第245話 黒雷天燐双破斬
紫天ノ堕女神と巨竜が漆黒の空を疾駆する。
「私が鎧を引き剥がす! 後は任せる!」
先行したのは、言うまでもなくレリティスの背に立つセラス。次は自分の番とばかりに
「“
セラスの内に留められた魔力が紫の
「なッ!? セラスが……」
「“
そんなセラスの背後を飛ぶ形となっている俺達だったが、まさか過ぎる展開に驚きを隠しきれない。何故かと言えば、こちらの切り札である“
確かに開戦前、担い手を増やす為に主戦力達が“
現にブレーヴやリゲラ、アリシア、エリル辺りに関しては程度の差はあれ、新たな境地の扉の前に立つぐらいまでは進捗が進んでおり、セラスもその一人だった。だから一瞬の火力を高める事に“
しかし、目の前のセラスは、これまで見てきた三人とそれほど遜色ない精度でその切り札を発動して使いこなしている。それ故の驚きだった。
「俺達に悟られない様に隠し玉を用意していたとは……」
「セラスも大戦を見据えて、前に進み続けていたって事だね」
一方、俺達が知っている固定観念を取り除いて考えてみれば、セラスが“
そもそもセラスの戦闘能力が現在“
もう一つ、人間の最終奥義を相克魔族であるセラスが使えるのか――という驚きもあるが、これに関しての説明は、“俺が居るから”――の一言で済んでしまうだろう。というのも、現状の俺は人間でありながら、魔族の最終奥義である“
つまり魔力運用技術に限定すれば、種族間における隔絶した差は存在しないという事。そこにあるのは属性の差異と、出来るか出来ないかという技術練度だけだ。
そして、目の前のセラスは俺と真逆の状態――魔族でありながら人間の最終奥義足る“
元々の居場所を追放され、世界から弾き出されようとも双方の種族の為に戦う。その果てに待っているのが自らにとっての地獄の未来なのだとしても――そういう意味では、確かに俺とセラスは立場や思想が似通っているのかもしれない。皆の言う事も一理あったのだろう。
「神話の時代より存在する邪竜――生ける伝説が相手ならば不足なし!」
「■■■!!!!」
そんな俺達の驚きとは裏腹にセラスとレリティスは紫の残光を残し、爆炎の檻から脱出しかけているファヴニールの前へと一気に躍り出た。既に彼女の
それ即ち、必殺の一撃――。
「黙示録の闇よ……覚悟の刃となって吹き荒べ! “アルカディアゲイザー”――ッ!!!!」
紫天を纏った
そして、一寸の迷いすら無き刺突。先ほど以上の巨大斬撃が放たれた。
「■■■……!?」
連続で繰り出された二重斬撃――
「これで決めるよ、アーク君!」
並んで飛ぶルインさんの言葉を受けて首を縦に振った瞬間、隣の彼女が金色の
「■、■■■■■■――!!!!!!」
未だ死せぬ邪竜の咆哮が轟いたかと思えば、奴の首から上が爆炎の檻から抜け出してしまう。その上、敵意を帯びたファヴニールの視線は、接近している俺達をしっかりと捉えていた。
打たれ強いの一言では済ませられない狂気的な生命力。最早驚愕を通り越して感嘆の念を抱いてしまう。同時に首から上がフリーになった事で、奴の脅威度はさっきまでよりも遥かに増していた。
「まだ動くのか……!? でも……!」
だが、ここで決めきれなければ勝機はない。故に為すべき事も変わらない。眼前で収束されていくブレスを前に、俺達は全ての魔力を開放する。
「閃光撃滅――ッ!」
闇黒を纏う
雷轟を纏う青龍偃月刀。
互いに得物を振り上げれば、形状の異なる二つの刃が突き合わされる。更にその中心で俺達の魔力が混ざり合い、爆発的に出力が増していく。これから放つのは、恐らく――共同戦線内でも最高火力に位置するであろう一撃。
今の俺達の全力――。
「■■■■■――!!!!」
対して眼前のファヴニールも、たった一撃で帝都を壊滅寸前まで陥れた
しかし、俺達は速度を上げ、最大加速で奴の一撃に突貫していく。一筋の光明を手繰り寄せる為に――。
「“
そして、過剰供給に等しい魔力を纏った得物を同時に差し向ければ、融合した闇雷の極大斬撃が顕現。天空を駆ける俺達は、眼前のブレスに向けて得物を振り抜いた。
その瞬刻――。
「――ッ!?」
俺とルインさんが放つ“
だが、それでも俺
「はあああああああぁぁぁ――ッッ!!!!!!」
激突の果て――自らの覚悟を束ねる様に全ての力を爆発させて闇纏う極大劫火を斬り裂いた。
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