第44話

吉川、山田、結城は古田に何を言われても動じなかった。私には表立っては何かを言ったりしなくて大人しくはなった。だが、相変わらず憎憎しそいに私を見ていた。今迄よりは少し回数が減ったが。          この三匹は皆、少し歳が離れた兄がいたみたいだ。だからかもしれないが、要は甘やかされていてワガママだった。        私の母がよく私の従兄弟の女の子の事を言っていた。その子には6歳上に兄がいた。そして私よりも彼女は4歳下だった。     「ああして幾ら兄弟がいても、歳が離れていて、それが兄だと一人っ子と同じなんだよ。だから、わがままなんだよ。何も苦労してないし、両親が揃っていて、甘やかされるから。特に父親に。」と。          兄がいても歳が離れていたら、妹なんかと遊ばないし相手にしない。只の同居人になるだけだ。だから、兄弟がいないのとほぼ等しいと。                  勿論全てのそうした兄妹がそうではないだろうが、私の従兄弟を見ていても確かにそう言えた。                 だからか、この3匹も凄くワガママで自分本位だった。だから嫌いな私の事は、何も相手の事を考えず、只虐めたいし、犯罪になる事までを平気でやろうとした。だから平気で、特に理由がないのに辞めさせたがった。  勿論、もう大人だし中年の教師達の甘堂、今岡、樽辺もそうだったが!!だからきっと この鬼畜達に便乗したのももあったのだろう!                  古田に、3匹が言われていたのも一度耳にした。幾ら嫌いだからと、もし何か色々と小細工をしたりして退学にさせようとしても、じゃあなった相手はどうなるんだと。    それはその相手の人生を左右する、学校を退学になるだとか他校へ移るだとかは。そして自分達は卒業して、その人間の事等は忘れてしまうだろう。そうして新しく又自分の人生を続ける。新しい学校、大学や専門学校等へ行って。                だが、された人間はそのせいでずっと大変な思いをしなければならない。だから私や私の親が、そんな事になればそうなると。本当なら何でもなく普通に通い、卒業していたのにと。                  なのに、無責任に他人の人生を左右するかもしれない事をそうして色々と考えたり、したり、しようとするのかと。        それは、とんでもない事だし、逆に、もし やられたらどうだと。又、自分の親達も平気でいられるのかと。           高木だってお前達と同じ様に試験や面接を受けて入った、同じ立場なんだからと。又、高木の家族構成についても馬鹿にしたり汚いだとか言うが、自分達だって将来同じ様な事になる可能性だってあると。        高木の母親も、別にわざわざ母子家庭になったり、娘に父親が絶対にいない様な家庭環境にしようと思った訳ではないのだからと。 だからもうそんなに小さな子供ではないのだから、もっと理解して、大人にならなければいけないと話していた。         そんな事を言われたら、普通の人間なら確かにそうだと思うだろう。又、その時だけでもそうは思うだろう。だからもしかしたら、コイツラも少し位はそう思ったかもしれない?だが、そうして理解する人間と、しない人間がいる。               又、話の内容は分かったが、それでもその対象の者や生き物が嫌いで、何か感に触ると言う奴等もいるのだ!!          だからこの3匹も恐らくはそうだ。やはり私を嫌い、軽蔑したり汚いと思ったり、ヤキモチを焼いたり、何か不快な事がしたい、起きたら良いと思っていただろう。      だが、古田が又担任になってからは、私はその後は特に何も無く、結果、無事に卒業する事になる。               そして私が卒業すると直ぐに、古田から母へと電話があった。古田は、色々とあったが本当に無事に卒業ができて良かったと言って喜んでくれた。              母も凄く感謝をしていた。私が鬼畜達から虐められて、学校から無理矢理に締め出されて、追放されずにすんだ事に。      そして私はこの後、もう何年もしてから偶然に稲川瑠奈と会う。そしてもう一人はもっと後なのだか、伊藤冴子と言うやはり同じクラスの同級生だ。             伊藤とは割とクラスの中では口をきいた方だ。シンちゃんが、一年生の時に私の事をああだこうだと尾ひれを付けて廻りの生徒に話していた事から、私とは皆が殆ど話さなくなったり距離を置く様になり、学年が変わり、甘堂のクラスになると、甘堂に異常な程に嫌われて虐められていた私は余計そうだった。3年生になり、又古田のクラスになってもこれは余り変わらなかった。        だがこの伊藤冴子は割と裕福な家の子供で、年がかなり離れた兄や姉が3人いた。彼女は苦労知らずだし、脳天気な性格だった。だから私の事も煙たがらなかった。      体格も堂々として、性格を物語っていたかもしれない。それはある時、日本史の爺さん教師の田川先生にこう言われた事が印象的だったし、よく覚えている…。        「伊藤。」               「はい。」               「お前、体重何キロある?」       この時は流石に、困って黙っていた。今ならセクハラだろう?教師が女生徒にそんな事を授業中に聞くだなんて。         すると田川はこう言った。        「お前、60キロはあるだろ?」     「…ありません!!」          「いや、あるだろう?絶対にある筈だ。じゃあもう良いよ、座って。」         伊藤が座ると、田川が言った。      「伊藤、悪い、悪い!!だけど、昔の年貢の米一俵はな、大体60キロ位なんだよ。米俵の1つがな。だから、大体伊藤位の重さが 1つだったんだ。だから、みんなに分かり安いから、今、伊藤を例に出したんだよ。」で、この時は、クラスの皆が笑って和んだが、伊藤冴子だけが嫌な顔をしてうつむいていた…。               で、とにかくこの伊藤から聞いた話なのだが、私は本当に知らない事ばかりだった。 何故彼女がそんなに詳しく知っていたのか分からない。だが、真実だろう。      まず、本当に驚いたのは、古田の事だ。  いや、古田の前に、私が卒業した直後に、古田達四人衆は校長に呼ばれた。彼等は一人ずつ校長室に入って行ったそうだ。     何故か?それは、私が無事に卒業して、鬼畜達に無理矢理に辞めさせられなかったり、雄の鬼畜の樽辺に、性的な餌食にされなくて済んだからだ。              私が卒業してから、古田達は鬼畜達の今迄の悪行を校長や副校長に暴露すべく、まず古田が矢野先生と相談した。         あの子が無事に卒業出来たのだから、時は来た、と、矢野先生は校長宛に手紙を出したのだ。出してくれたのだ、全てをしたためて。そして校長は驚愕した!!直ぐに、副校長や田川の様な古株の爺さん教師を呼んで相談をした。矢野先生からの手紙を皆に読ませて。皆、他の古株達も驚愕して、外部に漏れたら大変だと言う事になった。        それでまず、守ってくれた他の四人の古田達からも話を聞いて確認しよう、という事に なったのだ。   

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