第283話 天空ヲ穿ツ雷光
「人の身でありながら、これほどの力を……!? しかし、憎悪の果てに得た我が力には遠く及ばんッ!!」
「そんな事はどうでもいい。俺は自分の戦いをするだけだッ!!!!」
深淵の斬撃と
闇の波動と飛翔する氷竜。
二対四枚の竜翼と禍々しさを増した悪魔の翼。
再び空へ舞い上がった俺達は、互いに持てる力を尽くして何度も斬り結ぶ。
冒険者だのダンジョンだのと言っていた頃とは比べるまでもなく、遥かに別次元の闘い。超速空中戦闘。マルコシアスのみに照準を合わせられない為か、下からの援護はない。ただ一人、漆黒の空を舞う。
「閣下!」
「お前は……!」
そんな時、闇の光条と共に戦場に現れる一つの影。マルコシアスを警戒しつつ目を向ければ、レスターがアームを魔力砲としながら接近して来ている。
「貴様風情が我が戦場を踏み荒らすなど、何たる
眼前で闇の砲撃が煌めく。だが、それは俺に向けられたものではない。巨大な光の束が味方であるはずのレスターを強襲した。
「ぐ……っ!?」
予測していた行動だったのか、レスターは砲撃を回避。行き場を失った闇の光が大きな山を吹き飛し、帝都近郊の地形を変える。
「何故、ここに来た? 今すぐ申してみよ。下らぬ理由であれば、今すぐその頭蓋を砕かざるを得ないが……」
「はっ! 申し上げます! 既に戦況は終盤……現状を鑑みて、この戦闘の早期終結が帝都制圧より重要だと判断し、末席に加えて頂きたく馳せ参じた次第です」
「ほう……やはり我の戦場に土足で踏み入って来るという事でいいのだな?」
「お言葉ですが……その
「貴様に与えた指令はどうするつもりなのだ?」
「この者達を滅せば、有象無象が残るのみ。ならば、後はどうにでもなりましょう?」
「――ふっ、好きにせよ。ただし、我がこの童を討った時にまだ
「御意」
レスターは俺の変化に伴って進軍を取り止め、急速反転して戻って来た。こちらとしては最悪の援軍だが、帝都は一先ずの危機を脱したと言っていいだろう。尤も、状況が良くなったのかと言われれば、別問題ではあるが――。
マルコシアスとレスター、新たな境地に目覚めた俺自身――。いよいよを以ての最終決戦と相成ろうとしていた。
「――好き勝手言い合ってるとこ悪いけど、私達も忘れないで!!」
「な……ッ!? ルインさんッ!?」
そんな時、眩い閃光と共に金色の戦乙女が天空に姿を現す。飛んで来た――いや、跳んで来たというべきか。初めて目の当たりにした現象には少々驚かされたが、元々ルインさんは背の光輪から推進力を得て高速機動戦を行っていたし、“
「魔王様の御膳に……
俺以外は自らが殲滅する。
即断即決。レスターは会合の内容に沿うかの様に躍動。ルインさんにアームの刃を差し向ける。
この状況化においても冷静な判断。思考の速さ。奴の強さと忠誠心は本物だ。
「私にとっては魔王様も何もないんだけど……」
「何、ッ……!?」
しかし、ルインさんは正面から相対するのが初見である一撃を
「アーク君以外がどうこうって言ってたけど、私の用事はあっちの魔王様なの! 貴方の相手なんて、こっちから願い下げなんだけど……なッ!!!!」
「な……ぐっ、おおおおぉぉぉ――ッッッ!!!!!!」
零距離での近接格闘――それも達人同士の睨み合いともなれば、一瞬の硬直が命取り。そして、ルインさんはその一瞬を見逃さない。掴んだアームごとレスターを振り回し、眼下の荒野目掛けて全力で放り投げた。
「アーク君ッ!」
「……っ!!」
衝撃的な光景を目の当たりにした当の俺も少しばかり呆けていたが、ルインさんの声によって覚醒。双翅の右翼を防御形態へ変化させ、推力を上げながら滞空。衝撃に備える。
直後、ルインさんは双翅を蹴り飛ばして二次加速。一気にマルコシアスとの距離を詰め、青龍偃月刀を振り上げる。
「“青龍雷轟斬”――ッッ!!!!!!」
「“ディスペアーインフェルノ”――ッ!!!!」
雷轟と深淵――再びの交錯。
先程は一瞬で喪われた金色の光。しかし、今回は消える事はない。いや、雷轟の
この異常なまでの出力上昇と別次元の領域へと昇華した
これがルインさんの――“
今の彼女自身の姿こそが、限界を超えた更にその先へと至ったという証明だった。
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