赤木はレイピアを錆びた頭部に突き刺す!!ピキ!パリィーーン!!

錆びた部分が砕け脳に突き刺さり、絶命した。


下田はうららに手を貸す。

「大丈夫ですか?」「は…はい」

トサカ獣魔と交戦しつつ、赤木の技を見た朝陽は驚愕する。

{なんだあの赤服の女…}

戦闘中の朝陽も飛んでくる鋼鉄の腕を踏み台にして必殺技を放つ!

「雷ッ!!!!」

隙を突いた一撃だったが、やはり防がれてしまう。

{く…!どんなに早く動いても防がれる…!ん!?}

目を凝らして見ると、鉄腕には刀撃の傷が付いていた。

{防いではいるが、ダメージを負っているのか…?なら問題は俺の攻撃力だ…。考えろ…。やった事がない事を…!}

雷を刃先に落として斬る技「雷」を思い返す。

{いい事思いついたぜ…}

再び距離を縮めて隙を見て雷を放つ!!

「雷っ!!!」

刃に向かって落ちてくる雷にタイミングを合わせて動き、自分の身体に浴びせる。強烈な痺れが身体を襲う!

「ぐっ!!!こいつは痺れるな!!行くぜ、新技!!」

赤木、下田、うららh少し離れた位置から朝陽を見守る。

「朝陽…」

自ら雷に打たれる朝陽を見て心配するうらら。

赤木も彼の行動には驚いていた。

{雷を帯びて攻撃するとはね…。死ぬぞ青年}


「閃光拡線…。落雷!!!」

雷を帯びた朝陽の凄まじい刀撃が、トサカ獣魔の腕を砕き、生身の身体に直撃した!!トサカ獣魔は血を拭いて絶命した。

自らの身体に雷を落とした事で、体力が消耗して気を失ってしまう。


うららが朝陽に駆け寄る。

「朝陽!」

赤木と下田も2人に歩み寄る。赤木が朝陽の脈を測る。

「気を失っただけだ。町の病院へ連れて行くぞ」



応急処置が終わり、程なくして目を覚ます朝陽。横にはうららが座っていた。

「う…うらら…?」「だ、大丈夫?」

「あぁ。気を失ってたのか…。子食い獣魔は!?」

「朝陽が倒したんだよ」「そうか…。子供たちは無事か?」

「うん。軍人さんたちが保護してたから大丈夫だよ」

「そういや、赤服のやつらに助けられたんだっけ…」


赤木がやってくる。

「やぁ。生きてるかい?」「あ…あんた」

うららは、助けてもらったお礼を言う。

「あの…さっきはありがとうございました」

「獣魔から人間を守るのが私たちの役目だからね。私は赤木有来だ。さっきまで一緒にいた男が部下の下田」

「鴨江うららです」「神木朝陽だ」

「よろしく。ところで神木青年。君に聞きたい事があるんだけど。今、大丈夫かな?」「?」

「半獣魔の人間を探していたんだが、どうやら君がそうみたいだ」

「だから…何だよ?」

赤木はうららの隣に腰掛ける。


「我々"イコライズ"は獣魔を殲滅する為に編成された組織だ。半獣魔である君も対象になる」

「そんな!朝陽は人を襲う獣魔とは違います!」

赤木の発言に反発するうらら。

「奴らの血が流れているだけでも充分だよ。ま、今回は見逃してあげるけどね」「え…?」

「私も手負いを殺めるほど悪魔ではないからね。君が万全の時に殺しに来るよ。だけど、私と同じイコライズの"鷲御 電次"(わしお でんじ)には気を付けな。奴は躊躇なく殺すよ。それじゃあ元気で」

赤木は朝陽の肩を叩いて、三つ編みを揺らして去って行った。

「イコライズ…か…」

赤木の力を知っていた朝陽とうららは冷や汗をかく。

「赤木さん…味方だと思ってたのにな…」

「手当てもしてくれたみたいだしな。来ればいいさ。相手になってやる…」

「取り敢えず実原さんに獣魔討伐の報告してくるね」

「あぁ。頼むぜ」


うららは町長のいる古城へ向かった。

依頼を受けた部屋と同じ所で待っていると、実原がやってくる。

「いやぁお見事だよ!本当にありがとう」

「いえ…。全員を救う事はできませんでした…」

「先に旅立った子たちも、君らには感謝しているはずだ。本当によくやってくれた。それでお返しなんだが…」

実原は、引換券のような紙を二枚渡した。

「これは?」「武器屋のサービス剣だ。店主に渡せば何でもしてくれる」

「ありがとうございます!もっと強くなって困っている人をもっともっと助けます!」

「実際に存在するかは分からんが、この町を出て西に2k程進むと個人経営で武器を扱っている店があるそうだ。行ってみるといいかもしれんな。それと、連れの青年にもお礼を言っておいてくれ」

「はい!」

うららは、深々とお辞儀をして城を去る。


木陰で待つ朝陽と合流したうららは、報酬の引換券を見せる。

「へぇ~。これで武器が買えるのか!」

「買うだけじゃなくて、強化にも使えるみたい。西の方に個人経営の武器屋があるんだって。行ってみない?」

「そうだな。今回の獣魔はかなり硬かったから、見てもらったほうがいいかもな。次の目的地に行く前に寄ってみよう」「うん!」


助けた子供たちと、町長に見送られて鬼呼町を後にする2人は、武器屋がある西へ向かうのだった。






続く…

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