第36話
母が甘堂の姑(義母に)、甘堂が学校でしている私への虐めについて詳しく話してからは、甘道は放課後に私を呼びつける事をしなくなった。今岡と樽辺もそうだ。 だが、甘堂は悔しくて仕方が無い様だった。ホームルームの時には相変わらず嫌味を私だけに言ったりした。 だか、もう職員室へは呼ばなくなった。今迄は年中思いつくままに、後から職員室へ来る様に、と言っていたから。 だから吉川達も不思議がり、面白くなかった。甘堂に理由を聞いても何もハッキリとした答えが返ってこない。 だからそれから少しすると、甘堂は私が教室から出るのを、廊下で待っていた。吉川達も一緒だ。こんな時、甘堂は皆、他のクラスの生徒を追い立てる。 「早く帰りなさい?みんな、何してるの?早く帰るの!」、「早くしないと部活に遅れるわよ!何やってるの?!」 早く追い払って虐めたいのだ。 それでこの時にも、皆を追い払い、いなくなってから私が挨拶をして横を通り過ぎると声をかけてきた。 「高木さん!!」 私は顔を向けた。 「あなた、お家に帰れて良いわね〜。良かったわね〜。そんなに嬉しいんだぁー?!」 別に嬉しくなんかない、当たり前なだけだ。嬉しそうな顔などしていない。 「はい。…じゃあ、先生は家に帰るのがそんなに嫌なんですか?」 甘堂は不快な顔をして、一瞬黙る。 「そんな事ある訳ないじゃないの?」 「そうなんですか?それじゃあ、失礼します。」 「待ちなさい!!ねー、一寸みんな、知ってる?高木さんは、お母さんに泣き付いたの。先生に虐められて、学校に残されているんだって言ってね。幼稚園児みたいに言い付けたの!」 「ウワァ、情ねー?!」、 「子供みたい!!」、 「先生、可愛そう!馬鹿じゃないの?!」 腰巾着の手下共がすかさず合いの手を入れる。 私が言う。 「そんなの、当たり前じゃないですか?何もしてないのに年中残してるんだから。」 「ほらね?まだそんな事言ってるわよ?よっぽど早くお家に帰りたいのね〜!早く帰って、お母さんのオッパイ吸って、甘えたいんだものね〜?ママ、ママーって言って?!ママのオッパイが欲しいんだものね〜?」 手下共が一斉に笑った。 「ママ〜、ママ〜?!」 吉川が甘堂の真似をした。 「もう帰りますね!母が先生の姑に全部話したから、もう絶対に嫁にそんな事をさせないって、ちゃんとに早く帰す様にきつく叱っておくって言ってたから。だからもう、良いですよね?」 甘堂がまずい‼という不快な顔をして、睨みつけた。 吉川達3匹が驚いた顔をした。 私はそこから離れて行こうとした。すると吉川が怒鳴った。 「てめぇ、何言ってんだ、先生に?!」 吉川が虚勢を張って怒鳴る。 「だから、本当の事を言っただけだよ。」 「てめぇ、許さねーからな!!、おい、みんな、そいつを押さえ着けようぜ。先生?こんな奴、ぶん殴りましょうよ!」 吉川は前にも私の顔を、爪で引っ掻く様に山田にしつこく言った暴力好きだ。そして、本気でそうした暴力がまかり通ると思っている大馬鹿だ。 「止めなさい、吉川さん!又親に泣きつかれたら面倒だから。」 「でも!!」 「いいから!又赤ちゃんみたいに騒がれたら大変でしょう?直ぐに親に言い付けるんだから。」 「あぁ、そうですよね〜。赤ちゃんみたいに!!」 吉川がそう言うと、他の手下共も笑う。 「赤ちゃんは自分でしょ?壁にぶつかっただけで泣くんだから。目を真っ赤にして。」 「なんだとぉ?!」 そう言いながらも吉川は怯む。嫌な顔をする。 「あなた、何言ってるの?!」 甘堂が叫ぶ. 「アッ、後、吉川さん!前に、"3回廻ってワン"っていうのをやったけど、あんなのを本気でやる訳ないからね?!怪我させられたら嫌だからしたけど、よくあんな幼稚な、子供みたいな事を考えたよね?だからきっと、よっぽど嬉しかったんだろうねー!! 」 吉川が私を見たが、黙っている。 「何なんですか、吉川さんにその話し方は?!その態度は?!誤りなさい!!」 「只普通に話してるだけですけど。敬語を使わないといけないんですか、同級生に?」「いいから謝りなさい!!」 「何を謝るんですか?」 「何なんですか、その態度?!」 「何がですか?何も変な事をしていませんけど!じゃあ、早く帰らないと家で心配して、警察を呼ぶといけないから帰りますね。アッ、先生?母は毎日会社へ行っていて夕方に戻るんで、帰ってもいませんから。だから甘えてオッパイなんて吸えますんから。それじゃあ皆さん、さようなら!」 甘堂は私がそう言うと黙っていた。凄く悔しそうだった。吉川達手下も、苦虫をかみ潰した様な顔をして、やはり私を見ていた。 私はそのままどんどん歩いて、一階の下駄箱へと向かった。 そしてそれからは毎日、普通に帰れた。樽辺や今岡も私を呼び付けなかった。 甘堂が、母から家に電話があったのを言ったのだ。 だが、鬼畜達は当然改心した訳では無い。彼等は、特に甘堂は私に執着している。 だから、修学旅行へ行く時期が近くなり、私は絶対に行かない決心をして、母も承諾した。 クラスで行かないのは、私の他には誰もいなかった。 だが、庭隅のクラスになったチコも行かないのが分かった。 一年生の時にマスクをほぼ一年中していた、マスク好きな金下知寿子だ。体が弱いだとか病弱が売り物で、それは半分は眉唾物だと正直思っていたが、恐らくそうだろう。 だから、チコは担任や今岡に何も言われな かった。体が弱いから行くのが無理だと言うのを理由で、難無く切り抜けた。勿論、目を付けられてもいなかったから。 私は当然違った。 甘堂と今岡は必死に行かせようとして、私に行かないと絶対に駄目だと言った。母にもそう言う様にと言った。 私の場合、体が弱いと言うのは通用しない。普段、チコの様にマスクをいつも付けていたり、体育に殆ど出ないでいたり、よく学校を休んだりをしていなかった。 だから、母に今岡から電話があり、直に会って話す事になった。学年主任の今岡と、担任の甘堂の二人とだ。 この鬼畜女達は、母が私と同じだと思ったのだ。 私は普段大人しくて、余り口をきかない生徒だった。小さな時からそうだった。 母いわく、父もそうした無口な人間だったらしい。 だから今岡達は、母も私とそうして同じで、もし何か言っても簡単に言い負かして、無理矢理に私を連れて行こうとしたのだ。 それで鬼畜達が家へ訪ねて来て、玄関で話したそうだ。かなり長くいたらしい。 私はその時、いなかった。 母が私を何処かへ外出させたのだ。祖母も偶然だか分からないが、家にいなかった。 母は鬼畜達を一人で玄関で出迎えた。 そして、こいつらは絶対に私が修学旅行に行かなければいけないと母に言った。 母は、本人がどうしても嫌だと言っているから、それなら仕方無いと返事した。 今岡達は、でもこれは高校生活最大のイベントで、記念になるからと強調した。 皆、普通は行くし、病気だとかで行けない場合でない限り、行かせるのが当然だから行かせるべきだと反論した。 又、京都は日本の真髄的な場所だから、日本に生まれ育ったのなら、行ってそこを色々と見たりして、その場所を経験するのが絶対に良いと何度も強調した。 母は言った。それは、中学校の修学旅行で京都に行っているから、もう経験しているから大丈夫だと。 だが今岡達はこの先、まだまだ、粘りまくり、更なる会話へと発展する。 何せ相手は鬼畜だ…。 長くなるから、又次回に話そう。
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