第47話
古田は確かに、当時はよく息を切らしていた。一寸教室に来るのが遅くて走ってきたりすると、顔が赤くなり、ハァハァ言っていた。お腹も出ていた。だからか、心臓麻痺だったのではないだろうか? だけど、まさか死んでしまうだなんて…。 何と人間の運命とは、分からないものだろう…。 実は、私は今岡の事や樽辺の事もやはりそう思ったのだ。 高校を卒業してからは、私はアメリカに渡った。母が探して来た、日本のビジネススクールがアメリカ内で英語学校をしていた。そこに申し込めば一年間、留学できる。だから母がそこにもうし込んでくれた。 要はアメリカに住む為だ。私がどうしても向こうで生活がしたくてたまらなかったのだ。それでこの専門学校に入り、カリフォルニア州に行き、一年以内にTOEFLでかなり良い成績を取り、一年後には現地の大学に入った。数年通っていると、母がどうしても戻る様にとしつこく言ってきた。大学のお金が高いし、日本で働いてほしいからと言う理由で、仕方無く泣く泣く帰郷した。 そしてこの出来事は、私が日本に戻り、その時位だと思う。母と伊勢佐木町に当時あったデパートヘ買物に行って、色々と見ていた時だ。 その階には、階段付近に小さな部屋があり、ドアが無かった。その一角の部屋と言うかそのスペースには女性店員が数名いて、一生懸命に何かをラッピングしていた。プレゼント用の何かをだ。 私達がその階から階段で降りる時に、私は何気なくその、階段に近いスペースの中を見た。そして、非常に驚いた。 そこには今岡がいて、立って一生懸命に包装紙で何か箱を包んでいたのだ!! 最初はまさかと思って、もう一度しっかりと見た。間違い無くあの鬼畜だった。そしてそのデパートの制服を着て、その仕事をしていた…。 この時は、母に黙っていた。だが何故そんな所にいて、そんな事をしていたのだろう? その時はそう思った。私が伊藤冴子に会って話を聞くまでは、もっとうんと何年も後だから…。 この階には、時計だとか花瓶だとか、高級な食器だとか、クリスタル製品の置物や灰皿だとか、そうした物が色々とあった。 母がクリスタルや高級な食器等が好きだったから、買物に行ったついでに、たまに一緒にそうして見ていたのだ。 それで、この後に私達はこの鬼畜、今岡と対決をする事になる!鬼畜は学校をクビになっても、何も反省していなかった。やはり、鬼畜だ。当然と言えば当然なのだ。 鬼畜は、私達親子がいるのを次回発見する。それで、中から出て来た!!もう一人の古株の様な中年の女店員と共にだ。 その店員は母に声をかけた。 「あの、お客様、一寸よろしいでしょうか?」 私達は驚いた。 「何かしら?」 母が不審そうな顔をする。 忘れもしない!!私と母は、大小さまざまなクリスタルの花瓶や瓶やグラスや置物だとかがある箇所で、そうした物を愛でていたのだ。素敵だとか綺麗だとか言って。そしてこの時に、この店員が、今岡を後ろに従えて近寄って来たのだ。 「あの、そちらのお嬢様ですけど…。」 「はい、何か?」 「一寸、お荷物を調べても構わないでしょうか?」 「はい?!」 私と母は驚いて思わず互いに顔を見た。 「こちらの者が、お嬢様が、展示してある物をポケットに入れられたと申していますので。」 「一寸何を言ってるんですか?!」 母が怒りの声を出す。 今岡は私達に気付き、クビになった腹いせに私達親子に仕返しをしようとしたのだ!!
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