第37話

鬼畜達は、中学の時と高校の時とでは感覚が違うから、又京都に行った方が良いとしつこく言った。               母は言った。自分はそうは思わないし、又 もしそれが本当なら、どうしてもそこまで行かなければいけない所なら、そんなのは後から自分が連れて行くからかまわないと。  それから、そんな所に一緒に行かせたら、そこに泊まる訳だから、そこで何があっても拘束されていて逃げられない、帰って来られないからと言った。            ああして年中残されていて、なら今度は一晩中交代で文句を言われて、殆ど寝かさないで、そして朝には、疲れていても無理やりにたたき起こして見学に引っ張り回されたら大変だからと言った。           食事の時にも、皆が美味しい物を食べているのに食べさせないで、ああした子だから日本の料理や、刺し身だとかの生物は食べられないから、食べたらお腹を壊すからと旅館側に嘘をついて、娘の分は自分達で分けて、娘には食パンに牛乳だとかを出させて、それで一人だけがそんな物を食べさせられたら可哀想だからと言った。            今岡達は怒った。だが母は言った。どうしてしないと分かるのだと。         人のうちの子供を職員室に、昼休みに呼び付けて一時間もずっと文句を言って食事もさせなかったり、トイレに行きたがって我慢ができないと言っているのに絶対に行かせないで、どうしてもしたいならそこにしゃがんでしろと言って、他の教師が見かねて行く様に言ってそれでやっと行けたりだとか、自分の手先みたいな生徒達を使っては追いかけ回したりして無理矢理に職員室に引っ張って行ったり、その子達と一緒になって3回廻ってワンと言わせたり、もう一人の男教師と共謀して、教室に閉じ込めてドアに鍵を閉めて中で追いかけ回されて逃げまくって、他の教師がそれを見つけて助けてくれなければとんでもない事になっていた等をされているのだからと。                  そして、もう二度と放課後に職員室に残して一時間も二時間も説教をしないでくれ、本人は何故呼ばれているのか丸で分からないし、聞いても教えてくれないと言っているからと、何度追及してもそう答えているからと言った。そして、只自分が混血だから、きっと外国人や外国人の顔が嫌いだからだそうしているんだと言っているからと。      そして、あの黄色いワーゲンの男の話もした。そんな事があったのだから、もう二度とあんな時間に帰る様なことが無い様に、とにかく何か注意や説教がしたいなら、自分に言ってくれたら自分が幾らでもきつく叱るからと言った。               勿論、食事もちゃんと他の子達と同じ様に、持参した弁当を食べられる様にして、トイレにも普通に行ける様にして、行かせないなんて事が無い様にと言った。        くれぐれも、遅く迄学校に残さない様に。 放課後に残さないし、昼休みにも呼びつけない様にしてほしい。           娘は外国人の血が入っていて目立つのだから、だからそうやって変な男に目を付けられて、そんな事になるのだからと言った。  もしそれでもまだ呼び付けて、帰りが遅くなり、本当に何かあれば、その時には絶対にあなた方を許さないから、どんな所にでも相談して、なんとしてでも必ず仕返しをするからと言った。               又、樽辺の事も、そうして娘に対して悪意がある、凄く恐くて嫌な教師なのだから、その人にもそう伝えておく様にと言った。   それから、父親の事もしつこくその人に聞かれたそうだか、そんな事は何も関係ないのだから聞かれる必要は無いと。       今迄何処の学校でも、どんな担任でも教師でも、父親の事など聞かれた事は一度も無い。だから只の興味で聞く必要は無いし、しかもいないと何度も言ってるのに、いないなら産まれてくる筈がないなんて言って責めたが、その方も子供じゃないのだからそんな事は分かる筈だと。              昔から日本には妾だとか愛人だとか、大奥だとか源氏物語だとかが色々あって、だから必ずその同じ家に住んでいなくても、結婚をしていなくても、子供なんて産まれるという事を知らない筈が無い‼、と言った。    だから娘は嘘なんて言っていないし、自分は結婚をしてないし一度も一緒に娘の父親と生活した事が無い。            娘は私生児だから、普通の子の様に父親に抱っこされたり、一緒に遊んだり、何処かへ連れて行ってもらった事等は一度もない。  写真でしか知らないし、だから趣味が何だとか何の食べ物が好きだとか身長は何センチだとか、その他色々と、何にも知らない。  いないから当たり前だ。だからそんな事を言って責められるのも酷いし、迷惑だと言った。                  だが、甘堂は私が色々と嘘をついていたと言った。それは、叔母がこの学校の卒業生だとか、私がインターナショナルスクールに通っていたとか、先祖に戦国武将がいたと言った事柄だ。                私が以前、庭隅先生と話していた事に付いては、何を話していたのかと聞かれた。仕方無いから教えた。             最初は、何も関係無いくせに聞くので教えなかったが、あの日にすぐ呼ばれて詰問されて、言うまで帰さないと言われて仕方無いから話した。そして甘堂は、叔母の年齢だとか下の名前をしつこく聞いた。だから嫌だったが、教えた。              甘堂は、それで卒業生名簿で調べたのだ!!そして叔母の名前が無いと母に言った。だから、そんな嘘を言って庭隅に取り入ろうとしたと言った。              だが、残念ながら本当の事だ。      母は言った。卒業したのだから載っていない筈がないと。              甘堂は、母までが私に合わせて嘘を言っている、と凄く得意気だったそうだ。     母は聞いた。本当に調べたのかと。    甘堂はそうだと言った。         母は、どの苗字で調べたのかと聞いて、甘堂は、勿論高木だと答えた。        だから母は言った。           「違いますよ。苗字は黒田で、黒田優子なら載っている筈ですよ。」          そして説明した。自分の両親は離婚したと。だから自分達は昔は黒田姓だったと。   甘堂は、そんなのは嘘だと言い張った。そんな、昔の人間が簡単に離婚などしないと。ある筈が無い‼と断言した。        それで母は言った。そんな事は無いし、昔でもあると。               そして聞いた。             「どうして私達がそんな嘘をつかないといけないんですか?私達は、自分の家族の事なので、よく分かっています。なのに、何故違うだなんて決めつけるんでしょうか?先生方の方が私達よりもうちの事情を知っているだなんて、そんな事があるんでしょうか?」  そして説明した。昔の人間でも離婚をする場合も時にはあるし、現に自分の両親はそうだ。それは、自分の母親が凄くわがままで気が強い所があり、終戦後に多くの日本人男性の様に、父親も失業した。        それまでは会社で割と良い地位だったが、そうして職を無くして、殆ど家にいる様になった。それで祖母が、早く定職を探せとかああだこうだ言って当たり、毎日大喧嘩をする様になった。               それで、今迄はお酒を飲まなかったのが、祖父はお酒を買って飲み始めた。祖母はそれに付いても凄く文句を言い、結果祖父は家を出て、何処かへ行ってしまった。      それでも最初の頃にはたまに帰って来ていた。子供が四人もいるのだから。     だが、やはり上手くいかない。      だから、結局離婚をしてしまった。祖母がそれを強く願ったらしいと。        祖父はその後、お酒で肝硬変になり、入院して、そのまま亡くなったそうだ。     祖母は、祖父が入院しても、一度も見舞いに行かず、自分達子供も一度も連れて行かず、何処の病院かも知らせなかった。(なんとも哀れな祖父だ…。)            そして母は、自分の妹が此処の卒業生なのは本当だし、どうしてもまだ信じられないのなら、卒業名簿を借りるか家にそれを持って来てもらって一緒に見せると言った。    事情を説明すれば妹は必ず協力してくれる筈だと言って。(うちにも一枚だけ、私と同じ制服を着て立っている写真があった。)   甘堂は、その話を悔しそうに聞いていたが、直ぐに、私がインターナショナルスクールヘ通っていたのも嘘で、自分はその学校に電話して確認したと言った。そして出た人に聞いたら、そんな生徒は知らないと言われたと。丸で鬼の首でも取った様に得意そうに話したそうだ?!鬼は自分なのだが!      母は本当に通わせていたと言った。だが、甘堂は、そうした学校に行かせたかったのも分かるが、行ってもいないのに親までが嘘を付くなんてとんでもないと言った。     今岡も加勢して、そんな所に行っていたなら漢字なんて読み書きができる訳が無いと騒いだ。日本語は物凄く難しいのだから、途中から普通に読み書きができるなんて不可能だと言った。               

母は言った。誰が電話に出たのか知らないが、きっと新しいシスターだろうと。違う、もっと昔からいるシスターに聞けば分かる筈だ。年中祖母がくっついて学校に出入りしていたから、必ず分かる筈だと。      それに家には、しまってあるが、その学校のアルバムや通信簿だとかが沢山ある。どうしても自分の娘がそうした学校へ行っていたのが嫌で認めたくなくて、英語の丸でできない、哀れな合の子だなんて思いたくて仕方がないみたいだが、普通はああした学校へ行かせるのなんて、ちっとも珍しくないからと。見た目が違うのに、普通の日本の小学校に入れて、虐められたくないからだ、と言った。                  又、漢字の読み書きに付いても、12歳なのに小学校2年生程度しか分からなかったから、自分がどうしてもと校長に頼んで、無理矢理に1学年下のクラスに入れてもらった。後からはそんな馬鹿な事をして凄く後悔して、悪いと思ったがもう変えられず、どうしようも無かったと。           だから漢字は、本人が皆と早く同じになりたいし、町中で字が読めないととても困るので、一生懸命に勉強をしたから、数カ月もすると段々とできる様になり、一年もしたらもう完全に同じになったと言った。     「うちの娘がそれ位でできたんだから、よそのお子さんならきっともっとうんと早くに、2ヶ月位で完全に同じになったんじゃないんですか?」と言った。          そしてまだ疑うなら、その学校へ行って、校長だとか当時の担任に聞いたらどうか?担任の名前を教えるから、電話で聞いたらどうですか、と言った。           又、うちの先祖に戦国武将がいたと他の生徒に自慢していたが、そんなのは字が違うのに平気で嘘をつくと言った。        母は、字が違ってもそうした事はよくあるし、現に祖母方の家には何か家紋がついた物があるだとかで、祖母も自分の親から聞いたそうだと言った。            そして中学の時にも、誰かとそうした事を互いに話していたら、一人、クラスの男の子に、字が違うのに何を言っているんだと大騒ぎをされた事があり、担任がそれを知り、歴史を教えていたので、クラスの前で、そうした事は昔は幾らでもあると言ったと。何故なら、当時はとても恐ろしい時代だったからと説明したそうだと言った。        だから別に嘘を言った覚えはないし、又自慢などでは無いと言った。そうした話は大人になってもするし、自分も何度も聞いていると言った。                だが鬼畜達は言った。又違う事を。    私が良い気になっていると。目鼻立ちがハッキリとした顔で、自惚れていると。だからホテルのプールに派手な水着を来て行き、従業員や客の男達とチャラチャラしてふざけて、不真面目な態度を取っていると。    又、よくも親のくせにそんな所に一人で出入りさせたり、友達まで連れて行ったりしていたと言った。否定しても、ちゃんとにシンちゃんから聞いているからごまかせないと言った。                  母はそんな事は本当だが、娘は泳ぎが好きだし、中学の時にも水泳大会に出たり出されたりしていた。だから自分の親友がそこのプールのカードを買って、自分達にも買ったらどうかと勧めたから買ったし、だから娘はよくその親友と泳ぎに行っていたと。     水着も自分が選んだ物を買って着させていただけで、決してそんな派手だとか嫌らしい感じのする物では無いと説明した。     そして、別に従業員や他の客とべたべた口を聞いてふざけたりなどしていない、そうした性格では無いからと言った。       大体、シンちゃんと言う子も、食事をご馳走しても、食事中一度も自分から口をきかず、物凄く大食いで遠慮も何も無いし、食べ終えれば礼の一言も無い。凄くマナーの悪い子だ。余りに酷いから、だから自分の親友からも頭に来て電話があった位だと言った。  それをそんな子の話を真に受けて、見てもいない事で何を怒るのか、と言った。    すると鬼畜達は切り返した。まだ子供なんだからそんな事は大した問題ではないと。まだ高校生なんだからと。          「そうでしょうか?じゃあもしうちの娘がそんな事をしたら、本当にそんな風に思いますか?大騒ぎして、とんでもないって怒り狂うんじゃないでしょうか?!」       そして続けた。             子供でも、もうそんな小さな子供では無い。後何年かしたらもう二十歳で、成人だ。なのに、人が何か御馳走してくれても、一言の礼も言えないのかと。そんな事は当たり前だし、もっと小さな子でもできる。     昔、娘の友達が遊びに来て、一緒に食事をしたが、いつでも必ず御馳走様だとか美味しいと言っていたし、もっと礼儀正しかった。 まだ小学生なのによっぽどちゃんとしていた。何人か来たが、皆そうだったと。   (これは本当だ。美味しいとか、御馳走様位は誰でも普通に言うから!)       だがこの雌鬼畜共はまだ食い下がり、そしてまだ私を修学旅行へと引っ張りだそうとして、次の作戦に出る。          鬼畜とは、カビや新型コロナウイルスの様に、質が悪いモノだ!!!   

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る