クライスト学院で日々受ける、壮絶ないじめ体験を詳細に書き込んでいるところが凄い。鬼畜教師による犯罪的な仕打ちは、彼女の精神を崩壊させ、人間不信に陥らせる。家庭でも、実の母親、祖母からの厳しい躾をされ、心休まる場所を失っていく。戦後の混乱期、高度成長に差し掛かかり、人が人をモノと見なす、恐怖の場となっていた学校現場での描写は、共感できる読者も多いのではないだろうか。作者が、勇気をもって過去を振り返り、人生を書ききった傑作である。